興収31億円超え!『翔んで埼玉』はなぜヒットしたか?

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大真面目に茶番劇(?)を演じた二階堂ふみとGACKT『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 公開から、1か月以上経ちながら国内映画ランキングでTOP3をキープし続けている映画『翔んで埼玉』。特に一度ランキングを下げながらTOP3に返り咲いて見せるなど、昨年のナンバー1ヒット作品となった『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)を思い起こさせるランキングアクションを見せています。すなわち、“社会現象”になりつつあるという兆しと言い換えてもいいかもしれません。改めて、なぜここまでヒットをしたかを振り返ってみましょう。(文・村松健太郎)

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累計発行部数69万部越えの凄さ!

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 原作は昨年単行本が100巻を突破した「パタリロ!」などで知られる魔夜峰央の未完の作品。マツコ・デラックスがMCを務めるテレビ番組「月曜から夜更かし」で取り上げられ、再販され大ヒットを記録しました。

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 読んでみるとわかるのですが、昭和57年に雑誌に連載されたこともあり、当時の時事ネタなどもふんだんに取り込まれているギャグマンガですが、結果として3話までで途切れた未完結の作品です。

 そんな作品が累計発行部数69万部を超えるベストセラーとなりました。実はこの発行部数というのもある種の“マジック”があり、発行されたコミックスの巻数でどうにでもなる数字であったりします。例えば、発行部数500万部のベストセラーといってもコミックが20巻あった場合に1巻当たり25万部となることになります。もちろん「ワンピース」や「名探偵コナン」のように億単位の発行部数となってしまえば話は変わりますが……。

 そういう意味で「翔んで埼玉」は1巻で69万部を超えているので、単純に考えればそのままダイレクトに69万人の元へ届いた正真正銘のベストセラーコミックということになります。

業界内で盛り上がった!?

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 『翔んで埼玉』がヒットするのではと感じたのは、筆者が2018年末に『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』(2018)を劇場で観たときでした。話題作ということもあって劇場は満席でしたが、そこで流れた『翔んで埼玉』の予告編に劇場の観客が大盛り上がりしたのでした。反応ということで比べれば“佐藤健がシークレットゲストとして登場した瞬間”並みの湧き方でした。

 そして、年が明けて映画関係者向けに試写会が始まります。まず驚いたのが、配給の東映が慌てるほどの混み具合で、当初の予定より、回数や定員が増え業界内の人たちが“とにもかくにも観てみたい”と思わせる作品だという感覚が広まり始めます。こういった関係者試写に来る人は基本的にマスコミや映画館関係の人たちが対象になっています。このような人たちだけの上映となれば当然映画の観方も、場内の空気も大きく変わります。わかりやすく言えば“品定めの目”になるわけです。

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 ところが『翔んで埼玉』はそんな“品定めの目”を忘れさせてしまう映画でした。場内にいる関係者はいつしか普通の観客と同じように笑い声を上げ、手をたたきながら観ていました。同じウケ方をした映画に最近作では『銀魂』シリーズがあり、これも試写室なのか映画館なのかわからなくなるほどのウケ方でした。ご存知の通り『銀魂』シリーズは大ヒットを記録しました。

公開のタイミングにも恵まれた!?

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 『翔んで埼玉』が公開されたのが2月22日ですが、お正月第2弾の中心作と言われていた『マスカレード・ホテル』と『七つの会議』の公開からすでに数週間が経過し、競合することはありませんでした。同じ初日作品の『アリータ:バトル・エンジェル』だけが難敵でしたが、これをかわし切って公開1週目でランキング1位を確保しました。

 今のシネコン中心の公開形態ではなんといっても初週の勢いが全てです。結果として映画『翔んで埼玉』は最高の形でスタートを切りました。翌週以降に登場したのは『映画ドラえもん のび太の月面探査記』とアカデミー賞関連のアート作品が続き、『翔んで埼玉』は競合する作品もなく、格好の環境でヒットを続けていくことになります。

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 公開2週目は『映画ドラえもん』に首位を譲ったものの1週目と比べたときの週末の動員は107%、興行収入108%と、数字の上では更に盛り上がっていったことがわかります。土日だけでなく平日も大盛況を記録していきます。

 ちなみに、ご当地である埼玉では23スクリーンで公開された結果、27スクリーンで公開された東京を抑えてシェア第1位となりました。その中心となったMOVIXさいたまは公開早々“聖地”と化しました。MOVIXさいたまは元々全国でも屈指の動員力を劇場の1つだったのですが、今回はそこに“地元”という強みも加わり、またマスコミにも取り上げられるなど劇場と映画が一体化して盛り上がりを見せました。

ご当地映画ブームも後押し!

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 近年にヒットする邦画のなかのパターンの1つが“ご当地”映画です。具体的に言えば北海道出身の大泉洋主演の『探偵はBARにいる』シリーズや、伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨のコインロッカー』(2006)や『ゴールデンスランバー』(2009)などがそれにあたります。『君の名は。』(2016)の岐阜・飛騨なども同じですね。

 各都市でフィルムコミッションという受け皿の整備も進んでいることもありますが、スクリーンに“おらが郷”が映ることでその土地の人々の琴線に触れることになります。直接的に関係がなくても、馴染みのある土地が舞台の映画ということで“勝手連”的に応援団が出来上がっていきます。さらに“聖地巡礼ブーム”もあってその土地推しの映画はその土地の映画館で観るべきだと考える人も増えています。

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 そんな中でタイトルに堂々と“埼玉”と記した『翔んで埼玉』のヒットは必然的な結果だったのかもしれません。たとえ、劇中でその土地の描かれ方が多少“ディスり”が入っていてたとしても、その土地の人だからわかるニヤニヤの止まらない小ネタに地元民はうれしくて仕方がありません。つい先日も本作とコラボレーションしている埼玉西武ライオンズ戦に、映画の出演者で埼玉県出身の益若つばさが始球式を行ったりと、どこまでも徹底して埼玉推しをし続けています。

5年分テレビに出たというGACKT大露出!

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 映画の宣伝に合わせて多くのバラエティー番組、情報番組にメインキャストが登場するのはすっかりお馴染みの風景になりましたが、そんな中でも主演の一人を務めるGACKTの露出量は多く、本人いわく5年分のテレビ出演を2019年初頭から公開までの2か月でしたというほどのものでした。

 毎年正月に放送されるテレビ番組「芸能人格付けチェック」で無敗記録を更新し続けることが話題になるGACKTですが、そこから始まり、多種多様な時間帯と内容の番組に出演し続けました。

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『テルマエ・ロマエ』の武内監督の本気の遊び!

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 原作者魔夜峰央の指名で容姿端麗なアメリカ帰りの転校生・麻実麗を演じたGACKT。GACKTが高校生という無理なキャスティングもそれを逆手に取って映画オリジナルの都会指数を巡るバトルに昇華するなど、見事にプラス要素に変えて見せました。またもう一方の主役(=ヒロイン?)東京都知事の息子・壇ノ浦百美に女優の二階堂ふみを男装させて演じさせるというのもなかなか冒険のキャスティングです。

 これは阿部寛市村正親北村一輝を古代ローマ人にして見せた『テルマエ・ロマエ』シリーズの武内英樹監督の本領発揮といっていいでしょう。クライマックスの東京都庁シーンは実際に現地撮影を行っています(CGなどではありません)。この辺りの本物志向は『テルマエ・ロマエ』の撮影をイタリア・ローマの名門撮影所チネチッタスタジオで行った武内監督の本物志向が邦画最大級の茶番劇を支えました。

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埼玉県の人口730万人超える動員数になるか?

『翔んで埼玉』より - (C) 2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

 最近の映画のはやりという長いスパンで見ても、公開時期という短いスパンで見てもこれ以上ないタイミング登場した『翔んで埼玉』。冒険のキャストをこなせる監督の腕と、この茶番を大真面目に演じたキャストたち。そしてこの映画を受け入れた埼玉県人と日本の観客の体制が整ったこと、ありとあらゆる要素が“今、ここでしかない”というタイミングが重なった結果『翔んで埼玉』は大ヒット作となりました。

 同じ魔夜峰央の代表作「パタリロ!」の実写版の公開も控える中、ゴールデンウイークに向けて『翔んで埼玉』がどこまでヒットをし続けるのか、まだまだ目が離せません。(ランキング・数字などは興行通信社、日本映画製作者連盟調べ)

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