「ゴジュウジャー」は毎週「こう来たか!」の連続 松浦大悟&芝高啓介、両プロデューサーが期待する井上亜樹子ワールド

1975年の「秘密戦隊ゴレンジャー」からはじまり、今年50周年を迎えるスーパー戦隊シリーズ。記念すべき節目の年に誕生したのが「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」(テレビ朝日系・毎週日曜午前9時30分~)だ。同作のプロデューサーを務める松浦大悟(東映)と芝高啓介(テレビ朝日)がリモートインタビューに応じ、「ゴジュウジャー」の誕生秘話から、見どころの一つである巨大ロボ戦、第4話以降の注目ポイントについて語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
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「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」は、スーパー戦隊の中で最高最強の“ナンバーワン”を目指す、動物や恐竜といった獣(けもの)をモチーフにした5人の新ヒーローが活躍する物語。脚本は「仮面ライダー555(ファイズ)」「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の脚本家である井上敏樹の娘・井上亜樹子が執筆し、演出を田崎竜太(崎はたつさきが正式表記)らが担当する。
「ワンオブゼム」ではないことを重視

Q:シリーズ50周年記念作として、全スーパー戦隊における最高最強の“ナンバーワン戦隊”を描こうと思った経緯を教えてください。
松浦大悟プロデューサー(以降、松浦):一人ひとりが強くて個性があるスーパー戦隊を、5人を5分割するのではなく、強力な1人が5人分いる番組にしたいという思いがありました。そこから、個別である「1」ということを強調していき、「ナンバーワンを目指したい」という意気込みにもつながりました。また、50周年だからといって「50年間の復習をしたい」というわけではありません。ここから未来の50年間が始めたい、その第1作目=No.1という意味合いを込めて、名前を提案させていただきました。
芝高啓介プロデューサー(以降、芝高):歴代戦隊をモチーフにしたスーパー戦隊シリーズは過去にも存在した中で、松浦さんから切り口を変えて50周年を盛り上げていくという説明をいただいた時、さまざまなことが要求される50周年作品として非常に面白くて、楽しめる企画なのではないかと期待が高まりました。
Q:「ナンバーワン戦隊」をカタカナ表記にした理由を教えてください。
松浦:目立つからです(笑)。
芝高:「ワンオブゼム」=これまでのスーパー戦隊の中の1つではないことを、松浦さんも重視していました。「ゴレンジャー」からスタートしたスーパー戦隊が、50周年で「ゴジュウジャー」というのは、メッセージとして非常にわかりやすいと思いました。「~戦隊」を何にするべきか、いくつか候補があった中で、カタカナの「ナンバーワン」が目を惹きました。個人的には漢字・カタカナ・数字が全て交じった戦隊名でも面白いかなとも思ったり……。
松浦:ありましたね。「ゴジュウジャー」の“ゴジュウ”を数字で表記して“50ジャー”としてみたらどうかとか(笑)。他にも「パワーレンジャー」方式で、「スーパー戦隊:~」という冠を統一させる案もありました。結果的に、芝高さんが仰って下さった通り、50作品あるシリーズの中で埋もれないことを考えた方がいいのではないかという結論に至りました。
巨神「テガソード」の設定

Q:「ゴジュウジャー」の物語における重要な存在として、変身アイテムと巨大ロボットが一緒になった巨神「テガソード」が登場します。第1話では、ゴジュウウルフの初変身よりも先に、テガソードとキングキャンデラーの迫力あるロボ戦が描かれました。
松浦:「スーパー戦隊といえばロボットでしょ」ということをもう1回やりたかった思いがありました。今年は、「テガソード」としてロボットと変身アイテムを一緒にしているので、「1にも100にもテガソード」といえるほど、ロボを押しても不自然ではない番組づくりを目指しています。だからといって、例年のフォーマット崩しを目的としているわけではないので、「ゴジュウジャー」でも等身大のヒーロー戦から巨大ロボ戦という例年の順番で進行するエピソードも普通にあります。ただ、そのフォーマットが全てではないことを、(第1話で)新鮮に感じていただけたならよかったかなと思います。
芝高:テガソードはロボットとして力をゴジュウジャーに貸していながら、ゲームマスターのようにゴジュウジャーの戦いそのものを仕組んでいる側とも言えます。そういう意味では、これまでのスーパー戦隊のロボットとはまた違う存在なのかなと思います。
松浦:井上亜樹子さんがロボットを自分の中に落とし込んだ時に、神様という設定にするところがすごいですよね。テガソードに関するエピソードもこれから少しずつ展開していきますが、“ロボットもの”というジャンルに浸かり切っているいる我々には到底及びもつかないことを、亜樹子さんは考え付くところを、本当に尊敬します。ある種「こちらが甘かった……まさかここまでやるとは」と驚かされるような、ロボットがやらないようなアイデアがどんどん出てきて(笑)。30年以上ロボットを撮り続けているあの佛田洋監督(特技監督)ですらやったことないことだらけで、みんなそれを楽しんで撮影しています。ロボット初心者の亜樹子さんだからこそ、「こういうロボットの映し方ってあるんだ」ということを教えて貰えるんだなと。有難い限りです。
最大の武器は「セリフ」

Q:井上亜樹子さんが描く「ゴジュウジャー」の世界観はいかがですか?
芝高:視聴者の度肝を抜き続けていると思いますが、私たちもプロットを受け取った段階から、毎週「こう来たか!」と驚いております。本当にキャラクターが生きていると思えるんです。スーパー戦隊として非常にバラエティーに富んだ話を描きつつ、さらに振り切っていかれる方なので、ぜひ今後の展開を楽しみにしていただきたいです。
松浦:芝高Pのいう通り、そもそも僕たちが一番口をポカンと開けています(笑)。「なぜ、ここでピアノを持ってくるんですか?」とか一応聞いてみるのですが、「そっちの方が面白いかなと思って……」と言われたら、頷くしかない(笑)。打ち合わせではいろいろ話し合いをして、こちら側の意見も汲み取っていただいているのですが、亜樹子さんの中にとても強固な「亜樹子ワールド」が存在しているので、それがどんどん開示されていく過程が気持ちいいです。
個人的には、亜樹子さんの最大の武器は「セリフ」だと思います。脚本作りにおいてストーリーだけを考える段階(プロット)があるのですが、それよりもセリフが入った脚本を読んだ時の方が圧倒的に面白いんです。私が凄まじいなと思ったのは、百夜陸王/ゴジュウレオンが顔見せする際の「僕と会ったこと、周りに自慢していいよ」(第2話「ブン捕れお宝!俺の獲物だ」より)です。あのセリフは、逆立ちしても出てこない(笑)
芝高:第3話「日本のドン!私が総理!」も亜樹子ワールド全開でしたよね(笑)
松浦:熱海常夏はすごかったです。キャラクター造形はみんなで必死に考えて、最終的に、たとえば松岡修造さんをモデルにしてみたらどうか? という話になりました。そしたら、熱血な漢というイメージが、亜樹子さんの中でハマったらしく……「人生はずっと上り坂! 苦しいよな辛いよな。だけど今日は昨日より高いとこにいるんだ! だから自分を信じて!」といった面白いセリフのつるべ打ちになりました。
芝高:こちらからも「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のエッセンスとしてこういうものを取り入れてほしいと亜樹子さんにお伝えして、亜樹子さんなりに「ドンブラザーズ」を再構築していただいたところ、とんでもないものができあがりました。
ゴジュウイーグル、衝撃のおじいちゃん設定

Q:最後に、第4話「パーリィタイム☆夢見るじじい」以降の物語で注目してほしいポイントはどこでしょうか?
松浦:みなさん、第4話の次回予告で目をひん剥いているのではないでしょうか(笑)。ゴジュウイーグルは、実はおじいちゃんでした。制作発表イベントから隠し続けてきた要素なので、松本仁くん(猛原禽次郎/ゴジュウイーグル役)はインタビューなど大変だったと思います。松本くんには、「87歳のおじいちゃんが高校生に若返った」という非常に難しい役づくりをしてもらっています。
5人の設定を考える時に、まず最初、僕から亜樹子さんに「とにかく癖の強い人たちにしましょう」とお話しをしました。ゴジュウイーグルは当初、別の設定だったのですが、もう一捻りできるだろうと思ったんです。その時、亜樹子さんに僕の大好きな藤子・F・不二雄先生の漫画「パーマン」の話をしました。パーマン2号はチンパンジーという設定なんですよ。それってすごくないですか? 「ヒーローって、チンパンジーでもいいんだ!」と。なので亜樹子さんに「あの藤子・F・不二雄先生によると、ヒーローはチンパンジーでもいいんです。だからもっと自由に考えてみませんか?」と伝えたところ、おじいちゃんになって返ってきて驚きました(笑)。
そしてもう一つ今後のお楽しみとしていただきたいのは、制作発表イベントにいた謎の男・クオン(カルマ)です。「一体、いつ出てくるんだ?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そう遠くないうちに登場します。彼が登場するあたりから、キャラクター配置の面白さが加速するし、ストーリーにもブレイクスルーが起こったような気がするんです。ユニバース戦士も含めて、新しいキャラクターがどんどん登場しますので、気づいたら「1年間終わってる!」という感じになるのではないかと思います。
芝高:松浦さんが大推ししているロボットも見どころです。全話通してロボットが話の軸になっていきます。毎週のように大活躍するので、ぜひご期待ください。