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「ゴジュウジャー」アクション監督・福沢博文の挑戦 歴代レッドに新たな個性付け、ユニバース戦士の演出秘話

「ゴジュウジャー」のアクション監督を務める福沢博文
「ゴジュウジャー」のアクション監督を務める福沢博文

 スーパー戦隊シリーズ第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975~1977)の放送から50年目という節目の年に誕生した「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」。社会やコミュニティーから外れた5人“はぐれ者”が、神秘なる存在「テガソード」に導かれ、どんな願いでも叶えられる指輪「センタイリング」の争奪戦に挑む。同作のアクション監督を務める福沢博文がインタビュー応じ、刺激的な要素を組み込んだゴジュウジャーのアクション演出について語った。

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「ゴジュウジャー」に導入した“打撃エフェクト”

 「ゴジュウジャー」第1話は、根は善良でありながら不愛想で人当たりが悪いため、アルバイトをすぐクビになってしまう青年・遠野吠(冬野心央)が、テガソードに導かれてナンバーワンを目指す戦士・ゴジュウウルフに変身し、ブライダンから人々を守るために戦うという筋書き。アクション面で目をひいたのは、ゴジュウウルフが兵士アーイーにパンチやキックを食らわせた際、まるで格闘ゲームのような静止画による「打撃エフェクト」が加えられた画面だった。

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 「インパクトがあったとしたら、嬉しいですね。スーパー戦隊シリーズを毎回やっていて、いつもたいへんなのは、第1話で“今年の戦隊はこういうアクションを見せますよ”といったキャッチーな表現を入れ込んで、観る人に強い印象を残してもらえるよう考えをめぐらせることなんです。歴代のシリーズでもっとも成功したな、インパクトあったなと思えるのは、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002~2003)の“超忍法・影の舞”です。もう、影の舞が凄すぎて、なかなかあれを越えるアイデアが出てこないって思うくらい。特別すごいアクションをやっているとかではなくて、あの画がバン、と出ただけでハリケンジャーの戦いだなってわかるじゃないですか。あれを越えるインパクトのある技を毎年考えるのですが、そうそう簡単にひらめくものではないですから(笑)」

 「今年の『ゴジュウジャー』では、どんなアクションを入れ込んでみようかと、プロデューサーの松浦(大悟)くんや田崎竜太監督(崎=たつさきが正式)と相談して、アイデアを模索していったところ、松浦くんのアイデアであのゲームみたいな打撃の表現をやってみようということになりました。僕もゲーム世代ではあるので、ああいった格闘ゲームのノリは好きですし、どういう“手”の付け方をしたらああいう風になるか、想像しやすかったですね。打撃エフェクトについては日クリ(日本映像クリエイティブ)さんの仕事になりますので、アクション監督としてはゴジュウウルフが格闘戦に入るまでの気持ちのリズムを充分な長さで作り、それらを素材として提供する流れでした」

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 ゴジュウウルフは「はぐれ狼」というキャラクター設定。野獣のような素早さとしなやかさでアーイーにとびかかっていく一方で、アーイーの攻撃を顔にうけても決してひるまず、じっと立ち止まっている姿がなんとも不敵な印象を受ける。スマートな戦い方ではない、アウトロー的なケンカ・ファイトこそがゴジュウウルフの持ち味だといえる。

 「ゴジュウウルフには、『あしたのジョー』の矢吹丈のようなイメージがあり、それは田崎監督も同じだったので、ああいうやさぐれた態度を取ってもらいました。強さを表現したいというのはもちろんありますが、正面から攻撃を受けても気持ちが絶対に折れない。殴られたとしても、それがどうした、みたいな要素がゴジュウウルフにはふさわしいのではないかと思って、ああいう動きを入れてみました」

独自性を持たせたユニバース戦士の戦い方

 本作で注目を浴びているのは、第1話&第2話でクワガタオージャー(「王様戦隊キングオージャー」)、第3話ほかでドンモモタロウ(「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」)、第7話でティラノレンジャー(「恐竜戦隊ジュウレンジャー」)と、歴代スーパー戦隊各作品のレッドが、まったく新しい設定を与えられて「ユニバース戦士」となってストーリーに深く関わってくることだ。ユニバース戦士は、テレビ放送されていた過去のスーパー戦隊でのヒーローとほぼ同じ外見をしながら、設定などは本作のためにリニューアルされ、まるで初登場キャラクターのような印象を受ける。ユニバース戦士たちの「過去作とは異なる」戦い方について、福沢アクション監督はいかなる取り組み方をしているのか。

 「ユニバース戦士の特徴は、以前の作品とは“変身者”がまったく違うという部分にあります。変身前の人物が必ず出てきて、独自の発言や行動をしますから、彼らがセンタイリングでヒーローの能力をどう扱うかっていう話なので、以前のレッド戦士とはどうしても変化をつけなくてはいけません。ドンモモタロウになる熱海常夏は、総理大臣という設定。人を動かす立場であるので、犬、猿、キジといったお供を敵に向かわせて、自分はそれを見ながら指示をするというスタイルなんです。それだけだと、ヒーローとしてどうなんだってことになるので、一応は動きますが(笑)。このように、台本が上がってきて『こんど出てくるのはこんなユニバース戦士です』というのがわかって、そこからアクション面の動きを作っていく段取りです」

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 「最初に松浦くんから言われたのは『以前の作品のキャラクター設定を、あまり引きずらないようにしてください』ということ。これがかなり悩みどころで……。これまで、僕自身もいろいろなレッドを演じてきました。『このレッドはこういうものだ』という固定観念があり、いろんなバックボーンが存在する。根強いファンの方々も、各ヒーローにバックボーンがあったからこそ、好きになったんだと思いますし、それを完全になくして、新しいキャラクターのように作り変えたら、どんな風に受け止められるのか、心配なところがあったんです。しかし、今回試みているのは、歴代の戦隊ヒーローがこれから先もずっと『現役』キャラクターとして生きていけるように、完全リニューアルを施さなければならないってこと。今年は50周年ですけど、何周年とか考えることなく、ユニバース戦士が今後のさまざまな作品に登場してもおかしくないよう、消えずに残る存在にしたいわけなんです」

 福沢がスーツアクションを務めた「侍戦隊シンケンジャー」(2009~2010)のシンケンレッドは、刀(シンケンマル)を肩にかついで無理に力まないポージングが持ち味だった。変身前の「殿様」こと志葉丈瑠のストイックなキャラクター性との相乗効果で、現在でも根強いファンが多く存在している。今後、ユニバース戦士として登場するであろうシンケンレッドもまた、あのころのシンケンレッドと別な、独自の戦い方が求められるのだろうか。

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 「ちょっと怖い気もしますね。昔からシンケンレッドを知っているファンから『裏切られた』と思われる危険性もありますから……。この作品に出てくるシンケンレッドは志葉丈瑠ではなく、新しい変身者の個性を活かして動きを組み立てるものなので、人が変われば違う動きになるのは当然なんですね。ただ、ドンモモタロウは形こそ違うものの、お供(折り紙)を使うという属性は受け継いでいたりするでしょう。もともとの戦隊レッドの個性を少し残したりする場合も、まったくないわけではありません。台本に書かれたキャラクターのアイデアがまずあって、それを観ている方たちに画として伝える際、どれだけインパクトを与えられるかが、演出を行う立場での勝負だと思っています」

 50年の間に、スーパー戦隊ではレッドだけでも膨大な数の戦士が活躍してきた。「ゴジュウジャー」ではそれらすべての戦士のアクションに変化をつけ、独自性を持たせようと考えているようだ。改めて、ものすごい構想だと思える。

 「もちろん、前もって全員分のアイデアを考えておくなんてこと、できませんからね。毎回の台本を読んで、次はこの戦士が来るのかと確認した上で、その都度アクションを作っていく形になります。やっていくうちに、もうアイデアがない、尽きてしまった……となってしまう可能性もあります。そうならないようにしますけど(笑)。先ほど話していたシンケンレッドにしても、もしもあのシンケンレッド像を壊すとしたら、演じた本人である僕が適任なんだろうなって思うんです。それだけの覚悟をもって、取り組んでいます」

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本編監督とアクション監督の分業

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」メインビジュアル - (c)テレビ朝日・東映AG・東映

 1年間の連続テレビドラマでは、4~5人、あるいはそれ以上の本編監督が2本持ちでローテーションを組むのが通例となっている。アクション監督の福沢にとって、一緒に作品を作り上げる監督が変わると、演出方法にも違いが出てくるのだろうか。

 「やり方は変わらないですが、ご一緒する監督の持ち味、個性が違うので、その人の好みに合わせたり、ドラマの展開に沿ったアクションを組み立てることがあります。各監督の個性について、僕個人では“週刊マンガ雑誌”のイメージで捉えているんです。中澤(祥次郎)監督は『少年サンデー』っぽいですし、田崎監督は『少年チャンピオン』的。渡辺(勝也)監督は熱いドラマを好みますから『少年マガジン』で、スギ(杉原輝昭監督)は、チャレンジ精神旺盛で突き進んでいく『少年ジャンプ』かな。加藤(弘之)監督はギャグで攻めるから『コロコロコミック』。そうやって考えると、自分の中で監督の方向性がつかみやすい。あくまでも僕の中での受け止め方です(笑)」

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 また、福沢はアクション監督と同時に「仮面ライダーギーツ」(2022~2023)や「仮面ライダーガッチャード」(2023~2024)などでは本編監督も務めている。アクションのみならずドラマ全体を演出するにあたり、福沢が心かけていることとは。

 「アクション監督をやっているときから、キャラクターの気持ちの流れがどっちからどっちへ飛んでいくのか、言葉のやりとりをするのと同じように動き方を考えていました。ドラマのすべてを演出するほうが、そういったキャラクター同士の気持ちの流れを作りやすいというのは、確かにあります。本編監督とアクション監督の分業でいくと、ほんとうはヒーローの変身前と変身後で、気持ちを持続させていかないといけないはずなのに、通過点であるべき『変身』を撮ってしまって、そこで盛り上がって完結してしまうことがあるんです。理想的なのは、変身前の気持ちを保って、静かに歩きながら変身し、だんだん気持ちを高ぶらせていって敵との戦闘状態に入る……みたいな、自然な流れにすること。自分が監督をするときは、キャストの芝居の部分からアクションシーンへと、スムーズに移行していくようこだわっています」

 「また、本編監督をやると、現場でふと、こういう動きをやったら面白い、自然だなと思いついたとして、それを自分の判断ですぐ採用できるという強みがあります。分業だと、いまこんなこと思いついたんですけど……と言って、そのたびに打ち合わせをしなければなりませんし、準備するものをどうするかとか、手間がかかりますからね」

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 最後に、「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」の最も注目してほしいポイントを訊いてみた。「変身前の5人の初々しい姿、それが最大の見どころです。彼らのフレッシュな芝居をみんなで楽しんで、ゴジュウジャーを存分に愛してください!」(取材・文:秋田英夫)

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」

最高最強のナンバーワンを目指し、子どもたちに圧倒的な人気を誇る動物や恐竜=獣(けもの・ジュウ)をモチーフにした5人のヒーローが活躍する物語。脚本は「仮面ライダーガッチャード」の井上亜樹子、演出は「仮面ライダーガッチャード」「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」などの田崎竜太が担当する。

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」テレビ朝日系にて毎週日曜午前9時30分~放送中

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