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中村倫也、人と比べて悔しかった「オリジナルを目指す」いま

中村倫也
中村倫也

 直木賞作家・辻村深月がアニメ制作の舞台裏をつづった小説を映画化した『ハケンアニメ!』で、天才監督を演じた中村倫也。アニメ作品のハケン(覇権)争いをめぐる物語が展開するが、役者という表現の世界において、中村は「勝ち負けは意識しない」と告白。「若いころは、他人と比べて『悔しい』と思うこともあった」と明かしつつ、「クリエイティブな分野には、答えが無数にある。自分は自分でしかないし、オリジナルであることが大事だと思っています」と力を込める。飄々とした佇まいの裏にある葛藤や天才に関する持論など、中村が胸の内を語った。

魅力増し続ける中村倫也【インタビューカット】

飄々としていながらも「実は緊張だってするし、あがいている」

 公務員からアニメ業界に飛び込んだ斎藤瞳(吉岡里帆)と彼女が憧れる天才監督の王子千晴が、“ハケンアニメ”を目指して奮闘する本作。王子は、表面上はエキセントリックに振る舞いながらも、逃げたくなるほどのプレッシャーと戦いながら作品に向き合っている役どころ。『水曜日が消えた』でも中村とタッグを組んでいた吉野耕平監督は「中村の素に近いキャラクター」として、彼に王子役をオファーしたという。

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 中村は「ものづくりに対して抱いている感覚は、僕と王子には近いものがあるなと思います。僕もいつも必死こいてやっていますし、大事なシーンの撮影の日には緊張から『撮影が休みにならないかな』と思ったりすることもありますよ」とにっこり。

 「僕自身、緊張していても周りからはそう見えないと言われることも多いですが、それは水鳥のようなもので。スイスイと泳いでいるように見えても、実は水の下ですごくあがいている。でも役者なんていうのは、それが見えなくていい仕事だと思っています。だって、もし舞台で本人の努力が見えるお芝居をしている役者がいるとしたら、それは役ではなくなってしまいますよね」と役者業と照らし合わせながら王子に共感を寄せ、「吉野さんが、僕の素に近いと言ってくださったそうですが、王子ってものすごくいい役なので。こんなにいい役をやれるの? という驚きとうれしさがありました」と楽しそうに語る。

「自分は自分でしかない」胸を張れるものをやれるかどうかが大事

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底知れない魅力を持つ中村倫也

 劇中では、瞳の監督する「サウンドバック 奏の石」と、王子の監督する「運命戦線リデルライト」が同クールに放送され、しのぎを削っていく。視聴者の「こっちの方が面白い」「こっちが今期のハケンアニメだ」という会話も日々ヒートアップし、視聴率争いなどシビアな戦いに身を投じていく瞳と王子だが、中村は役者という表現の世界において“勝ち負け”を意識することはあるだろうか。

 すると「ないですね」と即答した中村。「若いころは、他人と比べて『悔しい』と思うこともあった」というが、「クリエイティブな分野には、答えが無数にある。やり方も道筋も、観てくれた人の感想もいっぱいある。それを比べることは不毛だなと思うんです」と続ける。

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 「ドラマの視聴率も映画の興行収入もいいに越したことはないし、賞だってもらえるならば、もらえるに越したことはないし、それによって人生が変わる人も、生活が潤う人もいると思います。数字として比較せざるを得ないことはあるけれど、『誰が何と言おうと、僕はこれがいいと思っている』と感じられたら勝ちだし、シンプルに『胸を張れるものをやれるかどうか』だけなのかなと。だって自分は自分でしかないし、他人は他人でしかないから。誰かのようにやろう、あの作品のようなシーンを作ろうとするよりも、オリジナルであることが大事なんだと思っています」と言葉に熱が帯びる。

 さらに「ハケンを獲ることよりも、僕は観てくれた誰かの毒か薬になるような作品をつくることができたらいいなと思っていて。その場しのぎの痛み止めだったら意味がない。劇薬になればなるほど、何十年経っても価値の残るような作品になるはず。そういった作品をやらなければいけないというポリシーはあります」と語る。

「才能だけでもダメ、不真面目でもダメ」

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“天才監督”役に挑んだ中村倫也

 中村のものづくりにかける情熱も、王子とピタリと重なるもの。中村は「“作品は届けたら、観てくれた人それぞれのもの。自分の手から離れた段階で、もう僕のものではない”という考え方も、僕と似ているなと思って。なんだよコイツ、僕と同じようなことを言いやがってと思った」と笑う。

 しかし“天才”という称号に対しては、「僕は天才じゃない」とキッパリ。「僕の中での天才の定義は、若くして周りが放っておかない人。たまにいるんですよね」と口火を切り、「20代真ん中過ぎたあたりかな? 年下でもそう感じる人が増えて。『自分の物差しでは測れないな、この能力』と思いましたし、やっぱり周りが放っておかない。でもこの仕事をやってきて思うのは、どんな才能がある人でも、向上心を持続できないと仕事がなくなるということ。才能だけではダメだし、やっぱり不真面目でもダメだなと思います。いま自分がこうやって映画のメインキャストをやらせてもらえたり、舞台の主役をやらせてもらえたりするのは、好きだという気持ちと向上心を持っていたからかもしれません」と好きを貫くことの大切さをかみ締める。

 最後に中村に「何の天才?」と質問を投げかけると、「なんだかわからないけれど、許される天才かな。毒を吐いても、なぜか笑ってもらえたり!」と回答。「それは僕の持ち前のベビーフェイスのおかげです!」と語りインタビュー部屋にいた人々を笑わせるなど、“愛され力”を見事に発揮していた。(取材・文・撮影:成田おり枝)

映画『ハケンアニメ!』は公開中

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