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チルド (2026):映画短評

2026年7月17日公開 88分

チルド
(C) 『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

なかざわひでゆき

コンビニ空間に日本社会の不都合な実相を映し出す異色ホラー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台は街角の平凡なコンビニ。同じような商品が本部の指示通りに陳列され、マニュアル通りの接客が行われる。一見したところ綺麗で便利で心地良い空間。だが、それを支えるのは主体性を奪われた従順で代替可能な低賃金労働者だ。唯一の行動原理は、常に同じサービスを提供すること。自分の頭で考えちゃいけない。主体的に行動しちゃいけない。上の指示に疑問を持ってもダメ。問題が起きても見て見ぬふり。まさしく日本社会の縮図!そこへ意志と主体性の塊みたいな異分子(新人バイト)が混入することで仮初の平和な日常は崩壊し、我を失った人々の狂気が暴走する。現代日本の不都合な実相を映し出す野心的な社会派ホラー映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ストレス社会の延長線上に潜む狂気

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

日常に潜む違和感から始まる恐怖を描く、まさに岩崎裕介監督の前作『VOID(『NN4444』の一編)の発展形。まるでショートコントのようなコンビニあるある大喜利に始まり、岩崎監督の十八番である目だけ笑ってない不気味な笑顔に、ギャップしかない青い空。そして、黒沢清フォロワーとしての不穏な空気感……。死んだ魚の目をした染谷将太を始め、前作以上に、あざとさ満載なのは否定できないが、ストレス社会の延長線上に潜む狂気にじっくり迫り、それがヒトコワなホラーの枠に収まらないカルト性を生み出していく。『NEW GROUP』同様、Jホラーの新しい夜明けを感じさせる一作として、★おまけ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

人は今、「チルド」になっている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

「チルド」とは、凍結しないギリギリの低温で冷却保存されている状態のこと。これは、コンビニに並ぶ食材の状態を指してもいるが、現在の日本で暮らす人々の、体内の血液の流れを停めて、外部からのあらゆる刺激に対して鈍感になっている、チルド食材のような状態のことでもあるだろう。「コンビニ」という、とりあえず必要なものは手に入る、すべてがマニュアル通りに行われ、店員と客は最低限の接触しかしない場所、という舞台も、現代社会の空気を象徴している。

『オブセッション 災愛』はアメリカの今を描くが、『チルド』は日本の今を描く。それでいて、ホラー映画の枠内に収まる分かりやすいストーリーになっているのもいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

コンビニの日常に狂気をギリギリラインで接着。怖いけど妙な快感

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

日常に潜む暗黒の落とし穴と、それを見つめる醒めた視線、どこか脱力系の空気…と、黒沢清+コーエン兄弟+カウリスマキを融合させたような怪作。
コンビニの日常をカリカチュアしつつ、自分の仕事に喜びを見つけようと頑張っても、何かのきっかけで否定される負のループを創出。「辛くて怖い状況を、妙に可笑しく感じさせる」演出で観る者の邪念を掻き立て、全体では現代社会の縮図になってるあたりも優秀。
「感情のない目」が今の日本の俳優で最も似合う染谷将太。その特質が完璧に生きた適役に加え、西村まさ彦のセリフ回しが一見、素っ頓狂を装い、狂気に堕ちかけた者のリアルを表現。コンビニのテーマソングが不穏なほど脳内ループする。

この短評にはネタバレを含んでいます
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