女性が主人公『勝手にふるえてろ』と『名前』のヒロイン選びのこだわり

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ウディネ・ファーイースト映画祭でトークイベントに登壇した『勝手にふるえてろ』の大九明子監督(左)と『名前』の戸田彬弘監督。

 北イタリアで開催された第20回ウディネ・ファーイースト映画祭で、『勝手にふるえてろ』(2017)の大九明子監督と、『名前』(6月30日公開)の戸田彬弘監督がトークイベントを開催した。昨年末公開の『勝手にふるえてろ』はロングラン上映となっており、大九監督は「こんなにワガママに作った作品がきちんとお客さんにかわいがって頂けるのなら、もっと早くからめちゃくちゃやれば良かった」と監督デビュー10年目の快進撃に本音を明かした。

 同映画祭のトークイベントは、日本では滅多にない組み合わせの監督たちが同席することで、日本映画界の現状が見えてくることで好評を得ている。今回の2作も共通点があり、同映画祭で上映される他のアジア各国の作品はオリジナルが多い中、『勝手にふるえてろ』は綿矢りさの同名小説が原作で、『名前』は直木賞作家の道尾秀介原案。また若い女性が主人公と、まさに“今”を象徴している。

ヒロインを描いてきた大九監督だが、今後はおじさんを撮ってみたいと語る。

 ただし『勝手にふるえてろ』の松岡茉優と大九監督は、オムニバス映画『放課後ロスト』(2014)の一作『倍音』などこれまでに3作で仕事をしており、『名前』の駒井蓮はオーディションで選ばれ、戸田監督とのリハーサルを経て撮影を行っている。監督とヒロインが時間をかけて育んだ関係性が彼女たちの魅力を引き出し、作品に生かされている。

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 大九監督は松岡を起用した理由について「彼女はエキスパートな女優。原作を受け取ったとき、プロデューサーと同時に『これは松岡茉優でやりたいね』とすぐに決まった」という。

 一方、戸田監督は「駒井さんは青森出身で、オーディションで会ったのは上京して半年ぐらいのとき。フレッシュで何の曇りもなく、それが一つの決定打となりました。ただ今回がほぼデビュー映画なので、事前にリハーサルをしないと芝居が厳しいかと思い事務所に相談したところOKとなったので、合格となりました」と説明し、事務所側の駒井を女優として育てたいという共通認識を得られたことが後押ししたようだ。

演劇界にも負けじとオリジナル戯曲で映画化を進めると語る、戸田監督。

 また原作・原案があれど、両監督とも脚色や編集、映像で、映画ならではの独自の表現を追求している。すでに原作に頼らずともオリジナルで勝負できる力はあるが、よく語られるように日本では、原作ファンという動員が見込める安全牌がないと企業からの出資を得難いという現状が立ちはだかっているようだ。

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 大九監督は「オリジナル脚本はすでに6作手元にあります。でもプロデューサーが予算集めに動くと、全くお金が集まらない。そうこうしている間に『この原作でやりませんか?』とお話を頂いて、それが続いたのがこの10年です」とこれまでの苦悩を明かした。

 もっとも『勝手にふるえてろ』が第30回東京国際映画祭で観客賞を受賞するなど高評価を得たことで、今後の可能性が広がった。大九監督は「正直言ってこの10年は、ヒロインを描くことにすごくこだわりを持って挑んできたが、そろそろおじさんを撮ってみたい。失礼な言い方かもしれないけどわたしにとってはチャーミングに思えるし、もっと褒められていい人たちだと思ってます」と今後の構想について言及した。

 戸田監督の『名前』は国内外の映画祭での上映が先行し、いよいよ全国公開となるが、すでに今後の活動について明るい兆しを見出しているようだ。「僕は映画と演劇の両方で活動していますが、演劇の方ではオリジナルが盛んですし、最近は演劇で名を馳せた監督が映画界に進んでいる現象も多いように思います。今、すでに自分もオリジナル戯曲を映画化すべく進めています」と続いた。

 現状に甘んじない両監督の姿勢が、日本映画界に新風を巻き起こすことを期待したい。

 なお、『勝手にふるえてろ』と『名前』はドイツ・フランクフルトで5月29日~6月3日に開催される第18回ニッポン・コネクションでも上映される。(取材・文:中山治美)

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