トム・ヒドルストン、S・キング原作映画で4日間ぶっ続けダンス 開放感ある撮影で「悩みも忘れた」

映画『アベンジャーズ』シリーズのロキ役で知られるトム・ヒドルストンが、主演最新作『サンキュー、チャック』(全国公開中)を引っ提げリモートインタビューに応じ、傑作ホラー小説を数多く生み出した原作者スティーヴン・キングの世界観や、劇中の見せ場であるダンスシーンの裏側を語った。
キングの中編小説を映像化した本作は、終末世界に突如現れた「ありがとう、チャック!」という謎の広告をきっかけに、会計士・チャック(ヒドルストン)の39年の人生を遡るヒューマン・ミステリー。チャックの謎を紐解く物語は、第3章から第1章まで時間を逆行して語られるというユニークな構成で、第49回トロント国際映画祭では、最高賞となる観客賞を受賞している。
『シャイニング』『キャリー』『ミスト』『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』といったホラー作品から、『ショーシャンクの空に』『スタンド・バイ・ミー』『グリーンマイル』など心に響く感動作まで、キングが執筆してきた名作は枚挙にいとまがない。誰もが一度は触れるキングの世界観に、ヒドルストンはいかにして飛び込んだのか。
「私とスティーヴン・キングの出会いは、人によっては“型破り”だと思うかもしれません。というのも、入口は本ではなく、映画だったんです。フランク・ダラボン監督による『ショーシャンクの空に』と、ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』でした。キングが生み出した作品の中でも、特に温かくて、魂がこもっていている作品たちです。もちろん、不穏でダークな題材を扱うことも知っていましたが、私にとってキングは、『人生におけるかけがえのないもの』について描く、洞察力に満ちたアーティストでした」
世界終焉のカウントダウンが迫るなか、街全体を埋め尽くすチャックの広告。彼の素性が明かされぬまま第2章に突入すると、チャックの人生が少しずつ明かされていく。中でも、スーツ姿のチャックが街中で披露する約5分間のダンスシーンは本作のハイライトとも言える圧倒的な完成度で、その先に待つ第1章の展開を知った上で再訪すると、シーンの意味がより深く理解できる。
歌って踊ることが大好きなヒドルストンだが、本格的なダンス練習は本作が初めて。『ラ・ラ・ランド』の振付師で知られるマンディ・ムーアらの下、約6週間で古典的なダンスを頭に叩きつけた。
「いくつかのステップや動きは、自分の身体に自然と馴染みましたが、中には完全に初めてのものもあり、脳を鍛え直さなければなりませんでした。私も今45歳ですから(笑)。ロンドンのダンススタジオにも、毎日約4時間ほど通って特訓を受けました。実に刺激的でした。ダンスは薬みたいなものです。毎日踊るのは、健康にとてもいいことです」
ダンスシーンは4日間ぶっ続けで撮影したというヒドルストンは、「まるで重力に逆らっているような感覚で、魂が肉体の外へと引き上げられるような気持ちでした。一時的に悩みも忘れてしまいました」と当時の心境を告白。ダンスシーンに込めた思いを熱心に語った。
「私たちは、自分がいつ死ぬのかを知らないけれど、今生きていることはわかっています。だから『好きなことをしなさい』と。好きなことをすれば、喜びが生まれ、その喜びを共有すれば、他人の人生だって変えることさえあるのです。映画のダンスや音楽であれ、登山、サッカー、ランニング、数学、絵画、何でもいい。人生は永遠ではないのだから、好きなことをやってください。チャックのようにブリーフケース(仕事用カバン)を置いて、踊れるうちに踊っておきましょう」
キング原作の映画&ドラマ化は、現在も複数企画されている。ヒドルストンが映像化に挑戦してみたいキング作品について尋ねると「『ショーシャンクの空に』と言いたいところですが、オリジナル版が完璧すぎて、私なんかが手を出せるような作品ではありません」と謙虚な姿勢。「また、以前ある人から『ダーク・タワー』を読んだ方がいいと言われたことがあります。気になっているのですが、かなり壮大な世界観だそうで、本腰を入れて小説と向き合おうと思っています」とも語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)


