第82回アカデミー賞での作品賞と監督賞は、下馬評では一番有力視されていたジェームズ・キャメロン監督の『アバター』を押しのけて、キャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』の受賞となった。『ハート・ロッカー』は6部門の最多受賞、『アバター』は3部門の受賞となったが、なぜこのような結果となったのだろうか。
ビジョン的にも3Dの技術的にも画期的な作品として、多くの映画関係者から高い評価を受けていた『アバター』。また、興行的にも瞬く間に歴代1位の『タイタニック』を追い抜き、最高地位を獲得した作品。そのため、『アバター』を押しのけ『ハート・ロッカー』が監督賞のみならず作品賞を受賞したことは業界内にかなりの衝撃が走った。
なぜこのような結果になったのだろうか。一番大きな要因として考えられるのは、今年から導入された「選考投票システム」だろう。これは、候補作品に優先順位をつけて投票していくものだが、この投票システムの場合、過半数以上でひとつの作品が1位にならない限り、2位、3位に多く挙がった作品の方が勝ちやすいことがある。それを今回の場合に当てはめると、もし『アバター』が1位としての投票数が1番多かったとしても、それが過半数に満たない場合は受賞と見なされない。そのため、2位3位にあがった作品を全体表に加算していくのだが、2位3位に『ハート・ロッカー』が一番多く入っていたのではないだろうか。
あくまでも推測だが、『アバター』の場合、1位に投票した人も多かったが、「受賞してほしくない」と思い、下位に投票した会員も多かったのではないか。キャメロン監督が『タイタニック』で受賞したときの「わたしは世界の王者だ!」というスピーチに反感を抱いた会員も多いと聞く。また、興行的に大成功している映画よりはもっと別の映画にチャンスをあげたいと思った会員もいたのかもしれない。それに比べ、資金的にも環境的にも苦労し、男性でさえ大変な状況で今回の映画を完成させたビグロー監督には、ほとんどの会員が好印象を持ち、1位でなくとも2位、3位に持ってきやすかったのではないか。
もう一つ考えられるのは、アカデミー会員の大半が俳優、女優で構成されていることだ。これはよく聞くことだが、多くの役者は、自分の仕事がコンピューター・グラフィックスにとって代わってしまうことに危機を感じている。そのため、CGがふんだんに使われている『アバター』よりは、生身の役者の演技で製作された『ハート・ロッカー』のほうに票を入れやすかったのではないか。また、いままでの傾向からもアカデミー賞の作品賞でSF作品は受賞しにくいという背景もある。
いずれにしても、今回の投票結果が女性監督に門戸を開くことになり、しかもビグローが長年業界に貢献してきた58歳の監督であるということなどを考えると、今回の投票結果は大変有意義だったと言えよう。(文:こはたあつこ Atsuko Kohata)
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映画『ハート・ロッカー』オフィシャルサイト
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映画『ハート・ロッカー』が作品賞を含む6冠を果たし、キャスリン・ビグロー監督が女性として初の監督賞受賞というおまけまでついた第82回アカデミー賞だが、大幅な視聴率アップにはアカデミー賞関係者も大喜びだ。
テレキャストが報じたところによると、今年のアカデミー賞の視聴者数は前年から600万人以上も増え、約4,200万人を記録した。今年は開催時期がオリンピックと重なっていたことから開催を遅らせたり、司会を務めたアレック・ボールドウィンの体調が不安視されるという要素もあったが、懸念されていた視聴率は2005年以降では最高を記録するなど、結果的には大成功だった。
成功の理由はいくつか考えられるが、やはりジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター』の影響は大きい。賞レースでは残念ながら映画『ハート・ロッカー』に水をあけられてしまったが、全世界で歴代1位の興行収入を獲得している『アバター』とキャメロン監督の元妻であるビグロー監督の『ハート・ロッカー』が争う展開を男と女の意地のぶつかり合いとして世界中が行方を見守っており、この話題性が視聴率アップにつながったと考える向きは多い。
もう一つ、ザック・エフロン、マイリー・サイラスなど若者に人気のある若手の俳優陣をプレゼンターに起用したことも視聴者の年齢の幅を広げ、大幅な視聴率アップに貢献したと考えられる。ジャーナリストのマイク・フレミングは「これは司会者のスティーブ・マーティン、アレック・ボールドウィンが若者受けしないことを見据えての対応だろうね。視聴率アップという意味では成功だったと思うよ」と主催者の判断の正しさを認めながらも、「視聴層の低下はスポンサー離れにも繋がりかねない」と警告することも忘れなかった。だが今回は、司会者の二人が40代以上の年齢層に受けるキャラクターなので、バランスはとれていたのではないだろうか。
しかしこれら視聴率の話題について、今年から10作品に増えた作品賞の候補を理由に挙げた媒体はほとんどない。今回の作品賞が『ハート・ロッカー』と『アバター』の一騎打ち状態であったことも関係しているだろうが、授賞式においても作品賞よりは主演男優賞、主演女優賞のほうが、発表前に候補者たちへエールが送られるなど、「ショー」としての華があったように思う。だがアカデミー賞の話題の中心は作品賞であるはず。来年は、今年のように授賞式で候補作品の紹介が省略されて即受賞作が発表という味気のないことにはならないように、ドラマチックな演出をお願いしたいところだ。
第82回アカデミー賞授賞式ダイジェストは3月14日、18:00よりWOWOWにて放送
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3月7日(日本時間8日)に開催された第82回アカデミー賞授賞式の視聴率が、2005年以来の高い視聴者数であったことが発表されたが、アメリカだけでなく、世界中の視聴者が授賞式で不思議に思った受賞スピーチの舞台裏が明らかになった。
そのハプニングが起こったのは、キャリー・マリガンとゾーイ・サルダナがプレゼンターを務めた短編ドキュメンタリー賞の受賞時のこと。ゾーイにより、受賞映画『ミュージック・バイ・プルーデンス(Music by Prudence)』(原題)のタイトルと、ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督とプロデューサーのエレノア・バーケットの名前が読みあげられ、ウィリアムズ監督がうれしそうにステージへ向かうときだった。
紫のドレスを着たバーケットは通路側に座っている人物のせいで客席から出られない様子。そのせいで時間がなくなりステージ上で、一足先にオスカー像を手にしたウィリアムズ監督が感謝のスピーチを始めたときにいきなり、バーケットが横から乱入しマイクを奪うという事態になった。バーケットは取り上げたマイクで映画に出演したジンバブエのバンド「リヤーナ」の曲から参照したメッセージと、映画の裏に描かれている真実を知ってほしいと訴えたが、観客や視聴者は横からマイクを奪ったバーケットに唖然(あぜん)とするばかりだった。
今回の事件は、昨年9月に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードで、最優秀女性アーティスト・ビデオ賞を受賞したテイラー・スウィフトの受賞スピーチときに、泥酔したカニエ・ウェストがスピーチを妨害した事件と似ていることから、「カニエ・モーメント(カニエ・ウェスト的瞬間)」としてアメリカ国内の複数のメディアは評している。
ウィリアムズ監督とバーケットの両氏が、Salonに対して語ったところによると、ウィリアムズ監督とプロデューサーのバーケットは、オスカーを受賞した映画『ミュージック・バイ・プルーデンス』(原題)の方向性に関して対立しており、裁判沙汰にまでなったとのこと。ウィリアムズ監督によれば、バーケットは1年近く前に、同作の製作から追い出され、プロデューサーの職をクビになっている。
そのため、アカデミー賞以外の授賞式ではバーケットは招待も連絡もされず、激怒していたそうだ。だから、アカデミー賞ではバーケットも作品の関係者としてノミネートのリストには入ったものの、授賞式の開催側から1名のみが受賞スピーチを行えると通達されていたことから、ウィリアムズ監督は監督である自分が受賞スピーチを行うものだと考えていた。バーケットとウィリアムズ監督は誰が受賞スピーチを行うか事前に相談せず、受賞が決まり、バーケットは先に受賞スピーチを始めた監督に追いつこうとしたが、通路側に座っていた監督の母親の身体と杖によって妨害され、急いでステージへ迎えなかったとしている。
同作に関する方向性の問題は、友好的に解決したとバーケットは語っているが、受賞スピーチを聞く限り二人の対立は現在も続いているようだ。対立している点は、関節拘縮症(かんせつこうしゅくしょう)のために身体が不自由なシンガーソングライターのプルーデンスさんのみに焦点をあてるか、それとも彼女と仲間のミュージシャンで結成したバンド「リヤーナ」に関して描くかでもめたようで、監督と映画を配給したHBOはプルーデンスさんに焦点を当て、貧困や人種差別に立ち向かいながらもプルーデンスさんが音楽を楽しんでいる姿を描く、人々の励みとなる幸せな映画にしたそうだ。
また、バーケットは自分が最初に映画のアイデアを出したと発言しているが、ウィリアムズ監督は真っ向から否定しており、このような意見の違いも二人が仲たがいした原因のひとつであると思われる。最後にウィリアムズ監督は、バーケットがカニエ・ウェストのように妨害行為を行ったことを恥ずかしく思うと話し、自分の母親がステージへ向かおうとしたのを妨害したという発言に対して、「わたしの母は、わたしを抱きしめるために立ち上がったのです。彼女は87歳の老人で、わたしの受賞に興奮していたのです」と妨害を否定した。受賞スピーチを述べることができなかったウィリアムズ監督は、映画の公式サイト上でスピーチの全文を公開している。
映画製作において、監督とプロデューサーが製作上の意見の相違で対立することはよくあることだが、映画人にとって最大の栄誉であるアカデミー賞授賞式でこのような妨害行為が行われることは、同作に登場したプルーデンスさんもバンド「リヤーナ」の仲間たちも望まないのではないだろうか。本年度のアカデミー賞授賞式での、一番後味の悪い場面であったといえよう。
『ミュージック・バイ・プルーデンス』公式サイト:http://www.musicbyprudence.com/
アカデミー賞公式サイトで公開されている受賞時の動画:http://oscar.go.com/video/index?playlistId=253172&clipId=253218
第82回アカデミー賞授賞式ダイジェストは3月14日、18:00よりWOWOWにて放送
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第82回アカデミー賞で念願の主演女優賞を獲得したサンドラ・ブロックが、受賞の夜のディナーはハンバーガーがいいと周囲を笑わせた。
ヘレン・ミレン、メリル・ストリープといった大御所やキャリー・マリガン、ガボレイ・シディベなどの期待の新人を押しのけて、初ノミネートで初受賞という快挙を成し遂げたサンドラ・ブロック。スピーチでは受賞の感謝と共に、メリル・ストリープとのキスのことやジョージ・クルーニーにプールに放り込まれたことなどの話でコダックシアターの観客たちを笑わせていたが、「宗教、階級制度、肌の色、性別を超えた愛など、人を評価するのには関係ないと私に教えてくれ、心から愛してくれたお母さん、ありがとう。愛しています」と亡くなった母のヘルガ・ブロックに謝辞を述べ、こらえていた涙がこぼれ落ちるのが見る人の感動を呼んでいた。
しかし、壇上から降りて夫のジェシー・ジェームズとお互いに泣きながらしっかりと抱きあい、持ち直すとユーモアセンスたっぷりのサンドラは、本領発揮。その後のインダビューでは「涙が出たのは、ダンサーが踊ってほこりが目に入ったからよ。今は、早くドレスと靴を脱ぎたくて仕方がないの。そしてハンバーガーをお腹いっぱいに食べたいわ。今日は一日中、いつドレスがはちきれてしまうか心配でしょうがなかったのよ」とちゃめっけたっぷりにコメントしていた。
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第82回アカデミー賞で、2009年8月に亡くなった脚本家であり監督でもあるジョン・ヒューズ氏の追悼が行われた。
ジョンの代表作を集めた映像が流れたあとは、マシュー・ブロデリックや、アリー・シーディ、そしてマコーレー・カルキンをはじめ、ジョンの映画に関わった俳優たちが登壇! ジョンが脚本とプロデュースを手掛けた『ホーム・アローン』に主演したマコーレーは、「9歳のときも、ジョンはぼくをひとりの大人として扱ってくれた。ぼくは彼を尊敬していました」とジョン監督との思い出を語った。
第82回アカデミー賞授賞式は3月8日にWOWOWにて21:00~リピート放送
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