人は自分と似ている人間ほど目障りに感じるもの

地味で目立たない不器用な男サイモンが、容姿は自分と瓜二つだが性格はまるで正反対の分身ジェームズによって、仕事も恋愛も生活も奪われていく。
あえて時代も場所も特定できない陰鬱とした世界は、ドストエフスキー原作だからというわけではないが、どことなくソ連時代のロシアを連想させる。その妙な懐かしさと重苦しさの混在する異空間に、昭和歌謡の寂しげなメロディがよく似合う。
人によって様々な解釈のできる作品だが、果たしてサイモンを要領のいいジェームズに嫉妬するウジウジとした情けない男として軽蔑するか、それとも悪魔のような分身に存在を脅かされる可哀想な男として同情するか、そこがひとつの分岐点かもしれない。