『ミッション:インポッシブル』話題のポム・クレメンティエフは何者?アクション開眼までの軌跡

人気スパイアクション映画『ミッション:インポッシブル』シリーズでは、1996年の第1作以来、数多くの俳優たちが主演のトム・クルーズと共に作品を盛り上げてきた。シリーズ第8作となる最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(全国公開中)でも同様に、魅力的な俳優たちの活躍を目に焼き付けることができるが、中でも注目は、謎多き暗殺者パリス役を演じるポム・クレメンティエフだ。前作に引き続き、物語のキーパーソンとして活躍を見せる彼女は、一体どのようなキャリアを歩み、パリス役を射止めるに至ったのだろうか。
ポム・クレメンティエフは、1986年5月3日カナダ・ケベック州にて、韓国人の母親とフランス・ロシアの血を引く父親の元に生を受けた。韓国語で「春」を意味する単語と「虎」を意味する単語の双方と発音が似通っている「ポム」という名をつけられた彼女は、幼き日よりフランス政府の領事だった父親の仕事柄、世界各地を転々とする生活を送る。3歳から5歳までの2年間は、日本・京都で過ごし、当時は日本語も堪能で、日本食、慣習、ハローキティをはじめとした日本のキャラクターたちにも愛着を持っていたという。
その後、フランスに定住した彼女は、一度、ロー・スクールへと通うもその道に魅力を感じずに断念。ウェイトレスなど、さまざまな仕事を経験した後、パリの演劇学校へと通い始める。これがポムの人生のターニングポイントとなった。
短期間のうちに優秀な成績を残したポムは、2006年に短編作品『Des mots(原題)』でデビューを飾り、翌年にはインディペンデント映画『Apres lui(原題)』でフランスを代表する大女優カトリーヌ・ドヌーヴとの共演を果たす。2008年には映画『WOLF 狼』で初めて主要キャストに抜てきされるなど、着実に女優としての階段を上っていった。

同作への出演後、ポムは本格的にハリウッドに拠点を置き、女優活動に邁進する。そして、2017年、彼女についに世界的ブレイクの時がやってくる。
ポムは、ジェームズ・ガン監督が手がけたマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編となる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)にて、カマキリのような見た目の女性エイリアン・マンティス役に抜てきされた。それまでのキャリアでは、アクションやシリアスな演技に挑戦することが多かった彼女であるが、マンティスは作風も相まって、実にコミカルな印象を残す。無邪気な性格の持ち主で、若干コミュニケーション能力に欠ける部分もあるのだが、ガーディアンズの頼れる仲間たち、とりわけドラックスとの絶妙な掛け合いには多くのファンが魅了された。

その後もポムは、マンティスとして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、『ソー:ラブ&サンダー』(2022)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)などに出演。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)には欠かせない存在となった。
そんなポムには、かねてより大きな夢があった。それは、かつて自宅の壊れかけた小さなテレビで鑑賞した『ミッション:インポッシブル』へ出演することだ。
彼女はその夢に向かって、マーシャルアーツや乗馬、刀、バイクなどのトレーニングを熱心に積み重ねた。そして、2023年、ついにその夢が実現する。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に出演することになったのだ。

ポムが扮するパリスは、極めて謎多きキャラクターだ。前作に登場した悪役ガブリエル(イーサイ・モラレス)の右腕的な存在で、刀を手にした冷酷無慈悲な暗殺者である。ハシビロコウを参考にしたという役づくりで、完璧な捕食者を演じ切ったポムは、列車の上での壮絶アクションを魅せるなど、まるで水を得た魚のように生き生きとした姿を披露。監督のクリストファー・マッカリーは、彼女の演技から大きなインスピレーションを受け、役柄のイメージを全て考え直したと言うのだから、そのハマり様はお墨付き。最終的には、イーサン・ハントと手を組むかのような展開となり、次作への続投を匂わせる形となっていた。最新作『ファイナル・レコニング』では、パリスはいかにして物語に関わってくるのか。もちろん華麗なアクションは健在で、より内面にもフォーカスされ、これまでベールに包まれていた彼女の素性も白日の下に晒される。トムに引けを取らない活躍を存分に魅せてくれているため、ファンは大いに期待して良いだろう。
役づくりに余念がなく、自らスタントをこなすその姿は、どこかトムと重なる部分がある。トムのことを“メンター”と慕う彼女であれば、近い将来、彼からアクションスターの系譜を受け継ぐことができるかもしれない。(文:zash)