「ガンニバル」完結編、「予想をいい意味で覆す」映像づくり 片山慎三監督が求めた世界基準のアクション

ディズニープラス スターで世界独占配信されているドラマ「ガンニバル」シーズン2を手がけた片山慎三監督がインタビューに応じ、シリーズ完結編となる本作で目指した世界基準のアクション、シーズン1と差別化した物語の構成について語った。
【動画】「ガンニバル」柳楽優弥&吉岡里帆、“あの人”からの質問に回答!
累計発行部数400万部を超える二宮正明のサスペンスコミック(日本文芸社刊)を、柳楽優弥を主演に迎えて実写化した本作。「この村では人が喰われるらしい」という恐ろしい噂が流れる供花村(くげむら)を舞台に、駐在として赴任してきた主人公・阿川大悟(柳楽)が村を絶対的な権力で支配する一族・後藤家のある秘密を紐解いていく。
2023年2月に配信されたシーズン1最終話は、大悟の前に正体不明の“あの人”が迫る衝撃のクリフハンガー(続きを期待させるような手法)で幕を閉じた。続編を求めるファンの声は、配信直後から片山監督の耳にも入っていた。
「居酒屋でご飯を食べていたら、全く知らない人が『ガンニバル』シーズン1の終わり方について話していたんです。偶然そこにいた一般の方の話の話題として『ガンニバル』が出てくるのは、純粋に嬉しかったです。その人たちのためにも、シーズン2はやらなきゃいけない、しっかり完結させなきゃと思いました」
謎解き要素が多かったシーズン1に対して、シーズン2は第1話から激しいアクションシーンが連続し、物語はいよいよ警察と後藤家の全面戦争へと突入する。シーズン2の課題として「アクション」を挙げた片山監督は、「世界中の人々が観て、すごいと思われるようなアクションを届けたい」と前作以上に派手かつ説得力のあるアクションシーンを構築していった。
一つは、前半のハイライトである第3話の銃撃戦。覚醒した大悟が供花村の人間を次々と銃撃する一連のガンアクションは、ハリウッドのアクション大作を彷彿させるカメラワークとテンポで描かれた。「家の中を壊したりするので、なかなか難しかったです。秩父の峠にあるお店を貸し切って、実際に物を入れて、ガラスも割れる状態にセッティングさせていただき、一部CGを交えながらうまく撮影しました」
ハードなアクションにも果敢に挑戦した柳楽について、片山監督は「アクションシーンの振り付けを覚えるスピードが早く、瞬発力がすごいです」と太鼓判を押す。「0から100のテンションで急に怒るお芝居も、切り替えがしっかりできる方なので、まさに大悟に相応しいですし、撮る側としてはすごく助かりました」
また第1話では、大悟の妻・有希(吉岡里帆)と娘・ましろ(志水心音)を乗せた車と大型トラックが衝突し、車体が横転する衝撃シーンも登場した。公道で車をひっくり返す大規模なスタントを撮影するのは、国内ドラマであってもハードルが高い。「日本のドラマの規模感だと予算が足りず、スケールが小さくなってしまったり、ごまかして描かれたりすることもあります。1台の車が転倒するシーンでも、安全を確保するために、カメラと車の距離が離れていることが多いのですが、そうではなく、なるべくカメラを車の近くにおいて撮影するにはどうしたらいいか、すごく考えました」
「日本だと、道路使用許可が下りる場所が少ないんです。撮影でよく使わせていただいている名古屋の場所は寛容的で、封鎖できる道路の区画があります。いろいろと条件はありましたが、警察の方に立ち会っていただき、実際にカーアクションが撮れました」
片山監督は、ドラマの構成にも変化を求めた。「皆さんは次の展開を予想しながら観ると思いますが、それをいい意味でどう裏切るかということをすごく考えました。誰かが打たれるシーンは突然やってきますし、次どうなるんだろうということを考える間もなく展開して、理解が後からついてくるぐらいの感じでいいんじゃないかと思いました。シーン間の時系列をポンッと飛ばしても、今の観客は受け入れてくれるはずです。説明を過剰にして、物語のテンポが崩れてしまうよりは、飛ばせるところを飛ばした方が見ている側も心地いいと、意識して制作しました」
また、大悟を中心に物語が動いたシーズン1と比較して、シーズン2は後藤家の当主・後藤恵介(笠松将)や“あの人”など、複数の視点からストーリーがつづられる。「ある種、群像劇的な意味合いもあります。供花村の風習の愚かさを複数の視点で描くことで、物語の全体像がより見えてくるのではないかと思います」
国内を代表する俳優・スタッフが再集結した「ガンニバル」シーズン2は、アジア太平洋地域のディズニープラスで今年最も視聴された日本発作品となり、“Jドラマ”の新たな可能性を証明した。「日本において、ここまでお金をかけてドラマを作ることは、ここ数年で始まったこと。すごく可能性を感じました」と片山監督も手応えを感じているようだ。
また、ヴィレッジ・サイコスリラーという未知のジャンルに挑んだことで「自分の新たな一面が発見できた」とも振り返った。「自分の脚本で自分が監督するスタイルが多かったので、脚本家をはじめ、いろいろな人の意見が入った作品を作ることはものすごく重要なことでした。一人の意見で凝り固まった世界観より、いろいろな人がつながったことで、たくさんの方に観ていただける作品になりました」
シーズン2も後半戦に突入し、供花村の謎が次々と明らかになる。片山監督は「シーズン1からギアが1段階、2段階も上がった物語です。それぞれのキャラクターに濃い物語があります。人間ドラマやアクションもより一層レベルアップしていますので、ぜひ楽しんでご覧ください」とアピールしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
「ガンニバル」シーズン2はディズニープラス スターで独占配信中


