終末後を生きる男女のドラマは、第三の人物の登場で通俗に堕す

世界の終わりを生き延び、信仰をよすがに孤独をしのぐ美女マーゴット・ロビーが、もうひとりの生存者である科学者の黒人男性キウェテル・イジョフォーと出会う。価値観の異なる者同士が反発し間合いを取りながら、徐々に接近していくドラマはサスペンスフルだ。単なる世界再生劇のみならず、極限状況における人間の存在を形而上学的に問うミニマムな物語は、原作「死の影の谷間」になき第三の人物である肉体労働者の白人男性クリス・パインの登場によって、たちまち目指す着地点が通俗的なものに堕していく。第三の人物を子供や老人にすれば、まだ拡がりはあったかもしれない。男女間の関係性のバランスの心理劇へのシフトは、改悪である。