仏時間22日、受賞結果を説明するエミール・クストリッツァら9人の審査員による記者会見が行われた。同会見は昨年からの試みで、昨年はマイケル・ムーア監督の『華氏911』がパルム・ドールを受賞したことをめぐって、「なぜこの政治的な映画を選んだのか?」などと記者VSクエンティン・タランティーノ審査委員長のバトルが展開されたが、今年は比較的穏便に会見が進められた。
まず、審査委員長のクストリッツァ監督が「今年はどの作品のアベレージを保っていたが、その中でも3本の映画が審査員の心を打った」と語り、主要な賞を占めたダルデンヌ兄弟の『ザ・チャイルド』(原題)とミハエル・ハネケ監督の『ヒデゥン』(原題)、そして個人的に好きだという『ブロークン・フラワーズ』(原題)を挙げた。
トミー・リー・ジョーンズの『メルキダス・エスカラーダ』(原題)に関しては、女性記者から「暴力的で、こんなマッチョな男の話の映画をサルマ・ハエックや(作家の)トニ・モリソンのようなかたがたが支持するなんて信じられない」と言った質問も飛び出したが、それに対してクストリッツァ監督が「これは米国とメキシコの国境を舞台にした話で、この地域に住む人たちの生活が両国の文化に影響を受けて暮らしているかをきちんと描いている作品だ」と反論。ハエックも「バイオレンスのことを言うけど、この映画で人が銃で殺されるシーンがあるのは1回だけ。しかも、それは過ちから起こる殺人なのよ」と熱弁を奮った。
映画祭はこの後、パルム・ドールを受賞した『ザ・チャイルド』(原題)の上映とクロージング・セレモニーが行われ、11日間の祭典に幕を下ろした。
仏時間21日、コンペティション部門の受賞結果が発表され、最高賞に当たるパルムドールにリュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ兄弟のベルギー映画『ザ・チャイルド』が選ばれ、プレゼンターの“オスカー受賞コンビ”米俳優モーガン・フリーマンとヒラリー・スワンクから記念の盾を受け取った。ダルデンヌ兄弟のパルム・ドール受賞は、99年の『ロゼッタ』に続き、2度目となる。
今年、映画祭のメーン会場であるシアター・ルミエール正面には、イラクで人質となっている仏人女性記者2人と運転手の解放を願って3人の写真が掲げられているが、ダルデンヌ兄弟は「この受賞を、現在、人質となっている彼らに捧げたい」と語った。
次点に当たるグランプリには、批評家からの人気も高かったジム・ジャームッシュ監督の『ブロークン・フラワーズ』が受賞。壇上でジャームッシュ監督は、自分の作品を選んでくれたエミール・クストリッツァ監督たち“ストレンジな審査員(byジャームッシュ)”に感謝しつつ、同じコンペティション部門で競うことになったデビッド・クローネンバーグ監督や侯孝賢監督らの名前を挙げ「僕は20年前に映画を作り始めた時からあなたたちの映画から学んだ、あなたたちの生徒です。こうして同じ場に自分の作品が上映されたことを誇りに思う」と日本式のお辞儀をしながら礼を述べ、受賞を逃した監督たちへの敬意を示した。
優秀男優賞は映画『メルキダス・エスキラーダの3回の埋葬』で監督デビューも果たした米俳優トミー・リー・ジョーンズが受賞。同作品では、映画『アモーレス・ペロス』で知られるギジェルモ・アリアガ・ホルダンが脚本賞も獲得し、Wでの受賞となった。ジョーンズは「名誉ある映画祭でこんな賞を頂けるなんて、本当に驚いた。これからも、できれば映画を作り続けていきたい」と笑顔を見せた。
なお、日本から出品されていた小林政広監督『バッシング』は賞を逃した。以下、受賞結果は次の通り。
・パルム・ドール
『ザ・チャイルド』
リュック&ジャン・ピエール・ダルデンヌ
・グランプリ
『ブロークン・フラワー』
ジム・ジャームッシュ
・優秀女優賞
アナ・ラスロ
(『フリーー・ゾーン』アモス・ギタイ)
・優秀男優賞
トミー・リー・ジョーンズ
(『メルキダス・エスキラーダの3回の埋葬』 トミー・リー・ジョーンズ)
・監督賞
ミハエル・ハネケ
(『ヒドゥン』)
・脚本賞
ギジェルモ・アリアガ・ホルダン
(『メルキダス・エスキラーダの3回の埋葬』)
仏時間20日、鈴木清順監督の映画『オペレッタ狸御殿』が招待上映され、鈴木監督、主演のオダギリジョー、チャン・ツィイーがレッドカーペットの上を歩いた。
今回、鈴木監督の上映は、長年の功績を讃えた“名誉上映”となる。オダギリのサポートを受けながら、一歩、一歩、赤絨毯を踏みしめた鈴木監督は「恥ずかしいね。タキシードもこれ一回限りだと思って着ました」と苦笑い。一方、オダギリは「緊張してあまり覚えていないんです。さすがに舞い上がりましたね」。
その後、シアター・ブニュエルで行われた公式上映は、440席が満席となる熱狂ぶり。上映後は約5分間のスタンディング・オベーションも起こった。
上映中、何度も笑いが起こったことについて、鈴木監督は「(どこで笑おうが)皆さんの勝手ですから」と相変わらずの清順節を発揮。最後は主演のチャン・ツィイーと「また一緒に仕事が出来ればいいですね」と再会を誓い合っていた。
またこの日、「批評家週間」部門の各賞が発表され、内田けんじ監督の『運命じゃない人』が、優れた脚本に贈られるフランス作家協会賞(SACC賞)と、鉄道員たちが選ぶ鉄道賞(RAILS DOR)、高校生が選ぶYOUNG CRITIC AWARDも受賞した。
内田監督は「脚本作りに苦労したので、すごくうれしい。難産で生んだ子供が先生に褒められたような気持ちです。この映画にか関わってくれたすべての俳優・スタッフの皆さんの力が、こういった評価につながったのだと思います。感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントを寄せた。
仏時間19日、コンペティション部門に出品されているベルギー映画『ザ・チャイルド』(原題)のリュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督がインタビューに応じた。
同作品は18歳と20歳で子供を産んでしまったカップルが主人公。しかし父親ブルーノ(ジェレミー・レニエ)は定職を持たず、窃盗を繰り返していたが、ついに自分の息子を売買してしまう。『ロゼッタ』(99)や『息子のまなざし』(02)に続き、現在の若者たちが抱えている問題を題材にしている。
「物語のアイデアが生まれたのは、『息子のまなざし』撮影中に見た若い女性が、とても赤ちゃんが中に入っていると思えないくらい乱暴に乳母車を押しながら街をはいかいしている光景を見た時。ベルギーの若者の失業率は20%ぐらい。就職先がないんだ」(リュック)「でも自分たちがなぜ現代の子供たちに興味を抱くのか、説明するのは難しい。ただ、こうした事件や問題が、どう世代から世代へ伝わっていくのかに関心があるね」(ジャン=ピエール)
手持ちカメラで主人公を追った前作とは異なり、今回はカメラは据え置きと撮影法が変わった。
「今回は主人公2人が生きる空間を描きたいと思ったんだ」(リュック)「それに僕たちももう歳だし(笑)。これからはカメラは据え置きで撮るつもりだよ」(ジャン=ピエール)
映画祭会場で毎日配布される「スクリーン」誌に掲載されている各国評論家による星取では、19日現在でミハエル・ハネケ監督『ヒドゥン』(原題)に続く高評価を得ている。
『ロゼッタ』に続くパルム・ドールが期待されるが、「僕たちは明日、ベルギーの自宅へ帰る。(授賞式参加への)電話がかかってきたら戻ってくるけど」(リュック)「カンヌというのは、例え最終日に電話がかかってこなかった監督の作品でも、その作品がちゃんとキャリアを積んで世界へ出ていく。それがカンヌなんだ」(ジャン=ピエール)
仏時間18日、青山真治監督作品『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』が「ある視点」部門で上映され、青山監督をはじめ、主演の浅野忠信、宮崎あおい、そして青山監督の妻で女優のとよだ真帆が上映に参加した。
同作品は西暦2015年、自殺病「レミング病」がまん延しているという世界が舞台。青山監督は『月の砂漠』(2001)以来、4年ぶり3度目、浅野は6度目、宮崎は『ユリイカ』(2000)以来のカンヌとなる。
上映後、青山監督は「今回はコンペではないので、気楽ですね。コンペじゃなくて残念という気持ちはなくて、こんなに多くのお客さんが来てくれただけでうれしい。今回は妻と一緒だから? もちろんそれもあるでしょうね」と語り、しきりに照れていた。
またこの日は、「監督週間」で、柳町光男監督『カミュなんて知らない』も上映され、出演者の吉川ひなのと柳町監督が舞台あいさつを行った。同作品は、黒澤清監督、青山監督らを輩出した立教大学「映像ワークショップ」をモデルにした青春映画。映像映画監督役の柏原収史を一途に愛するユカリ役を演じた吉川の役は、仏映画『アデルの恋の物語』にオマージュを捧げた役。上映後の記者会見で柳町監督が「イザベル・アジャーニと比べて吉川ひなのはどうでしたか? 」と仏人記者たちに問いかけると温かい拍手が起こっていた。