名作映画やポスターから懐かしい思い出がよみがえる!

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今も愛される企業キャラクター「佐藤製薬」のサトちゃん。象は老若男女に愛される動物園のアイドル的存在で、平均寿命も長いことから製作会社のシンボル・キャラクターに相応しいと選ばれた。 - (C)NPO法人 古き良き文化を継承する会

 佐藤製薬の「サトちゃん」やNHKの人形劇「ブーフーウー」のキャラクターデザインを手がけた「グラフィック・デザイナー土方重巳の世界展」が6月2日まで、愛知・刈谷市美術館で開催中だ。土方さん(1915~1986)は映画ポスターも多数手がけており、戦時中に製作された文化映画からジャン・ルノワール監督『大いなる幻影』(1937)やマルセル・カルネ監督『北ホテル』(1938)などの原画も多数展示されており、貴重な鑑賞の機会となっている。

東宝映画退社後は、子どもに向けた仕事に取り組んだ。イラストは1960年に発売された別冊キンダーブック「さんびきのこぶたものがたり ぶーふーうー」の原画。同年にはNHK「おかあさんといっしょ」の人形劇にもなった。(C)NPO法人 古き良き文化を継承する会

 土方さんは1915年(大正4年)生まれ。武蔵野美術大学の前身である多摩帝国美術学校を卒業、東宝映画(現・東宝)に就職し、日本映画のみならず当時輸入していた洋画、さらには演劇と同社のポスターや新聞広告などのデザインを担当。戦後最大と言われる労働争議「東宝争議」が起きた1948年まで10年間、勤務した。

土方さん自身が「好きなポスター」と公言していたジャン・ルノワール監督『大いなる幻影』(1937・フランス)のポスター。(C)NPO法人 古き良き文化を継承する会

 今のポスターは写真を使用するのが主流だが、当時は「描き版」と呼ばれる手描きで、デザイナーの腕の見せどころだった。

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 特筆すべきは文化映画のポスターだろう。文化映画とは第2次世界大戦中の1939年(昭和14年)に施行された映画法の下、国策の一環として製作されたジャンルで、国家総動員の宣伝のために映画館での上映が義務付けられていた。映画法自体は終戦後に廃止になっており、さらに亀井文夫監督『小林一茶』(1941)のような優れた文芸作品もあるが、映画史的にも忘れてはならない歴史だ。

東宝が配給していたマルセル・カルネ監督『北ホテル』(1938・フランス)のポスターも土方さんが描いた。(C)NPO法人 古き良き文化を継承する会

 土方さんは井上莞監督『空の少年兵』(1940)や海軍軍事普及部・指導の『わが海軍』(1940)などのポスターを描いており、公益財団法人川喜多記念映画文化財団の和地由紀子さんは「現存する『文化映画』関連の資料は非常に少なく、かつ通常破棄されてしまうポスターの原画も残っていたことは、まさに奇跡と言えるだろう」と同展のカタログにコメントを寄せている。

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貴重な“文化映画”時代のポスター。亀井文夫監督『小林一茶』(1941)(C)NPO法人 古き良き文化を継承する会

 土方さんの作品を管理し、同展にも企画協力しているのがNPO法人古き良き文化を継承する会。代表の根本隆一郎さんによると、土方さんの没後30年を目前にした2015年、土方さんの古いアトリエなどから原画など数千点が発見。根本さんがフランソワ・トリュフォー監督『大人は判ってくれない』(1959)のポスターで知られる野口久光さん(1909~1994)の展覧会も手掛けるなど実績もあることから、作品の保存と継承を目的に遺族から寄贈を受けたという。

 なお、根本さんは土方さんや野口さんの展覧会での経験を生かして、名作映画の予告編やポスターを使った文化療法(回想法)を特別養護老人ホームや高齢者施設で行っている。回想法とは1960年代にアメリカの精神科医が提唱した心理療法で、認知症の予防や進行抑制につながるとして注目されている。

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 根本さんは「皆さん、名作のポスターや映像に触れることで当時の感動や思い出がよみがえってくるのでしょう。来場者の顔が、展覧会に入場する前と後では明らかに違って、実に良い表情になるのです。そこから回想法のヒントを得ました。優れた作品は時代を超えて、皆さんの心の財産として輝き続けていることを実感します」と語っている。(取材・文:中山治美)

「グラフィック・デザイナー土方重巳の世界展」は6月2日まで、愛知・刈谷市美術館で開催中

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