見どころ:NHK連続テレビ小説として放映され、大ブームを巻き起こし、海外でも人気の高い国民的ドラマ「おしん」を映画化。おしんの少女時代に焦点を合わせ、苦しい家計のためにやむなく奉公に出された彼女がさまざまな苦難に見舞われながらも、たくましく生きていく姿を描く。おしん役は、オーディションで選出された新星・濱田ここね、母親役に上戸彩、父親役に稲垣吾郎と多彩な顔ぶれが集結。『星に願いを。 Nights of the Shooting Star』などで知られ山形県出身の冨樫森が監督を務め、極寒の山形県で全てのロケを行った。
あらすじ:明治40年、凶作が原因でひもじい生活を強いられている小作・谷村家は、口減らしのため泣く泣く7歳のおしん(濱田ここね)を奉公に出すことに。奉公先の材木店で朝から晩まで働き通しの毎日を送る彼女は、雪が溶けたら家に帰れると信じてつらい日々を耐え抜く。しかしある時、店の50銭銀貨が紛失してしまいぬれぎぬを着せられたおしんは、雪が吹き荒れる天候の中、自分から店を出ていき……。
いま、なぜ『おしん』!?――最初はその一言に尽きる!と思っていたが、いざ観賞すると、まったく別の方向で面食らった。「本気」なのだ。謎の目的に向かってスタッフ・キャストが一丸となった壮絶な気迫が伝わってくる。すこぶる真面目な力作である。
きっと企画としては最初からアジア全域のマーケットを視野に入れていたのだろう。本作はみごと、中国のアカデミー賞「金鶏百花映画祭」で国際映画部門の最優秀作品賞に輝いた。しかしありていに言うと、この映画は俗受けしないと思う。今どき愚直なほど「純・映画的」な志に満ちており、ロングショットや長回しなど、文法的にはむしろアート映画の範疇に入る。大陸的な風格の叙事詩。そして濱田ここねの芝居を丹念に見せる、少女の成長譚。相米慎二組の助監督出身で、新人の女子中学生をヒロインに起用した『非・バランス』(2001年)からスタートした冨樫森監督のひとつの集大成と評してもいいほど。
ただ表現として真摯なだけに、どうにもお水っぽい印象との肉離れが気になる。それを象徴するのが、雪山でもメイクの乱れていない上戸彩の“特別ゲスト”感――つまり「ザ・芸能界」の匂いなのだと思う。
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