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世界的アーティスト村上隆vs.『潜水服は蝶の夢を見る』のシュナーベル監督

世界的アーティスト村上隆vs.『潜水服は蝶の夢を見る』のシュナーベル監督
村上隆とジュリアン・シュナーベル(シュナーベルのアトリエにて)

 ファッション誌「エル」の編集長として活躍する人生から一転、脳梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまった男の実話を映画化した映画『潜水服は蝶の夢を見る』はアカデミー賞に4部門でノミネートされ注目が集まっている。本作の監督であり、アーティストでもあるジュリアン・シュナーベルと、日本が誇る世界的アーティスト村上隆との対談がシュナーベルのアトリエで実現した。

Q:村上さんからご覧になった『潜水服は蝶の夢を見る』の魅力を教えてください。

村上:ジュリアン・シュナーベルさんは僕の学生時代のスーパースターでその彼が映画を撮り続けて来ている事にもの凄く関心がありました。アーティストが映画監督になるというのは、アート・ムービーになってしまうことが多いのですが、彼はその境界を怖れずに商業映画の世界でも次から次へと成功しています。そして今回の作品は3作品の中でも最高傑作!すごいエモーショナルで感動しました。本当に心の底から尊敬しています。

ジュリアン・シュナーベル(以下JS):僕は人に「彼は画家だったのか」と言われることがある。ニューヨークタイムズの記者が「映画界での成功によって、画家としてのキャリアに暗雲が立ちこめる」と記事にした。だけど、ムラカミは恐らく画家の普遍性を理解している方だと思うので、話をしたかったんだ。映画は何千人が同時に観ることができるけれど、実物の絵画は限られた人しか観ることはできない。君がわたしの絵について最初に知ったのはいくつのときだった?

村上:24歳くらいのときですね。

JS:つまり、20年前ということだな。映画『バスキア』の中にこういうセリフがあったと思うのだが、アルバート・マイローがジャン・ミシェル・バスキアにこう言うんだ。「観客はまだ生まれていない」と。おしゃれだとか、はやっているからという理由で人々はアートを鑑賞するかもしれないが、アーティストにとってはそれが生きるすべてなんだ。そして多くの観客はアートが生まれた瞬間を目撃するのではなく、紙くずのような批評を読んだ後にアーティストの作品の蓄積を見るだけだ。そんなものは長くは続かない。それを踏まえると、アートでのキャリアなんて間違いだらけなんじゃないだろうか。

Q:本作のタイトルでもある、潜水服のイメージは? そして、もしロックト・イン・シンドローム(体の自由がまったくきかなくなる病気)に陥ったらどのように対処すると思いますか?

村上:映画を観はじめた前半は「死んじゃった方がいいな」と思いましたけど、後半に向かって行くプロセスでポジティブな志向で考えられるという可能性があれば彼のようにしたいなとも思いました。でもそれは強い意思、人格がないと。でも限定された生き方の中でも人はコミュニケーションをし続けなければ生きて行けないんだと言う切実感は身につまされました。

JS:それはわたしが思ったことと一緒だよ。だけど、こういうこともあるんだ。この映画を作り始めたとき、主演のマチューは片目をパッチで覆い、もう片方にはコンタクトレンズを入れていた。そして口には器具をつけ、まっすぐ前を向いて横たわっていた。手はだらんと置かれ、まるで静物のようだった。彼は「僕が動かないと、ここにいると思わないみたいだ」と言ったんだ。彼はとても忍耐強かった。最初は頭に来たらしいが、しばらくすると、見えない存在として目を閉じると自分自身が対話しているような気分になってくる。そうしたら、ジャン=ドミニクが持っていたようなユーモアを感じることができるようになったそうだ。いま、ここでわたしたちはインタビューを受けている。もしかしたら常に考えているのかもしれないけれど、一体君はどれだけの間、作品について考えているのかな? 作品以外の、何も考えない時間のことだよ。ジャン=ドミニクは、24時間すべての時間がそうだったんだ。彼が書き表したいことだけを、1日24時間ずっと考え続けていた。そうすることによって、彼は潜水服から逃れることができたんだ。彼は、その時間を楽しんでいたと思うよ。彼が車いすに座っているとき、病気を患っているようには見えなかった。彼の人生を生き、楽しんでいるようにも見えたんだ。

Q:お互いの第一印象を教えてください。会う前と印象は変わりましたか?

JS:ムラカミのニューヨークでの展覧会で初めて会った。君の作品を初めて観たのは、わたしのロサンゼルスの弁護士が所蔵している作品だった。10年くらい前の話だな。それからニューヨークで会って、彼はとても親切でみんなが作品をとても気に入っていたのを覚えている。それからいつだったかパリでも会ってるよな。基本的にお互いの印象はとても良かったんじゃないかな。

村上:アートシーンで揉まれ始めたばかりなので、シュナーベルさんがどうやってサヴァイブしたのが知りたいですし、とにかく今日もお会いして、すごく背も大きいし、人間がこなれてないとおもしろい作品ってできないんだなと強く感じました。そしてこの作品は私の人生最高映画ベスト10に入る傑作だ、と言えます。

映画『潜水服は蝶の夢を見る』は2月9日よりシネマライズほかにて全国公開
オフィシャルサイト<http://www.chou-no-yume.com/>


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