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文字を持たない民族、文字では触れえない世界の深度

2015年5月2日 轟 夕起夫 パプーシャの黒い瞳 ★★★★★ ★★★★★

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パプーシャの黒い瞳

田村隆一は言った。「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」と。その詩『帰途』の中で。さまよえる魂、ポーランドの現代史に翻弄されたヒロインの気持ちもおそらくそうだったのではないか。つまり猛烈な反語。言葉を憎み、しかしどこまでもそれを愛している。

純粋無垢な才能に打たれて、彼女の言葉をポーランド語に翻訳した詩人フィツォフスキは、詩をつぎのように定義する。「詩とは、昨日感じたことを明日思い出させてくれるもの」。だがジプシーであるパプーシャの姿勢はこうだ。「詩を書いたことなど一度もない」。なぜか? 両者のあいだの、埋めがたい距離、それを明らかにするのがこの映画の存在意義(のひとつ)なのであった。

轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴:文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「映画秘宝」「クイック・ジャパン」「DVD&ブルーレイでーた」「QJweb」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況:またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

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