見どころ:零戦搭乗員の悲劇を描いた百田尚樹のベストセラーを、『ALWAYS』シリーズなどの監督・山崎貴が映画化した戦争ドラマ。祖父の歴史を調べる孫の視点から、“海軍一の臆病者”と呼ばれたパイロットの真実の姿を、現代と過去を交錯させながらつづっていく。主人公の特攻隊員役に、『天地明察』『図書館戦争』などの岡田准一。現代に生きる孫に三浦春馬がふんするほか、井上真央や夏八木勲など若手からベテランまで多彩な俳優が共演する。生と死を描く奥深い物語はもちろん、サザンオールスターズによる心にしみる主題歌にも注目。
あらすじ:祖母の葬儀の席で会ったことのない実の祖父・宮部久蔵(岡田准一)の存在を聞いた佐伯健太郎(三浦春馬)。進路に迷っていた健太郎は、太平洋戦争の終戦間際に特攻隊員として出撃した零戦パイロットだったという祖父のことが気に掛かり、かつての戦友たちを訪ねる。そして、天才的な技術を持ちながら“海軍一の臆病者”と呼ばれ、生還することにこだわった祖父の思いも寄らない真実を健太郎は知ることとなり……。
三丁目、ヤマト、そして零戦…日本人が愛おしむ過去をCGで情緒過多に再現するVFXマン・山崎貴監督作品として一貫している。愁嘆場のつるべ打ち。感動映画製造職人が「戦争」と結び付いた今、流した涙の意味に慎重であらねばならない。
トラウマを与えなければ戦争映画としては不十分な趨勢から逆行している。「特攻」を否定するなら、家族や戦友との絆を美しく描くだけでなく、なぜ主人公の酷たらしい死体すら見せないのか。表面的に反戦を唱えながらも、結果的に「日本を取り戻す」民族意識の強化に奉仕する巧みなプロパガンダだ。若者の曖昧な生に輪郭を与えるために、この国の空に再び戦闘機が舞う時代が来ないことを願う。
ブログなどをご利用の方は以下のURLをトラックバックURLとして指定してください。