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ベルリン映画祭で観客賞受賞の『サーティセブンセカンズ』、Netflixで海外配給決定

トロント国際映画祭で行われたジャパン・フィルムナイトに(写真右から)深田晃司監督、黒沢清監督と共に出席したHIKARI監督
トロント国際映画祭で行われたジャパン・フィルムナイトに(写真右から)深田晃司監督、黒沢清監督と共に出席したHIKARI監督 - (撮影:山口晋)

 今年のベルリン国際映画祭でパノラマ部門の観客賞と国際アートシアター連盟賞をダブル受賞したHIKARI監督の初長編作『サーティセブンセカンズ』の海外配給が、ストリーミング配信大手Netflixに決まった。同作はベルリン国際映画祭後もトロント国際映画祭、BFIロンドン映画祭、第32回東京国際映画祭のJapan Now部門選出と快進撃を続けており、まさにNetflixが青田買いした形だ。日本では2020年2月劇場公開が決まっており、これらの高評価が大きな弾みとなりそうだ。

 同作は、漫画家のゴーストライターとして働いていた脳性麻痺のユマが、自身の漫画を出版社に売り込んだ際に恋愛経験の少なさを指摘されて一大決心し、人生の新たな扉を開いていくヒューマンストーリー。タイトルは、出産の際に37秒間無呼吸だったことが原因で脳性麻痺になった、主人公の運命の時間を表したもの。オーディションで主人公に抜テキした佳山明の生い立ちをヒントにしたHIKARI監督のオリジナル脚本だ。

 HIKARI監督は大阪出身で、高校時代に渡米。現在はアメリカ・ロサンゼルスと東京を拠点に活動している。物語の着想には、アメリカ社会から見た日本という視点が生かされているという。「“もうちょっとこうしたら楽に生きられるのに”と思うことがたくさん。特にLGBTQや障害など差別と受け取られやすい問題には、タッチしない傾向がある。しかもこんな大都会なのに車椅子で住みにくい街はないですよ。なので、どこかで日本の窮屈さを描きたい」とHIKARI監督。

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 当初は交通事故で下半身不随になった主人公のラブストーリーを考えていたという。オーディションを行い、知的障害などさまざまな障害を持った約60人と面接した。そこで出会ったのがユマ役を射止めた脳性麻痺の佳山明。彼女自身の生い立ちやキャラクターを織り込みながら脚本を大幅に変更。その脚本はアメリカのサンダンス映画祭とNHKが主宰する脚本ワークショップでブラッシュアップし、製作に漕ぎ着けた。

 「37秒って一瞬じゃないですか。でもそれが一生に関わる問題となり、特に日本では健常者と障害者というカテゴリーに分けられてしまう。それってどうなん? って考えましたね。もっとピースなソサエティーになればいい、もっと互いが理解できるようになれば。そんな思いを作品に込めました」

 HIKARI監督は名門・南カリフォルニア大学(USC)大学院卒業制作短編映画『Tsuyako』(2011)が全米監督組合(DGA)など多くの国際映画祭で注目され、以来、イタリアのファッションブランド「DIESEL」や自動車メーカー「スバル」のCMも手がけるなど気鋭の映像作家として引っ張りだこの存在だった。しかしここで挑戦しなければいつまで経っても長編は撮れないと、CMのオファーを断って挑んだ決意の作品だった。

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 「わたしたちの周りでは長編1作目が良い映画祭に入らないと、その後、自分の好きな映画はなかなか撮れないと言われています。ベルリン国際映画祭に選ばれてホンマに良かったなと実感しています」

 監督も無名の新人なら主演も無名、さらにハンディキャップのある主人公と、安全策を取る日本映画界からはまず生まれなかったであろう意欲作が、軽快に海を越えていくこの痛快さ。颯爽と一人歩きし始めた本作がどこまで羽ばたいていくのか、期待したい。(取材・文:中山治美)

『サーティ セブン セカンズ』は2020年2月、東京・新宿ピカデリーほか順次全国公開
Netfixでの海外配信は2020年の予定(日本の配信は未定)

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