西谷弘という職人演出家を正当に評価したい

2013年7月24日 森 直人 真夏の方程式 ★★★★★ ★★★★★

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
真夏の方程式

「テレビドラマの映画版」という文脈で捉えると、本作は状況論的にひとつの成熟を感じさせるものだ。5年前(2008年)、東野圭吾のガリレオシリーズ映画化企画の第一弾であった『容疑者Xの献身』は、映画本編との肉離れを承知で、テレビドラマ『ガリレオ』のお約束事をゴロッと生硬に導入していた。それは1998年から始まった『踊る大捜査線 THE MOVIE』(同じフジテレビ)という巨大な成功体験を具合悪く引きずり、テレビドラマとの折衷的な形でないと観客を映画に引っ張ってこられないという弱気な「戦略」に基づいたものだったと思う。しかし今回の『真夏の方程式』は余計な配慮なし。単体で成立する真っ当な映画作品であり、俳優陣のアンサンブルに重きを置いた(杏は最高!)原作小説の律儀な映画化である。それは昨年、『踊る』シリーズがファンサービスに収縮する尻すぼみで終了した事態と交錯するように、せり上がってきた「ガチ勝負」の姿勢だ。言わば“脱「THE MOVIE」”時代の到来。そしてテレビドラマと映画の両方をこなす西谷弘という監督を、優れた職人演出家として正当に評価する視点を映画畑の人間も持っていいと思う。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。9月12日より、行定勲監督 feat.東紗友美さん(『窮鼠はチーズの夢を見る』)の回を配信中。ほか、足立紳監督(『喜劇 愛妻物語』)、荒木伸二監督 feat.SYOさん(『人数の町』)、城定秀夫監督&平井珠生さん(『アルプススタンドのはしの方』)、田中圭監督(『島にて』)、内藤瑛亮監督(『許された子どもたち』)、諏訪敦彦監督(『風の電話』)、想田和弘監督(『精神0』)、深田晃司監督(『本気のしるし』)、豊島圭介監督(『三島由起夫vs東大全共闘』)、入江悠監督(『AI崩壊』)、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人さんの最近の映画短評

もっと見る

[PR]