「肯定」の力に満ちた怒濤のシネフィリア・ドキュメンタリー

個人的に最近最も刺激を受けた一本。プロフィール写真のTシャツに「シネフィリア」の文字が躍る猛者、マーク・カズンズが2010年~21年の新しい映画の重要作111本を論評していく。セレクトは全世界網羅的。スマホ、CGや3D、VRに配信サービス、コロナ禍等の影響で、映画の形が激しく変わったここ10年の考察が展開する。
際立つのがDJ/VJ的な「つなげる」快楽だ。クラシックにもがんがん補助線を引く。例えば『ベイビー・ドライバー』(17年)の音とリズム演出の原型的なものとして『今晩は愛して頂戴ナ』(32年)が挙がったり。『ホーリー・モーターズ』(12年)の“映画の扉を開ける”イメージの引用もいいね!