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夜明けの祈り (2016):映画短評

夜明けの祈り (2016)

2017年8月5日公開 115分

夜明けの祈り
(C) 2015 MANDARIN CINEMA AEROPLAN FILM MARS FILMS FRANCE 2 CINEMA SCOPE PICTURES

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

戦争の悲劇に光を当て、暗闇の中に希望を見出す

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 第二次世界大戦において、連合軍・枢軸軍に関係なく軍隊によって民間人、中でも女性が暴行を受けたという例は枚挙に暇ないが、これはポーランドでの実話がベース。ソ連軍兵士にレイプされ妊娠した修道女たちが、宗教上の理由や国家間の力関係により事実を公に出来ない中、第三者であるフランス人の女医に助けを求める。
 戦争は銃後の日常をも狂わせ、政争は声なき声をかき消す。題材そのものは暗く重苦しい。だが、宗教観や立場の違いを超えて静かに共鳴し合い、事態を打開すべく前進していく女医と修道女たちの確かな友情が、この悲惨な出来事に救いと希望の光をもたらす。美しくも端正な映像がまた味わい深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

永遠に忘れられない作品になりました

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

第二次大戦末期に起きた事件にインスパイアされた映画とはいえ、事件そのものが衝撃的だ。神に身を捧げた修道女がソ連兵に陵辱され、妊娠すると考えるだけでも心が痛む。修道女ゆえにレイプ被害者なのに罪を犯したと考え、信仰が揺らぐ上、出産後に芽生える母性にも葛藤する。悲惨な彼女たちを支えるのが無心論者のフランス人女医なのはまさに、良きサマリア人のたとえ話と同じだ。弱者に救いの手を差し伸べる人は希望をもたらすと思い知る。凛とした女医役のルー・ド・ラージュと神に疑問を抱く修道女を静謐に演じたアガタ・ブレクはじめ役者の演技が素晴らしく、さらには映像も美しい。永遠に忘れられない作品のひとつとなった。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

とてつもなく辛い状況の中で描かれる人間愛

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

原題は、“純真な人たち”。一生を神に捧げるポーランドの修道女たちは、ソ連兵たちによって汚されてしまった。この秘密を知る唯一の部外者が、主人公のフランス人女医マチルド。昼間は赤十字で働きながら、夜にボランティアで妊娠した修道女たちの手助けをするマチルドが、宗教心の強さの違いという、思わぬ壁に悩まされる部分は、興味深い。とてつもなく辛い状況を描くのに、息苦しくならないのは、人間愛が語られるから。マチルドと同僚医師のカジュアルな恋も、温かいニュアンスを与えている。見終わってからも、しばらく余韻が残る名作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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