Fukase、俳優デビューで初めて得た解放感「純度100%の表現者に」

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 菅田将暉主演の映画『キャラクター』(6月11日公開)で、美しき殺人鬼・両角(もろずみ)役で俳優デビューを果たした「SEKAI NO OWARI」のボーカル・Fukase。これまで俳優業は避けてきたという彼が、演じることでいまだかつてない感覚を味わったという。1年半以上にわたる演技レッスンを経て臨んだ撮影現場で得たこととは……?

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映画出演の決め手

映画『キャラクター』より両角(Fukase)と漫画家・山城(菅田将暉)(C) 2021 映画「キャラクター」製作委員会

 本作は、菅田とは『帝一の國』(2017)に続くタッグとなる永井聡が、「20世紀少年」などの浦沢直樹作品でストーリー共作を手掛けてきた長崎尚志が10年の月日をかけ練り上げた企画を映画化。Fukaseは、漫画家としての成功を夢見みるアシスタント・山城(菅田)の運命を狂わせていく殺人鬼・両角を演じている。ミュージシャンの中でも唯一無二のキャラクター、カリスマ性で知られるFukaseにとって、これまで断ってきた出演オファーを受ける決め手になったのは、殺人鬼という設定だった。「音楽活動でいっぱい、いっぱいだったこともありますし、これまでお芝居をやったことがなかったので、未熟である自分が出ることで作品の完成度を下げてしまうのではないかと。また、興味本位で手を出してはいけないものだと思って今回もお断りするつもりでした」

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役づくりのヒントを与えてくれた神木隆之介

 Fukaseは悩んだすえ、撮影の前に演技レッスンを受けることを条件に出演を承諾。その後、1年半にわたってワークショップを受けることになるが、彼の助けになったのが神木隆之介の存在。神木とは、彼が声優を務めたアニメーション映画『メアリと魔女の花』(2017)の主題歌を SEKAI NO OWARI が担当していたり、SEKAI NO OWARI の楽曲「サザンカ」(2018)のMVで神木とFukaseが兄弟役で共演していたり、かねてより親交を深めている。「オファーを受けて、すぐに神木くんに相談したんです。そしたら、『Fukaseくんは優しい殺人鬼が合うと思うよ』と言ってくれて『なんだ、それは!?』といろいろ考えましたね(笑)。それで、その優しさを声から作ってみようと、いつもより1トーン上げ、それを録音したものをイヤホンで聴きながら、両角のキャラを決めていきました」

 さらに、役づくりに大きな影響を与えたのは、子どもだったという。「僕の中には、両角自身が善や悪という認識があるイメージはなく、自分の作品づくりに忠実な欲を持った忖度のない人間という印象があったんです。そんなときメンバーの子どもを見て、『なんて欲望に忠実なんだ』と改めて思うこともあり、幼いころの自分も含め、そういう子どもならではの表情を参考にしました」。その後も神木と意見交換を繰り返し、ワークショップのレッスンの相手となることを提案されたこともあったとか。「それだけ親身になってくれましたし、予告編を観て『いい感じに気持ち悪いよ!』と連絡をくれました」と嬉しそうに語る。

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自分の演技を観るのはまだ照れくさい

両角の衣装は、Fukaseの私服からイメージを得た

 その一方で、「ワークショップを受けても、最後の最後まで分からなかったのが殺人衝動」だったとFukase。そこに近づくために行ったのが、油絵を描くこと。「最大のエゴである殺人、それを言葉にできないから、素手で絵具に触れて、ぶちまけて表現しました。そのことで殺人衝動の片鱗を捉えることができた気がします」。その絵を気に入った監督の要望で、劇中では、自身が2メートル四方で描き直した巨大油絵が登場している。

 そうして映画初出演を経て得たのが、「純度100%の表現者」に徹した体験。「自分はクリエイターとして、曲を作るときも、ライブを作るときも、ディレクションする目で見ていたんですが、今回は監督がいらっしゃるので、自分の意見を反映させるべきではないと。なので、現場に来た自分のチームのスタッフに『もしも、僕が監督にクリエイターみたいな意見を言っていたら、全力で止めてくれ』と言ったぐらいです。そんな心配もしていましたが、初めて純度100%の表現者でなることで、どこか解放された感じもありました」と振り返る。

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「試写では自分の出演シーンだけ、薄目で観ていました」と、自身の演技を観るのはまだ照れくさいようだが、答えがない俳優の難しさにも気づくことも。次回作への意欲を聞くと、「初めにオファーをいただいたときとあまり気持ちは変わっていなくて奢りはなく、自分にできることがあるのであれば、やらせていただきたい気持ちはあります」と謙虚な姿勢。「現場の雰囲気やスタッフさんの団結力など、ミュージシャンが行く現場とは全然違うものを感じて楽しかったし、嬉しかったし、幸せだったんです。今やりたい役というものはないですが、あまり悪い役ばかりやると、本当にそんな人だと思われそうで……(笑)。試写を観た菅田将暉くんが、『Fukaseさんが演じる、うだつが上がらないサラリーマンとか観たくなりました』と言ってくれて、それはそれで面白そうだなと(笑)」

コロナ禍で感じたこと

 そして、劇中で両角が山城の描く漫画に陶酔したように、彼自身が過去に心酔したものや人物について聞いてみると、ミュージシャンFukaseのルーツともいえるエピソードが飛び出した。「僕自身、ラッパーになりたいと思うぐらいジャパニーズ・ヒップホップに陶酔していたんです。青春時代に抱えていたモヤモヤしていたものを、激しい言葉で切り裂き、時には優しく寄り添ってくれた。特にOZROSAURUS(オジロザウルス)というグループが好きでした。彼らが好きなあまり、よこはまコスモワールドの観覧車でアルバイトもするぐらい、彼らの出身である横浜という場所に陶酔していきました。『YOKOHAMA blues』だけじゃなく、僕の歌詞の中に横浜というワードがいっぱい出てくるのも、そんな理由からなんですよ」

 最後に、一人のアーティストとして、クリエイターとして、このコロナ禍で感じたことも。「『不要不急』という言葉はスゴく難しい言葉だなと思いました。コロナ禍によって枯渇した心を満たす、心を豊かにすることって、果たして『不要不急』なのかなって。これまで僕は、映画や音楽といったエンタテイメントに救われてきましたし、それによって頑張ることができたと思うんです。だからこそ、芸術作品は急を要するし、急を要して必要なものにもなるんじゃないか、と思っています」と切実な想いを語った。(取材・文:くれい響)

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