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現代はラブストーリーには向かない…『イーダ』監督が過去を撮る理由

第71回カンヌ国際映画祭

パヴェウ・パヴリコフスキ監督 - カンヌ映画祭フォトコールにて
パヴェウ・パヴリコフスキ監督 - カンヌ映画祭フォトコールにて - Tristan Fewings / Getty Images

 現地時間11日、第71回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門出品作『コールド・ウォー(原題) / Cold War』の公式会見が行われ、前作『イーダ』(2013)でアカデミー賞外国語映画賞に輝いたポーランド人監督のパヴェウ・パヴリコフスキが破滅的でありながら美しいラブストーリーの舞台を冷戦期とした理由などを明かした。

モノクロの映像にうっとり!『Cold War』場面写真

 1960年代のポーランドで若き修道女が出生の秘密をたどる姿を描いた『イーダ』の映像美で称賛されたパヴリコフスキ監督の新作は、ポーランド、ベルリン、ユーゴスラビア、パリ……と鉄のカーテンで隔てられた東西を行き来しながら、10数年にわたって別れと再会を繰り返すピアニストと歌手のラブストーリー。こだわり抜かれたスタンダードサイズ(画面の縦横比が1.33:1)のモノクロ映像はため息が出るほど美しく、ポーランドの民族音楽からフレンチジャズまで絶品のナンバーが物語を彩っている。

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 本作の最後には「両親にささぐ」という一文が出てくるが、これはこのカップルがパヴリコフスキ監督の両親にインスパイアされた人物だからだという。「両親を描いたわけではないが、多くの部分が似ている。二人は恋に落ちて、別れて、また恋して、他の人と結婚して、また戻って、国を変えて……という破滅的なカップルだった」。冷戦期を舞台にした理由については「たくさんの障壁があるからだと思う。愛というのは、大きく言えば、障壁を乗り越えることだ」と切り出したが、それ以上に、現代はラブストーリーには向かないという監督の考えによるところが大きいようだ。

 「現代は、皆すごく気が散っているから。人々は常に携帯を見ていて、たくさんのイメージと情報に囲まれていて、雑音だらけ。そんな時代に、自分たち以外の世界は存在しないと思うような恋に落ちる人を想像するのはすごく難しい。本作で描いた時代は、人生はもっとドラマチックだった。だから僕は昔のことを描いてしまうのだと思う。雑音のない世界へのノスタルジアなんだ」

 撮影監督は『イーダ』でも組んだウカシュ・ジャルで、パヴリコフスキ監督は「よりドラマチックにコントラストを出し、ヒロインがとてもエネルギッシュだからカメラにより動きがある。音楽もダイナミック」と『イーダ』と比較して語る。「シーンは、セリフでちゃんと情報が与えられているかではなく、映像として機能しているものにすることが重要だ。だから、光を増やしたり・減らしたり、フレーミングを変えたり……と一つ一つのショットに僕たちはたくさんの時間をかける。サウンドも同様で、コンスタントに追加したり、なくしたりしている。時間がかかるから俳優にはフラストレーションを与えるだろうけど(笑)、全ては一つのプロセスなんだ」と映画という芸術に対する熱いこだわりを口にしていた。(編集部・市川遥)

第71回カンヌ国際映画祭は現地時間19日まで開催

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