DV加害者に親の資格ない 映画『ジュリアン』監督が語るメッセージと天才子役の才能

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本日公開『ジュリアン』のトマ・ジオリアとグザヴィエ・ルグラン監督

 離婚した両親の間で揺れ動く少年を通じて、家庭内暴力(DV)の問題を浮き彫りにするフランス映画『ジュリアン』の公開がスタート。DVという深刻な社会問題を扱いながら、名作『シャイニング』を想起するサスペンスに仕上げたグザヴィエ・ルグラン監督と、子役のトマ・ジオリアに、撮影の裏側と本作に込めたメッセージを聞いた。

【動画】父親の狂気が少年を追い詰める…映画『ジュリアン』予告編

 父親アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)のDVが原因で両親が離婚し、母親のミリアム(レア・ドリュッケール)と姉の3人で暮らす11歳の少年ジュリアン。裁判所が彼の親権を共同としたため、隔週の週末毎に父親と2人きりですごすことなったジュリアンは、会うたびに母の連絡先を聞き出そうとする父の追求に耐え続ける。

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 DVが子供にも与える恐怖と影響を、圧巻のリアリティーで描く本作。監督は「もちろん、子供の成長には両親が必要だと思います」としながらも、暴力を働いた人間に親権を与える制度に疑問を投げかける。「今回扱った家庭内暴力とは、(フランス語では)夫婦間やパートナー間における問題に限定されるニュアンスを含んでいます。しかし実際には、パートナーに対して暴力をふるうような人は、子供にも暴力的になり得る。私は、暴力を振るった時点で、その人は親権を持つべきではないと考えます」

 そんな常に暴力の匂いを漂わせる父親に、一人で向き合うジュリアン少年を演じたのが、本作で長編映画デビューを果たしたトマだ。父親の追及に必死で耐える苦悶の表情や、子供らしい無邪気な笑顔の演じ分けは実に見事だが、監督は「指導という意味では、特別なことはしてないんです」と告白する。「周囲の状況を良く見て、自分の気持ちを大事にするように伝えました。撮影中に自分が感じた感情を隠さず、そのままの気持ちを出したら演技になると伝えただけなのです」

 トマ本人は、漫画「デスノート」が大好きだという少し大人びた少年。落ち着いた物腰で「(撮影では)その時の自分の感情を大事にしました。演技というより、共演者の皆さんに助けてもらいながら、少しづつジュリアンという人物を作っていった感じです」と静かに語る。

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 ジュリアンと父親の掛け合いのなかでも、狭い車の中で母の連絡先を聞き出そうと父親に迫られるシーンは、息が詰まりそうな緊張感にあふれている。撮影におけるプレッシャーも相当な物だったと想像できるが、トマは「確かにすごいストレスはありました。でもすでに(父親役の)ドゥニさんとの信頼関係ができていたので、安心して演じることができたんです」と笑顔で振り返る。

 そんなトマについて「最初に会った時点で、トマには成熟した大人な部分と、壊れそうな繊細さ、そして知性を感じました。だから彼を選んだんです。本能的に俳優の仕事に向いていると感じましね」という監督。現場では、むしろ大人の俳優の方がプレッシャーを感じる場面もあったという。「(父親役の)ドゥニさんは、普段はユーモアにあふれ、常に笑っているような人。だから、暴力的な父親役はすごく苦しいと言っていましたね。『こんなことをしなくちゃいけないなんて』と演じた直後に泣いてしまったことがあるくらい。悲しいと同時に、それだけのシーンを撮れることが幸せでもありました」

 現実の両親は「いつも僕がやりたいことを選ばせてくれて、それが決まると、一緒に伴走するようにサポートしてくれるんです。いつも僕がやりたいこと、やることを尊重してくれます」というトマ。「この作品に参加するまで、映画の世界については何も知らなかったんです。でも、いろいろなことを知ることができて、今は俳優のお仕事を続けたいと思っています。次の出演作も決まっていますが、何でもかんでも受けるのではなく、しっかりと演じがいがある役をやっていきたい」と明確な目標を掲げる。

 もちろん、本作で第74回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)に輝いた監督も、トマとの再タッグを熱望している。「それはもちろん。今やトマは、フランスを代表する俳優ですから。機会があればぜひ一緒に仕事がしたいです。何と言っても彼は、私が発掘した逸材ですから、もう私のものです(笑)」。(編集部・入倉功一)

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