みらいのうた (2025):映画短評
吉井和哉と“もうひとりの主人公”
『WILL』に続くエリザベス宮地監督の傑作。多分企画の枠組みとしては吉井和哉のファンムービーだったと思うのだが、強烈にキャラ立ちした人物の登場により、その領域を完全に超えた。それは吉井が静岡時代に参加していたバンド「アーグ・ポリス」のフロントマンで、現在は地元で音楽活動を続けるEROこと高林英彦である。
吉井を音楽へ導いた師匠的存在であるEROは半身麻痺を抱え、厳しい生活を送る。一方吉井も喉頭癌と闘いながらイエモンの復帰ライヴを目指す。ロックスターと市井の労働者という対照的な二人の姿が“光と影”の構造を生み、普遍的な人間ドラマに昇華する。宮地監督の現実からドラマ性を採取してくる手腕は圧巻だ。
この短評にはネタバレを含んでいます



















