東映、バーチャルプロダクションスタジオを初披露 “右京”水谷豊が期待「間違いなく次期相棒」

水谷豊主演の連続ドラマ「相棒 season23」(テレビ朝日系)や、映画『【推しの子】-The Final Act-』などで使用された「東映バーチャルプロダクションスタジオ」のお披露目会が22日、大泉の東映東京撮影所で行われ、その全貌が明らかになった。
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映画業界では古くから、スクリーンに投影された映像の前で俳優が演技を行う「スクリーン・プロセス」という技法が使われてきたが、その技法を、最先端のテクノロジーによりアップデートしたのが「バーチャルプロダクション」。これまで「仮面ライダー」「スーパー戦隊」シリーズなどの特撮作品をはじめ、数多くの映画、ドラマの撮影が行われてきた東映東京撮影所だが、このたび11ステージに日本映画業界では唯一となるLEDステージ、インカメラVFXが設置されることとなった。
東映では、2022年10月1日に東京撮影所に「バーチャルプロダクション部」を発足。東京撮影所の11ステージに、横30メートル×縦5メートル(19,200×3,200ピクセル)、270度のラウンド型となるLEDウォールを設置。さらに天井にも12メートル×11メートル(3,840×2,160ピクセル)、昇降・分割可能なLEDスクリーンを導入し、現時点で日本最大のLEDスタジオとしてリニューアルした。これまでの稼働実績としては、「爆上戦隊ブンブンジャー」「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」などのスーパー戦隊シリーズをはじめ、ドラマ「相棒 season23」や、映画『【推しの子】-The Final Act-』などの東映作品を中心に、他社作品の撮影も多数行われてきたとのこと。
背景映像は「国内でも有数のスタッフを有する」と自負する東映のCGチームが担当。この日のお披露目会では、撮影のハードルが羽田空港や庭園などの風景も、東映東京撮影所に所属する俳優の演技とともに披露されたほか、セットリニューアルのために、2024年4月7日を持っておよそ50年の歴史に幕を閉じた東映太秦映画村の時代劇セット(オープンセット)も再現。時代劇の街並みや、吉原遊廓を再現した建物なども紹介された。
「バーチャルプロダクション」は2022年から実証実験を行ってきたが、撮影所の12ステージで「相棒」を撮影していた水谷も、しばしば実験の様子を覗いていたとのことで、この技術に興味津々だったという。実際に「相棒 season23」の元日スペシャルでこの技術を使用したという水谷は、「『相棒』が初めてVPスタジオで撮影をさせて貰いました。場面は杉下右京、亀山くんと陣川くんの車の走り。以前なら牽引車で引っ張って実際に道路を走って撮影していたのだと思うと、目の前のまさに新しい時代の訪れに、心の中で拍手を送る思いでした。特に相棒は長台詞が多いので、これまで俳優にとって車の走りはかなりのプレッシャーでした。その余計なプレッシャーから解放されて自由に芝居が出来ること、そしてこれは車の走りに限らず様々な場面、特に危険を伴う撮影など、俳優そして撮影チームにとっては願ってもない環境です。この先、VPスタジオで撮影するにあたって、いろいろなアイデアが生まれることも楽しみです。VPスタジオは、映像の世界に携わる者にとってこの上なく頼もしく、なくてはならない存在になることを確信しています。間違いなく次期相棒です(笑)」とコメントを寄せ。
同社バーチャルプロダクション部の樋口純一氏は「たとえば1日しか稼働できない俳優さんであっても、午前中は所内でセット撮影、午後はここに来て撮影、夕方からはアフレコを行うといったスケジュールも可能となる」と本システムの可能性を示唆。その他、労働時間に制限がある子役なども、早い時間に夕方、あるいは夜の撮影が可能となるなど、幅広いメリットを感じているという。
東京撮影所長で、バーチャルプロダクション部長の木次谷良助上席執行役員は「もちろんこのシステムにもデメリットもあると思いますが、システムの利点をうまく使うことによって撮影期間の圧縮、制作費の圧縮につながるはずだと思っています。このメリットをいかに利用していくかということで、企画の幅も広がっていくと思う」と期待を寄せた。(取材・文:壬生智裕)


