昨年度のドラマ、何が強かった?制作方針から日本ドラマ人気の根強さ探る

コラム

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iStock.com / Danil Melekhin

 昨年、ドラマを取り巻く状況がより一層変化し始めた。世界最大級のオンラインストリーミングサービスNetflixが多数のオリジナルコンテンツを引っ提げ上陸し、HuluやAmazonプライム・ビデオも相次いでオリジナルドラマをリリース。世界的な流行の波が押し寄せる中、日本では、昨年も視聴率20%を突破する作品が生まれるなど、地上波のテレビドラマが今も根強い人気を獲得している。日本の視聴者は地上波ドラマに何を求めているのか。各局のドラマ制作方針と、昨年度、視聴者から支持を集めたドラマの共通項からその理由をさぐった。

■ストレートで硬派なドラマのTBS

 今、民放のテレビドラマ界で最も勢いづいているのはTBSだろう。「半沢直樹」の印象も強い中、昨年は同じ池井戸潤原作の「下町ロケット」が平均最高視聴率22.3%を記録し、相変わらずの強さを示した。TBSテレビドラマ制作局 部長代理・瀬戸口克陽氏は、同局のドラマの制作方針を「それぞれの作り手が、『心中できる!』と思える企画を、愚直に制作していくのが、TBSの一番の持ち味です」と語っており、ストレートで硬派なテーマのドラマが目立つ。

 昨年は、「天皇の料理番」や「コウノドリ」なども高い支持を獲得。「ドラマのTBS」復活の機運が高まる中、瀬戸口氏は今期について「1月期の『わたしを離さないで』(金曜・午後10時~)は、“金曜ドラマ”ならではの意欲作ですし、『家族ノカタチ』(日曜・午後9時~)も日曜劇場の幅を広げるべく臨んだウェルメイドなホームドラマで『ドラマのTBS』のDNAを、それぞれの作り手がしっかり継承していると感じています」と語る。

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 ストレートなテーマをドラマにしているテレビ朝日の方針も一貫している。良質の刑事ドラマやミステリーを制作し続け、「『相棒』や『科捜研の女』『警視庁捜査一課9係』のような長く愛される主人公の事件捜査ドラマシリーズに常に新しい要素を加えながら、パワーアップさせていく」(テレビ朝日総合編成局制作2部部長・黒田徹也氏)という方針を守ったセレクションは手堅い一方、黒田氏が語るような新しい試みで新規の視聴者をどのように取り込むのかが、今後の課題といえるかもしれない。

■常に新しさを求めるフジ

 一方、視聴率だけでは計れない可能性を示すのが“月9”のフジテレビだ。「ほかの局で当ったものをマネするという土壌はなく、新しいものをひたすら模索しています」というのは、ドラマ制作センターの金井卓也部長。昨年は同局のフラッグシップとなる月9枠「デート ~恋とはどんなものかしら~」「ようこそ、わが家へ」が共に最高平均視聴率12.5%をマーク。数字ではTBSの後塵(じん)を拝したが、「デート~」では、長谷川博己と杏がイメージを覆す非モテ系男女を熱演。「ようこそ、わが家へ」はある一家を巻き込んだストーカー被害の恐怖を描くなど、視聴者の意表をついた。「恋仲」「5→9 ~私に恋したお坊さん~」もインターネットを中心に話題を呼び、「街中の声を聞いていても、若者を中心に広がっている実感がある」(金井部長)と一定の手応えを感じているようだ。

 また、「オトナ女子」「探偵の探偵」など大人の女性に向けた木曜10時枠や「無痛~診える眼~」などエンターテインメント性を重視した水曜10時枠といった、多彩なラインナップも持ち味。現在は病理医という分野にスポットを当てた医療ドラマ「フラジャイル」(毎週水曜午後10時~)や、『ナオミとカナコ』(毎週木曜午後10時~)、月9では「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(午後9時~)で勝負している。

■幅広い企画で勝負をかける日テレ

 幅広い世代に訴える挑戦的なラインナップで他局と一味違う方向性を探っているのが日本テレビ。期間平均視聴率14.5%をマークした池井戸潤原作ドラマ「花咲舞が黙ってない」で女性層を取り込みつつ、昨年はライトノベル原作の「掟上今日子の備忘録」や往年の人気漫画を実写化した「ど根性ガエル」などバラエティーに富んだラインナップをそろえた。また、昨年4月期から3つ目の連続ドラマ枠ができたことにより、企画の幅が広がり、新設した日曜午後10:30のドラマ枠では、「デスノート」(7月期)、「エンジェル・ハート」(10月期)といった、企画の意外さやキャスティングを武器にした作品をリリースし、放送前から大きな話題を集めたことも記憶に新しい。

■“個性派”といえばテレ東!

 そして、アイデアをこらしたバラエティー企画で近年支持を集めるテレビ東京は、「孤独のグルメ」シリーズが昨年も注目を浴びた。視聴率では、北大路欣也泉谷しげる志賀廣太郎を主演に迎えた連続ドラマ「三匹のおっさん2~正義の味方、ふたたび!!~」の初回スペシャルが11.0%。「ドラマ制作では後発で、発展途上といえますが、テレ東らしい個性的なラインナップが売りです」という編成局局次長兼ドラマ制作部部長・岡部紳二氏は、王道とは一線を画した異色作が支持を集めていると語った。脇で光る実力派を主演に配する大胆なキャスティグも見どころで、吉田鋼太郎の連続ドラマ初主演作「東京センチメンタル」(金曜・深夜0時12分~)や、小泉孝太郎主演の「警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~」(金曜・午後8時~)が放送中。岡部氏は「昨年はいろいろなチャレンジができたことで、フォーマットが確立された。今年も視聴者の皆さんをあっといわせるような物を提供したい」と言葉を強めていた。

■根強い支持の先に見えてくる可能性

 一般的に王道を行くストレートでシンプルな作品は、わかりやすく、当たれば多くの視聴者を獲得する。TBSのように、その局の方針を色濃く反映した作品が、結果として最も視聴者の支持を集めている点も興味深い。各局の方針を信条とした、ブレのない作品作りが今後の日本のドラマの生き残りのカギを握るといえそうだ。

 日曜の夜に放送されていた「下町ロケット」では、ドラマで気持ちを切り替えて、月曜に待つ仕事への活力を得ようという視聴者も多かったという。決まった曜日に番組を観る従来の視聴スタイルが根強いことも、地上波ドラマの強みといえるかもしれない。

 しかし、インターネット配信やケーブルテレビの台頭は、より視聴者の好みにこれまで以上に多様性をもたらすはず。そうなれば、テレビ東京のように、個性的なキャスティングで趣向を凝らす番組作りや、常に新しさを求めるフジテレビが生み出す作品が新時代の“王道”として支持を集める可能性は非常に高い。さらに、民放各局ともに地上波で放送したドラマのネット配信にも積極的であり、既存のテレビファンを逃さず、かつ新しい視聴者層を取り込もうという動きが見て取れる。根強い視聴者からの支持を背景に、この新興メディアとの共存が成熟していけば、将来的に、視聴率だけでは計れない、新たな売れ方をする作品が生まれるかもしれない。(編集部・入倉功一)

※視聴率データはビデオリサーチウェブサイトから転載(無断転載禁止)

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