“個”を殺す戦争の罪を見つめた力作

久しぶりの日本公開作『シャトーブリアンからの手紙』と同様に、フォルカー・シュレンドルフ監督はナチスという自国の歴史と向き合う。舞台劇の映画化らしく会話主体で転がる、肉体的な動きの少ない作品だが、心の動きはダイナミックで魅入った。
最大の魅力は頑固者VSクセ者の駆け引き。どちらの側にも“事情”があり、その溝を埋めていく詰将棋のようなスリルが宿る。ベテラン俳優ふたりの、いぶし銀の味も光り、それぞれの妙演にも唸った。
『シャトーブリアンからの手紙』もそうだったが、人間対人間なら話も通る。しかし国を背負うと。そう簡単に話は進まない。個を殺す、このやるせなさこそが戦争の罪なのかもしれない。