ここにも神の居場所はあるようだ。

物語だけ抜きだせば大層ハートウォーミングなものを連想させ、ま、結果的にそうではあるのだが、なんせ語り口が知的でクール。勿体ぶった心理描写や説明的台詞は注意深く避け、起こった事実のみを淡々と綴っていくスタイルだが、それだけで心理描写も過不足なく、いやむしろ雄弁なほどだし展開もスピーディだ。憎ったらしくてブサイクでわがままなガキが、故国に幼子を残したまま出稼ぎに来ているフィリピン人ハウスメイドと交わるうち、次第に可愛く見えてくる不思議。文化的・階層的な差別構造も、皮肉な嗤いを伴いながら浮き彫りにさせていく見事さもあり、いや、このシンガポールの新人監督は大変な才能かも知れない。