目を覆いたくなる悲惨さ…ホラー映画よりホラーなベネチア受賞の問題作

怖いのに目が離せない - 映画『ニュー・オーダー(英題)』より
怖いのに目が離せない - 映画『ニュー・オーダー(英題)』より - Courtesy of TIFF

 ある政治体制の転覆により、国がより恐ろしい体制へと猛スピードで傾いていくさまをリアルかつ凄惨に描いたメキシコ映画『ニュー・オーダー(英題) / New Order』が第45回トロント国際映画祭で上映された。『父の秘密』『或る終焉』『母という名の女』の鬼才ミシェル・フランコ監督が手掛け、第77回ベネチア国際映画祭では銀獅子賞(審査員大賞)に輝いた話題作だ。

【動画】フランコ監督が描く毒親…『母という名の女』予告編

 物語はメキシコシティの邸宅で富裕層が豪奢な結婚パーティーを楽しんでいる一方、すぐ傍の通りでは不均衡な社会システムに異を唱える暴力的な抗議運動が行われているという危うさを感じさせるシーンからスタート。貧困層が邸宅に乱入するや、血まみれの略奪が行われ……。心優しき若き新婦と、長年にわたって彼女の一家に仕えてきた使用人親子らをメインキャラクターとして、もともと不安定だった国が一瞬のうちに堕ちていくさまが、息をつく暇もないほどスリリングに映し出され、ホラー映画以上に恐ろしい。

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 現在の不安定な世界情勢を反映したかのような本作について、フランコ監督は「6年前、ティム・ロスと『或る終焉』を撮っていた時に、世界はどんな風に間違った方向に行ってしまうのだろうかという話をしたんだ。権利を求める声が上がり、軍が力を増し……といったことがいろいろなところで起きていて、正しい方向には進まなかった。だから、本作で描いたことはすでに起きていると思っている」とQ&Aで説明。

 「メキシコには6,000万人の貧困層がいて、ほとんどのラテンアメリカでは貧困層が大部分を占めている。そして汚職がある。僕は子供の時、父や大人たちに『これでOKなはずがない』と言い続けていたのを覚えている。貧しい人たちがたくさんいるのに、なぜ僕たちは恵まれているの? なぜごく一部の人間だけがまともな暮らしができるの? と。いつか爆発することになる時限爆弾のようだと思っていた。社会的格差というのは人種問題でもある。メキシコも白人に支配されているから。メキシコに限らず、世界も過激な方へ進んでいる。新型コロナウイルスのパンデミックはすでに苦しんでいた人々に打撃を与え、本作は不幸にも、今の時代に合った映画になってしまった」

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 本作は、こうした状況に陥った場合、勝者など存在し得ないということを痛烈に描き出している。国が間違った人の手に落ちることを許してしまえば、富裕層も貧困層も関係なく、誰もが血を流すことになるのだ。「富裕層は、社会を良くするように努力しなければ、結局は全てを失うことになると理解しないといけない。今はどちらにとっても良くない状況だ」「楽観的な要素などない映画だけど(笑)、唯一あるとすれば、振る舞い方を変えようというメッセージだ」とフランコ監督は語っていた。(編集部・市川遥)

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