厳しい世でもがく一家の姿に、浮かび上がるリアル

家長としての責任感ゆえにリストラされたことを打ち明けられない父、妊娠中で精神的に不安定な母、そして問題児の息子。移民のベビーシッターが耐え忍ぶことで、そんな一家の溝を埋めてゆく物語は、安直な感動でごまかさず、多くのことを物語る。
愛憎、反抗、不況といった不安な要素が渦を巻く現代。それでも踏ん張ることの意味はどこにあるのか?そこには確かに訴えるものがある。ドキュメンタリーのようなカメラワークは物語をリアルなものに仕立て上げ、他人事で片付けない。そんな潔さが魅力を放つ。
大変な世界で皆、必死に生きている。当たり前だが大事な、そんなことにふと気づかされ、励まされたような気になる秀作だ。