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仰天エピソードも!アンソニー・ホプキンスが愛されるワケ

『ファーザー』より
『ファーザー』より - (C) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020

 最新作『ファーザー』(公開中)で認知症を患った老人を演じ、2度目となるアカデミー賞主演男優賞に輝いたアンソニー・ホプキンス。83歳での同賞受賞はアカデミー賞93年の歴史でも最高齢記録だ。まさに現役最高の名優だが、近年ではSNSでお茶目な一面を披露するなど愛されキャラとしての人気が高まっている。いったいサー・アンソニー・ホプキンスってどんな人? あらためて振り返ってみた。

【動画】83歳で2度目の主演男優賞!『ファーザー』

 ホプキンスといえば、『羊たちの沈黙』(1991)で演じたハンニバル・レクター博士があまりにも有名。常人離れしたIQと教養を持ち、人肉を喰らう趣味がある犯罪者。しかし獄中からFBI捜査官のクラリス(ジョディ・フォスター)のために犯人につながるヒントをくれるという、正邪では判断できないキャラクターが当たり役となり、初のアカデミー主演男優賞を受賞した。その後も『ハンニバル』(2000)と『レッド・ドラゴン』(2002)で2度、レクター博士を再演している。

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 面白いのは、カリスマ的なシリアルキラーを演じつつ、自分の演技を身もフタもなく解説してしまうところ。2021年にジョディ・フォスターと対談した時にも、上品だが不気味なレクター博士独特の喋り方について「『2001年宇宙の旅』(1968)のコンピューターHAL9000の口調を真似した」と、あっけらかんとしたネタバラシをしている。世界が絶賛した怪演を神秘のベールで包んだりしないあけすけさも、ホプキンスらしい魅力なのだ。

 1960年代から70年代にかけてのキャリアの初期はイギリスの名門、ロイヤル・ナショナル・シアターに所属し舞台俳優として評価を確立し、母国のほかアメリカで映画やドラマなど映像の道へとシフトを試みるも、いまいち伸び悩んだ。そこに飛び込んできたのが『羊たちの沈黙』の出演依頼だった。脚本を読んで夢中になったものの半信半疑で「これは本気のオファーなのか?」と確かめたという微笑ましいエピソードも、ジョディ・フォスターとの対談で明かしている。

 演技論は理路整然としており、ロバート・デ・ニーロに代表されるメソッドアクターの過剰な役作りより、台本を何度も読み込んで暗記することを大事にしているという。丹念に準備を積み重ねるからこそアドリブもできるし、台本を理解していない役者との共演は「時間のムダ」と『ブレイン・ゲーム』(2015)の際に不満をもらしていた。徹底して職人的なアプローチを貫きつつ、常に強烈なインパクトを残すのは努力を惜しまぬ天才だからとしか言いようがない。

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 また、仕事選びの基準も「オファーがくるから出るだけ」とそっけないが、代表作である『日の名残り』(1993)や『ハワーズ・エンド』(1992)といった文芸作だけでなく、『マスク・オブ・ゾロ』(1998)で剣戟アクションをしてみたり、『M:I-2』(2000)、『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)、『マイティ・ソー』シリーズといったハリウッドの娯楽超大作にも気軽に顔を出す。どんなジャンルもこなしつつ、常にマイペースに演技を楽しんでいるように見えることも、ホプキンスの超然としたイメージに一役買っている。

 マイペースといえば、『ファーザー』で英国アカデミー賞を受賞した際にはホテルで油絵を描いていたと言い、授賞式後のインタビューにリモート参加した。今年のアカデミー賞主演男優賞が発表された時は、授賞式会場ではなくイギリスにいて、時差もあって熟睡していたというのだから、大御所の余裕たるやすさまじい。

 ちなみに音楽の才能にも秀で、自らが作曲したクラシックアルバムをリリースしたこともある。『ハンニバル』でレクター博士が趣味でピアノを弾いているのも、ホプキンスがピアノを嗜むことから採用されたアイデアだ。TwitterやInstagramにピアノを演奏する動画を投稿することも多い。

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 SNSは頻繁に更新しており、2018年にはギョロ目を剥いて踊りまくる自撮り動画をTwitterに投稿して「あの名優が突如恐怖映像をアップした!」とニュースになるなど、ほとんどYouTuber状態。昨年末にはアル中を克服するための断酒が45周年を迎えたことを発表し、依存症と闘っている人たちを勇気づけるメッセージ動画をアップしている。

 一見とっつきにくそうだが、自由気ままに人生をエンジョイしていて、ユーモアと茶目っ気もたっぷりな人格者。もし、いまだにレクター博士の猟奇的なイメージが脳裏に焼き付いている人は、ぜひホプキンスの微笑ましいSNSを覗いてみて欲しい。

 と、インターネットから垣間見えるプライベートな側面を交えて紹介してきたが、『ファーザー』での演技はまさにオスカー像にふさわしい鬼気迫るもの。認知症が進んで意識が混濁していく老人の、怒りと不安、威厳と弱さといった相反する要素を自在に演じ分け、人間の複雑な内面をそら恐いくらいの精度と密度で表現している。これ一本で天才俳優ホプキンスのさまざまな顔が見られるという点でも、まさに偉大なキャリアの集大成のような作品に仕上がっている。(村山章)

映画『ファーザー』日本版予告編 » 動画の詳細
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