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大泉洋&東村アキコの人生を変えた出会いとは?『かくかくしかじか』対談

原作者・東村アキコと大泉洋
原作者・東村アキコと大泉洋 - 写真:杉映貴子

 「海月姫」「東京タラレバ娘」など、数々の大ヒット作を生み出してきた人気漫画家・東村アキコ。彼女が自身の高校時代から漫画家になるまでの9年間の思い出の日々を描いた自伝的漫画「かくかくしかじか」が実写映画となって5月16日より公開される。漫画家を夢見る高校生・明子(永野芽郁)が美大受験のために通った絵画教室の恩師・日高先生役には、東村本人が熱望したという大泉洋。原作者、俳優として、本作でタッグを組んだ2人が、撮影の裏側や人生に大きな影響を受けた存在について語り合った。(取材・文:石塚圭子)

【動画】大泉洋&東村アキコにインタビュー

東村アキコが恩師役に大泉洋を熱望した理由

『かくかくしかじか』より大泉洋演じる日高先生 - (C)東村アキコ/集英社(C)2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

Q:完成した本作をご覧になったときの感想は?

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東村アキコ(以下、東村):今回は初めて脚本に関わらせていただいたし、美術監修、方言指導などスタッフとして撮影にも入っていたので、どうなるのかすごく不安だったんですけど。一点の悔いもない、いい作品ができたと思っています。本当に良かった。私を現場に混ぜてくださったスタッフ、キャストのみなさんのおかげです。

大泉洋(以下、大泉):現場に東村先生がずっといてくださって“このときはこうだったんですよ”って、全部教えてくれたから僕も芝居に迷いがなかった。そして、なんといっても明子役の永野芽郁ちゃんですよね。体操で言えば、ウルトラ級の技を各シーンで完璧に決めていく。その寸分の狂いもない演技、彼女の表情一つ一つに泣かされました。

東村:試写のとき、私の前の席に大泉さんがいたんです。大泉さんの反応が気になって、エンドロールが終わった後すぐ「どうやった?」って聞いたら、大泉さんが号泣していて! 振り返りながら「先生……永野芽郁はバケモンですね」って言ったんですよ(笑)。そのときにやっぱり、すごいものができたんだって実感しました。

主人公・明子(永野芽郁) - (C)東村アキコ/集英社(C)2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

Q:東村さんが、恩師・日高先生役に大泉洋さんをリクエストされた一番の理由とは?

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東村:日高先生って、すごくスパルタだったんですけど、ただ怖いだけの先生じゃダメなんですよね。面白い部分とか、ちょっとクスッとしちゃう部分があるキャラクターなので、大泉さんにしかできないと思っていて。それで、この作品の映像化のオファーをいただくたびに、「大泉さんがやってくださるんだったら、やりたいです」って、ずっと言い続けていたんです。今回やっと、大泉さんにやっていただけることになって、私としてはすごく喜ばしかったですね。

大泉:撮影期間のスケジュールがなかなか合わなかったんです。

東村:3回くらい断られたかな……。

大泉:できませんって言っているのに、何回もオファーをいただいたんです(笑)。それで、そんなに言っていただけるなら、ということで脚本を読ませていただいたら、まぁ、すばらしかった。なんともハートフルないいお話だったので、これはやらせていただきましょうと思ったわけです。また、僕は不勉強で、ここまで人気がある作品だと知らなくて。僕がやるって決まってから、こんなに反響が大きかった役もないですよ。

東村:そうですか?

大泉:キャスト発表のときは、周りからも業界関係者からも「うわー、『かくかくしかじか』やるんですか!?」「映像化できないと思っていました!」って言われましたね。

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人生初!大泉洋が笑い泣きした仰天のエピソード

Q:大泉さんが、日高先生の言動で印象に残ったシーンはありますか?

大泉:日高先生が生徒の一人、みっちゃんに“チンパン子”というあだ名をつけた日のエピソードは面白かったですねぇ。僕、飛行機の中で脚本を読むことが多いんですけど、あれはヤバかったです。脚本を泣きながら読むことはあっても、笑い泣きしたのは初めての経験でした。隣にお客さんがいるのに、ずっと死にそうなくらい笑ってしまって、ほんとキツかった!(笑)

東村:顔合わせで初めてお会いしたときも、大泉さんに「あの“チンパン子”のシーンはホントなんですか!?」って聞かれて(笑)。本当に、みっちゃんはその日にかぎって、お弁当にリンゴとバナナを丸ごと持ってきていたんですよ。まさにチンパンジーのお昼ごはんみたいな(笑)。日高先生がそれを見つけて大笑いして、当のみっちゃんも吹き出しちゃって。その後は、みんなでお腹を抱えて笑いました。

大泉:あと、印象的だったのは、日高先生が金沢美術工芸大学に進学した明子に会いに来たとき、明子のアトリエを見て“絵が下手になっとるやないか!”“筆も洗っていなくて汚い!”って、怒るシーンですね。東村先生に“実際どんな感じで怒ったんですか?”って聞いたら“もうブチ切れてましたね”って。

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東村:教授とか同級生がアトリエに入ってきて、この非常事態を見られたらどうしようって思うくらい、めちゃくちゃ怒られました。恥ずかしくて、帰りも誰にも見つからないように……みたいな。今振り返ると、日高先生のことを教授や友達に紹介すればよかった、本当に申し訳ないことをしたなって後悔してます。でも、すごく怒られちゃったもんだから、私もその日はなんかいじけちゃって……。

大泉:東村先生にそのときの話を聞かなかったら、ああいう演技にはならなかった。明子を思って言う、っていう感じなんだろうなと最初は思っていて。“そうじゃなくて、本当に腹が立っているんですよ”っていう東村先生の話に、へぇ、なるほどね、そういうふうに怒っているんだって。

東村:明子を思って言うと、演技プラン的には“おまえ、もっと道具を大事にせんか”みたいなニュアンスになる。

大泉:そうそう、やっぱり違うんですよね。明子のことを思って明子を叱るのと、絵に対してなんでこんなことになっているんだ!? って怒るのとでは、お芝居が全然変わっちゃうから。そこが新鮮だった。だから、先生は本当に純粋で、子どものような人なんだなっていう捉え方でしたね。

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東村:やっぱりそれを表現できるのは、大泉さんしかいなかったかな、今思っても。

人生を一変させた出会い

日高先生と明子 - (C)東村アキコ/集英社(C)2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

Q:大泉さんは、明子と日高先生の師弟関係をどのように感じましたか?

大泉:本当に素敵な師弟関係ですよね。僕が感じたのは、日高先生っていう人は、とにかく絵が好きなんでしょうね。

東村:うん、そうそう。生徒である私に執着しているんじゃなくて、芸事っていうか、絵に対して……。

大泉:おまえは絵が上手なんだから、絵を描け! っていう。そこにすごく一生懸命になっている。だから、東村先生のことも、もちろん好きなんだろうけど、絵が上手な東村先生のことをすごくかっていて。だけど、東村先生は絵じゃなくて、漫画がやりたいわけですよね。その心のすれ違いというか……。

東村:大泉さん、さすが! よく分かってる!

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大泉:そりゃ、そうでしょう、演じましたから(笑)。

東村:すごい! 普通はこういう話って、いわゆる生徒と師匠の絆の人情物語、みたいに思われがちなんだけど。アートとか絵とかマンガとか、そういうものが2人の間にガッとあるんですよね。それを大泉さんがちゃんと分かってくださっているというのを今、知りました。

大泉:今知りました!? 

東村:こんな深い話はあんまりしてなかったじゃないですか、現場では(笑)。

大泉:切ないんですよね。明子がマンガを描きたいんだ、って知ったときの日高先生は、演じていてもやっぱりショックでしたね。あぁ、そうなんだ……っていう。

東村:あの2人の感情がぶつかるシーンは凄かったですねぇ。撮影を観ていた私からしても、素晴らしかったです。ほんと、あの日のまま。あのシーンのときは、現場ではみんな鳥肌が立ちっぱなしでした。

Q:東村さんにとっての日高先生のように、大泉さんにとって人生を変えた存在、出会いや体験はありますか?

大泉:僕の人生って、大学で大きくパーンと変わったんです。演劇研究会に入ったのも大きかったですし。最初に入団した劇団イナダ組では、代表の稲田博さんっていう大変クセの強いダメな大人が(笑)、舞台に立つイロハのイみたいなものを教えてくれて。もうひとつは、ちょっと悔しいけど、(北海道テレビの)「水曜どうでしょう」っていう番組はやっぱり大きくて。ディレクターの藤村忠寿さんとは非常に仕事がしやすかったし、あのおじさんと一緒に新しいバラエティーを作っていけたという感じがあります。なんとなくそのあたりが、師匠っぽい存在と言えるかもしれないですね。

 マンガの連載を休み、脚本からロケハン、劇中に登場する絵画やデッサンの美術監修など、本作の制作に深く関わった東村アキコと、彼女の人生を変えた恩師を全身全霊で演じた大泉洋。「先生としゃべっていると、宮崎弁がうつっちゃう」「大泉さんの宮崎弁のイントネーションは超リアル」と言い合いながら、リラックスした楽しい雰囲気を漂わせる2人のやりとりに、かつての明子と日高先生の姿が重なって見えたような気がした。

大泉洋&東村アキコにインタビュー!映画『かくかくしかじか』 人生を変えたのは「水どう」!? » 動画の詳細
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