リブート版『新幹線大爆破』草なぎ剛・のん・映画監督も起用 多彩なキャスティングの裏側【ネタバレあり】

配信がスタートしたNetflix映画『新幹線大爆破』。高倉健さんが主演した1975年版のリブート作品として、さまざまな“違い”が明らかになったが、特に気になる変化は、主人公の立ち位置の変化だ。制作を担当した佐藤善宏プロデューサーが、主人公を犯人から車掌に変更した理由や、キャスティング秘話を語った。(ネタバレ注意。以下、映画の内容に触れています)
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主役は「テロを止めようとする人々」

高倉健さん、千葉真一さん、田中邦衛さん、宇津井健さんらトップスターたちが共演し、1975年に公開されたサスペンスパニック映画『新幹線大爆破』。走行中の新幹線に爆弾が仕掛けられ「時速80キロ以下になると自動的に爆発する」という犯人側の告知。止まって乗客を救出したいが、それができないという葛藤のなか、犯人グループと国鉄本社の運転司令官たちのやり取りは非常にスリリングだった。
そんな作品をリブートした本作。まず物語の展開として、1975年版と大きく違うのは、主人公が草なぎ剛(なぎ=弓へんに剪)演じる車掌であるということだ。1975年版は高倉さん演じる爆弾犯の沖田哲男目線の物語も主軸となった。
「最初の段階のプロットから車掌が主人公という設定でした。やはりオリジナル版とは違う色味にしたかったという思いはあります。あとはあくまでもフィクションとして、テロを必死で食い止めようとしている人たちを主人公にする方が作品としてのドラマチック性、エンタメ性も強いのかなと樋口監督とはずっと話をしていました」。
車掌を主人公に据えることで、当然犯人の設定も変更を余儀なくされる。もともと高倉さんが演じた沖田ら犯人グループが掲げるイデオロギー的なものは、現代の情勢とは異なる部分がある。そのなかで、オリジナル版とのつながりを想起されるようなストーリーが展開する。
「犯人設定をしていくなかで、どうやってリアリティを持たせるかというのは樋口監督や脚本の中川さん、大庭さんとも盛んに議論しました。ある種一番議論が活発化したのはそこだと思います。犯人に共感はできなくても納得してもらえるよう、爆弾を作る過程を含めて、説得力を持たせるためには……という意味で外部に協力者がいるという設定、さらにはその人が爆弾に関連がある人……という流れのなか、今回のようなストーリーラインになったんです。もちろん1975年版へのリスペクトということもあります」。
のんが新幹線運転士に!

リブート作品という位置づけだが、1975年版の登場人物と同じ立ち位置のキャラクターが本作にも多数登場する。
「犯人役に関しては、比較できるような方ではないので、高倉さんを探さなきゃ……というような意識はまったくなかったです。高倉さん以外にも、1975年版は、まさに東映スター勢ぞろいみたいな映画でしたが、それを今回あまり意識しすぎると物語を見失う可能性もあったので、脚本を作った後、ふさわしい人物をキャスティングしていくことは心がけました」。
1975年版で運転士役を務めたのは千葉真一さん。本作では、のんが担った。
「JRさんに取材させていただくなかで知ったのですが、女性運転士も近年かなり増えているんですよね。時代性というよりは、そういう事実があるということで、脚本の段階から運転士は女性でした。のんさんは凛として聡明な感じが、(役柄に)合うかと思っていました。お話をさせていただいたとき、最初はかなりの驚きと、ある種の警戒心もあったようですが、JRさんの研修を一度受けていただいたとき、運転士の方々へリスペクトを抱き、面白がってくださってる印象を受けました。素敵な運転士になったと思います」。
また、数々のドキュメンタリーや『福田村事件』なども手掛けた監督、森達也も、爆弾に関わる、ある重要な役で出演している。
「あのシーンは、物語のなかでも少し色味の違う場面。視聴者に違和感を抱いてほしいシーンだったので、普通の俳優さんというよりは、お芝居に違和感があるような人、特殊なことをしている人がいいと思っていたんです。普段森監督はドキュメンタリーを撮られていて、エンタメ作品とは違う色合いを持つ方。そして映画のことも分かっている人ということで、お願いしました。ほぼ前後に文脈がないなか登場する役。難しかったと思いますが、なにか観ている方が、違和感を持ってもらえたら成功かなと思います」。
主演は草なぎ。佐藤プロデューサーとは『あなたへ』でタッグを組んでいる。
「『あなたへ』のとき、高倉さんと草なぎさんの人間としての相性の良さに驚かされました。映画界の大スターの高倉さんと、国民的スターとして活躍していた草なぎさん。当時どちらも秘めるものを強くお持ちの方なんだなと感じまして。今回の高市という役も、難題に対してグッと耐え忍んでいるような役。草なぎさんだったら間違いないと思ったんです。能動的ではなくとも裏から支え耐えるヒーロー。見事にハマったような気がします」。
“リメイク”ではなく“リブート”として完成させたNetflix映画『新幹線大爆破』。技術が進歩し、できることが増えたからこそ「どこまでやるのか」という判断が大きな課題になることもある。佐藤プロデューサーは「樋口監督と相談して見せたい部分、妥協しない部分はしっかりやろう」と強い決心で臨んだという。(取材・文・撮影:磯部正和)
Netflix映画『新幹線大爆破』は世界独占配信中