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スーパー戦隊50周年 東映・白倉伸一郎が見据える未来 「ゴジュウジャー」に期待する“歴代戦隊の再定義”

東映・白倉伸一郎が見据えるスーパー戦隊の未来とは?
東映・白倉伸一郎が見据えるスーパー戦隊の未来とは?

 スーパー戦隊シリーズ最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」(テレビ朝日系・毎週日曜午前9時30分~)は、シリーズの元祖「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975)から50年目を迎える節目の作品として、各方面から注目を浴びている。シリーズ第15作「鳥人戦隊ジェットマン」(1991)以来、数々の東映特撮作品に携わり、多くの話題作、人気作、異色作を生み出してきた東映の白倉伸一郎(キャラクター戦略部担当)がインタビューに応じ、スーパー戦隊50年のふりかえりと、さらなる未来に向けての展望を語った。

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スーパー戦隊との出会い

白倉とスーパー戦隊を結ぶきっかけとなった「バトルフィーバーJ」 - (c)東映 (c)Marvel Characters,Inc. All Rights Reserved

 白倉は「鳥人戦隊ジェットマン」第30話「三魔神起つ」より「プロデューサー補」として東映特撮作品に初参加した。奇しくも、白倉が東映のプロデューサーを志望するきっかけとなったのが、同じ「スーパー戦隊シリーズ」だった。そもそも、白倉と「スーパー戦隊」の出会いはどんなものだったのだろうか。

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 「あれは高校生のときでした。とあるアニメ作品の録画ビデオを見せてもらう機会がありまして、たまたまそのテープに録画されていた『バトルフィーバーJ』(1979)を先に観てしまい、すごくビックリしたんです。もう、何コレ!? こんなテレビ番組がこの世にあるのか! ってくらい。これがきっかけとなり、ちょうど再放送されていた『電子戦隊デンジマン』(1980)を観たら、これがまた想像を絶するとんでもない内容! と衝撃を受けました」

 若き日の白倉が「バトルフィーバーJ」および「電子戦隊デンジマン」を観て、驚いた一番のポイントはどこだったのだろう。

 「等身大ヒーローが5人そろって戦っている。そして怪人がやられるとなぜか巨大化して、なぜか巨大母艦がやってくる。その中から巨大ロボットが……もう、理屈がわからない(笑)。そのとき思ったのは、言い方は悪いですが、頭のネジが何本か抜けていないとこういう作品は作れないなってこと。それ以来、こんな番組を作る『東映』とはどんなところだろうと興味を持ちはじめ、東映製作の刑事ドラマや時代劇、映画などを観まくるようになるんです。それまでは普通の映画ファンで、どちらかといえばクラシックな映画、MGMのミュージカル映画などが好きでしたが、東映の方向性はそれらとは真逆。ウェルメイドじゃない『とんでもないメイド』ですからね(笑)。そのまま東映作品を追いかけていたら、あれやこれやがあっていつの間にか自分が東映に入っていた、という感覚でした」

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白倉がプロデューサー補を務めた「鳥人戦隊ジェットマン」 - (c)東映

 石ノ森章太郎・原作の2作「秘密戦隊ゴレンジャー」と「ジャッカー電撃隊」(1977)はチームで戦う仮面のヒーローと、彼らが乗り込む巨大メカの活躍が大きな見せ場だったが、八手三郎・原作で仕切り直した「バトルフィーバーJ」ではそこに「巨大ロボット」という新たな要素が加えられた。白倉が面食らった「等身大ヒーローに巨大ロボまで出てくる」といった盛りすぎともいえる作品の基本スタイルは、現在の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」までずっと、形を変えながらも踏襲されている。かくして東映に入社した白倉は、「鳥人戦隊ジェットマン」で鈴木武幸プロデューサーのもと、プロデューサー補として初のテレビドラマを担当。作品づくりの現場に触れることとなった。

 「入社する前後はすでに東映マニアと化していましたから、毎年『戦隊』と名のつく作品がずっと続いているのは知っていました。『ジェットマン』の中盤からプロデューサー補になって痛感したのは、製作スタッフの関係性が外から想像していたものとは違うぞ、ということです。何も知らない学生のころは、監督や脚本家といった独立したクリエイターがまず存在し、スポンサーやテレビ局といった『高い壁』を乗り越えながら作っていくものだと想像していたのですが、実際にそんなことは全然なかった。各パートのスタッフがそれぞれの役割をこなし、そうやってできたものを組み立てて、ひとつの作品として完成する集団作業なんだってことです」

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スーパー戦隊史における「挑戦」

「ジェットマン」に続いて制作された「恐竜戦隊ジュウレンジャー」 - (c)東映

 脚本に井上敏樹、監督に雨宮慶太と、どちらも若手を大抜擢した「ジェットマン」は、それまでの「スーパー戦隊」の基礎的な要素こそ踏襲していながら、今まで試みていなかった意欲的なキャラクタードラマを見せようと、工夫が凝らされた。このころの「挑戦」について、白倉は以下のように振り返った。

 「製作スタッフには、昭和からずっと作品に携わっているベテランの方々と、井上さん、雨宮監督、テレビ朝日の梶淳さんといった(若手)世代がはっきり分かれていました。いかにして上の世代からの“圧”をかいくぐって、新しい世代の感性を通し、発展させるのか、という部分に終始してしまったかな、というのが『ジェットマン』全体の感想ですね。しかし、そういった世代間の壁みたいなものは、われわれの勘違いだったことに気づくんです」

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 「ジェットマン」の次に制作された「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(1992)は、それまで未来的技術で製造されたメカニックという側面が強かった「巨大ロボット」を「神」と位置づけることにより、作品世界の自由度を大幅に広げる役割を担った。一億年前の古代人類が現代でヒーローになるという、ファンタジー色を極めた作風もそれまでにない意欲的なもので、以後の「スーパー戦隊」にも多大なる影響を与えた、ターニングポイント的な作品だといえる。

 「若い奴にやらせたら『ジェットマン』みたいなものができた。ああいうものを作らせてはいかん、ということで『ジュウレンジャー』ではベテラン勢が戻ってくることになったんです。しかし、メイン脚本を務めるベテランの杉村升さんが、われわれ若手の味方についてくれた。若手とか上の世代とかは関係なく、今までにない新しい作品を作ろうぜ、という感じでしたね。そもそも、同じ世代だけで固まっているのなら、学生時代と変わらない。年齢とか世代とか関係なく、自分の想像もつかないバケモノのような才能を持った人は存在していて、そんな人たちと一緒なって作るのが、学生とプロとの違いだと思います。『ジュウレンジャー』をやったことによって、自分の考えがガラリと変化しました。『ジェットマン』と『ジュウレンジャー』のいいところを組み合わせたのが、次の『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)だと思います。ここで試みたのは、全50話あるエピソードの中で、脚本と監督がペアを組み、亮、大五、将児、知、リンそれぞれの主役回を作っていったこと。どういう組み合わせがどんな効果を生み出すか……って実験をやったんです。まあ、番組を使って実験をするなよと言われると弱りますが(笑)、そういった挑戦がいろいろとできる現場だったんです」

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歴代スーパー戦隊の“再定義”

白倉がチーフプロデューサーを務めた「機界戦隊ゼンカイジャー」 - (c)2021 テレビ朝日・東映AG・東映

 スーパー戦隊は元祖というべき「ゴレンジャー」から50年。そして巨大ロボットという最強の味方を加えて再スタートした「バトルフィーバーJ」以降は46年間「1年に1作」というペースで作品が作られ続けている。複数の変身ヒーローがチームワークを武器に、邪悪な軍団から人々を守って戦うという骨子の部分は忠実に守られながら、ヒーローの誕生背景や悪の出現場所、全体を貫くストーリー構成といった各要素について毎年さまざまな工夫が凝らされている。あまりスーパー戦隊シリーズを熱心に見ていない人にはどのヒーローの外見にも差異がないように思えるかもしれないが、ストーリーの内容やテーマ、各キャラの個性について各作品でしっかりと変化がつけられているのが大きな魅力といえる。しかし、シリーズ45作目のアニバーサリー作品「機界戦隊ゼンカイジャー」(2021)を手がけることとなった白倉には「スーパー戦隊がこれからも続いていくにあたっては、もっと思い切った構造改革をする必要がある」という強い考えがあったようだ。

 「『仮面ライダー』が革新路線なのに対して、『スーパー戦隊』は安定路線だと言われていますが、そんな流れに甘んじていると、安定どころか消滅するぞ、みたいな危機感は常に感じています。まだやれることがあるんじゃないか、もっとやれないか、今の作品を作っているプロデューサーには、まだまだ考えることがたくさんあると思います。等身大ヒーローという側面では、仮面ライダーとやっていることは変わらない。ではスーパー戦隊の独自要素は何かと考えると、それは『巨大ロボット』ではないかと。等身大ヒーローと巨大ロボットのハイブリッドこそスーパー戦隊の独自性なのですから、映像技術の面も含めて、いかに魅力的に見せることができるか、を考えてもらいたいんです」

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 白倉がチーフプロデューサーを務めた「機界戦隊ゼンカイジャー」は、1人の人間(五色田介人)と4人のキカイノイド(ジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーン)がチームを組んだ、過去のシリーズに例のない変則的なキャラシフトを取りながら、スーパー戦隊の「魂」というべき「友情・団結」のヒーローという部分は受け継がれており、いまの時代を生きる子どもたちから熱烈に愛された。また、従来のスーパー戦隊の常識を根底からかきまわした異色作「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(2022)でも、この独特な世界観でなければ成立しえない感動的なストーリーがラストを飾ったほか、毎回のアクの強いエピソード群が癖になり「ドンブラ中毒」と呼ばれる現象を起こすほどの人気を獲得した。昔ながらのオーソドックスな「スーパー戦隊」を作るのではなく、戦隊ならではの「魂」部分を大事にしつつ、常に新しい試み、ここまでするかといった大胆な「構造改革」を行っていくのが、白倉の考える「未来を目指すスーパー戦隊像」といえるのかもしれない。

最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」 - (c)2021 テレビ朝日・東映AG・東映

 最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」のチーフプロデューサーは、かつて「機界戦隊ゼンカイジャー」「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のプロデューサー補として白倉と組んだ松浦大悟。白倉はスーパー戦隊50周年記念作品として「ゴジュウジャー」のどんな部分に期待を寄せているのか。

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 「アニバーサリー作品ということで歴代戦隊レッドを出すにあたり、このヒーローは戦士としてどういう特徴があるのか、ひとりひとりの個性をはっきり打ち出してほしいと思います。過去作品ではこんなことをやって、こんなセリフを言って……みたいなオールドファン目線ではなく、いま『ゴジュウジャー』を観ている子どもたちに向けて、クワガタオージャーならこんな戦い方をする戦士なんだ、どういう敵に強くて、どんなシチュエーションに弱いか、もう一回とことん問い詰めないといけない。私が『ゴジュウジャー』に期待しているのは、歴代スーパー戦隊の『再定義』です。過去の作品内容にこだわらず、何なら設定の上書きをしてもいいから、各ヒーローの個性・特徴を出す。50年の間に出てきた歴代レッド戦士を最新キャラのように描いてくれないと、出す意味がないんです」

 50年、49作品を迎えてもなお、未来に向かって進歩・発展し続けていく「スーパー戦隊シリーズ」。歴代作品からのバトンを受け継ぎながら、歴史や伝統といったものをぶっとばす勢いで駆け出していく最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」の躍進に期待していきたい。(取材・文:秋田英夫)

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「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」

最高最強のナンバーワンを目指し、子どもたちに圧倒的な人気を誇る動物や恐竜=獣(けもの・ジュウ)をモチーフにした5人のヒーローが活躍する物語。脚本は「仮面ライダーガッチャード」の井上亜樹子、演出は「仮面ライダーガッチャード」「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」などの田崎竜太(崎はたつさきが正式表記)が担当する。

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」テレビ朝日系にて毎週日曜午前9時30分~放送中

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