シネマトゥデイ

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タナダ的考察・これからの「大人」とは

  • 四十九日のレシピ
    ★★★★

    今年、『そして父になる』と対になる作品はコレではないか。現代日本の未熟さを抱えたミドルエイジが、いかに成熟するかを探る映画の男版/女版としてパラレルな関係にあると思うのだ。『四十九日~』のヒロイン(永作博美)は自分の継母を、出産経験のないまま母性を自他の幸福に活かした先輩=ロールモデルとして尊敬を抱く構造になっているが、共に“未知なる大人のスタートラインに立つ”までの話なのも同じだ。

    監督のタナダユキは前作『ふがいない僕は空を見た』でも、田畑智子の快演を得て不妊のプレッシャーに悩む主婦の問題を扱っており、今回はその延長と言える。タナダは自作自演のデビュー作『モル』(01年)から、女子の自意識と社会の関係を鋭く描き出してきた。いわゆるロスジェネ世代の女性で、年齢ごとの実感をコンスタントに残してきた唯一の貴重な映画作家になっている。

    尤も『ふがいない~』は群像劇としての精度が高かったが、今作は日系ブラジル人役に岡田将生を当てるムチャぶりなど、脇が甘いのが少し気になった。とはいえ、最近の男性監督が描きがちな「女(母)は強し」の幻想を斬るアプローチで攻めたのは、さすがタナダである!

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「Numero TOKYO (Web)」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTube配信番組『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。10月4日より、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)の回を配信中。ほか、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)、樋口尚文監督(『葬式の名人』)、映画ジャーナリストの徐昊辰さん(『SHADOW/影武者』&『帰れない二人』について)、田中征爾監督(『メランコリック』)、大崎章監督(『無限ファンデーション』)、安里麻里監督(『アンダー・ユア・ベッド』)、深田晃司監督(『よこがお』)、江口カン監督(『ザ・ファブル』)、長久允監督(『ウィーアーリトルゾンビーズ』)、工藤梨穂監督(『オーファンズ・ブルース』)、三宅唱監督(『ワイルドツアー』)、佐向大監督(『教誨師』)、片山慎三監督×松浦祐也さん×和田光沙さん(『岬の兄妹』チーム)、二宮健監督(『チワワちゃん』『疑惑とダンス』)、広瀬奈々子監督(『夜明け』)、緒方貴臣監督(『飢えたライオン』)、関根光才監督(『太陽の塔』『生きてるだけで、愛。』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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