身障者ドラマに収まらない普遍的な人間賛歌

脳性麻痺の障害を持って生まれ、手足も言葉も不自由なために知的障害と誤診されてしまった男性が、自分にだって言葉が分かる、意志があるということを周囲に証明するまでの長い道のりを描く実話ドラマ。
健常者と変わらぬ知性を持ちながら、精神病棟に入れられてしまうという生き地獄。しかし、物事をありのままに受け入れつつ希望を失わない主人公マウテシュの姿に、暗い悲壮感は殆ど感じられない。
障害者の恋愛や性の問題にも踏み込んだ本作は、逆境をバネに人生を切り開いていく人間の本能的な強さを賞賛する。障害に無理解な人間を断罪せず、時には身勝手な同情の偽善をチクリ。ユーモア精神も忘れない。そのバランス感覚が見事だ。