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外国女優の吹き替えは独壇場!鈴木弘子が突き進んだ声優業の魅力 連載第4回【声優伝説】

外国女優の吹き替えは独壇場!鈴木弘子が突き進んだ声優業の魅力 連載第4回
その声優人生を語ってくれた鈴木弘子さん

 70年代~80年代に活躍していた外国女優の多くに、鈴木弘子さんが声をあてていた。テレビの洋画放送で、鈴木さんの声を聞かない日はないほどだった。ジャクリーン・ビセット、キャンディス・バーゲンをはじめ数多くの女優や、テレビアニメのキャラクターの声を演じてきた鈴木さんは、NHK児童劇団出身。生放送のテレビ、ラジオドラマなど、さまざまなジャンルで活躍したが、その中で最も魅力を感じ、突き進んだのが声優業だったという。声優という仕事の魅力とは何か、鈴木さんに聞いた。(取材・文:岩崎郁子)

■きっかけは「面白い仕事があるからやってみない?」の一言

 「面白い仕事があるからやってみない?」とNHKのプロデューサーから声がかかったのは大学生、19歳の時。スタジオで「このセリフを画面のお姉さんの動きに合わせて読んでみて」と言われて挑んだパスカル・オードレ主演映画『河は呼んでいる』の吹き替えが初めての声優業だった。鈴木さんは、「熱に浮かされたようにワクワクしました。私は小説におぼれ、学校を早退しては、渋谷の映画館で立ち見の人垣の中でときめく夢見る夢子でしたから、大いなる勘違いをして、そのフランスの田園風景にポンと置かれたのは自分だと思い込んだのです。映画ってそういう力を持っているでしょう?」と振り返る。

■簡単に録り直しできない時代の緊迫感

 それ以降、次々と吹き替えの仕事が来るようになった。テレビアニメ「サイボーグ009」の003(003/フランソワーズ・アルヌール)役の声の経験は大変だったという。「スタジオに行ったら、天井からぶら下がっている1本のマイクの下に足音を忍ばせて、奪い合うようにセリフを言う。003フランソワーズがパクパクしている間にこのセリフを入れるんだ、絶対にトチらないというすごい決意。スタジオに漂う緊迫感。簡単に録り直しできない時代の空気。日常生活にない集中力でしたね」と語る。

■20代後半、自分の声への挑戦が始まった

 透き通った高い声が持ち味だったが、「27歳くらいになり、諸外国の大人の女の持つ落ち着き、おそろしさを含め憧れていましたから『低い声でやってごらん』と言われた時のワクワク感は半端ではなかった。歌手で女優のバーブラ・ストライサンドの(声を務めた)時はビビりました。彼女、感情にまかせて太い声も出すし、歌なんてどれだけ伸びるかっていう声量で。自分の声への挑戦が始まったんです」と当時の心境を明かした。録音日が近づくと、煙草を吸い、酒を飲み、ステーキを食べたりして気分を高揚させたりもした。やがて、「自分の声の中に低く肉感的響きを発見した」と感じたという。

■私生活では“恋多き女”、結婚相手を追いかけフランスに

 司会、DJ、テレビドラマも経験したが、声だけの演技の奥深さ、集中力と緊張感にどんどんハマっていった当時。私生活も波乱万丈で“恋多き女”なんていう噂も。「自慢できるほど多くはないわ」と笑う鈴木さんだが、フランスに行ってしまった結婚相手を追いかけて、レギュラー7、8本を放り出した事実に間違いはない。自分と彼しか見えなくなる感情を知った映画モドキの事件。日本に戻り、もうこの業界に足を向けられない……という人生の空白に、ディレクターが「その経験が声の演技にどう生きてくるのか知りたい」と、声をかけてくれたのだ。今と異なり声優は少なく、しかしテレビでの洋画放送は花盛りだった。とはいえ、あの頃の制作陣の度量の大きさには感謝しきれないのだそう。

■『高校教師』吹き替え当時は妊娠中!

 アラン・ドロン主演『高校教師』のヒロインを演じたソニア・ペトロヴナの声を吹き替えた当時は妊娠中だった。「すごい官能的なベッドシーン(の声)を、大きなお腹で暗いスタジオのピンスポ(ピンスポットライト)の中で演じ終わり、明かりがついた。アラン・ドロンの声の野沢那智さんが、『ひぇー、なんてこった! 明るくなって弘子ちゃんのお腹が目に入っちゃう』なんて(笑)。フィルム時代の話よ。そんなこともありましたね」と述懐。

■血潮沸き立つ生きざまを次世代に

 「声優はあくまでも影の仕事。でも、2時間の映画(の吹き替え)のどこかに、譲れない自分自身があふれ出る瞬間が必ずある。毎日のように会う仲間たちだから私たちは感じ合えた。上手い下手ではない何かがあった。先輩の技を盗むこともできた。良き時代でした」と振り返る鈴木さん。その恩返しに、と10数年前から声優学校の講師にもなった。「鈴木さんの、熱い血潮が沸き立つような生き方を、生徒に話してほしいと言われました。いやぁ、傷は傷、2時間の授業では語りつくせない……」という山あり谷ありの声優人生。社会人となり、感情をしまい込むことに慣れてしまった生徒たちの心と体を開くこと、刺激することは容易ではない、と苦い表情になる鈴木さんだが、志ある若者たちは、その人生の物語を知りたいはずだ。

鈴木弘子プロフィール

1944年生まれ。山形県出身。賢プロダクション所属。70年代~80年代の外国女優の声の担当は独壇場でロミー・シュナイダー、アリ・マッグロウ、カトリーヌ・ドヌーヴ、キャサリン・ロス、シガニー・ウィーバー、ジュリー・クリスティー、ダイアン・キートン、メリル・ストリープら、外国女優の声優を務めた映画は5000本ほど。代表作には、海外ドラマ「スパイ大作戦」シリーズ(リサ・ケイシー)、テレビアニメ「サイボーグ009」(003/フランソワーズ・アルヌール)、映画『スター・ウォーズ』シリーズ(シミ・スカイウォーカー)、『ゴッド・ファーザー』シリーズ(ケイ・アダムス・コルレオーネ)などが挙げられ、さまざまなジャンルで少なく見積もっても2万本余りの作品に携わっている。


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