河合優実『あんのこと』で主演女優賞 心と体を捧げた「誇りに思える作品」【日本映画批評家大賞】

俳優の河合優実が9日、都内で行われた「第34回日本映画批評家大賞」の授賞式典に出席した。河合は『あんのこと』(入江悠監督)で主演女優賞を受賞し、本作の撮影を振り返った。
『あんのこと』は、入江監督が、世界的パンデミックが起きた2020年のある日の新聞記事に着想を得て撮り上げた人間ドラマ。機能不全の家庭に育ちすさんだ生活を送る少女が、ある出会いをきっかけに生きる希望を見いだそうとする中、非情な現実に翻弄(ほんろう)される様を描き、「第34回日本映画批評家大賞」では監督賞と主演女優賞を受賞した。
河合は本作のヒロインを演じるにあたり、「面白い映画にしようとか、素敵な映画にしようということよりも、まずは自分がひとつひとつのカットに臨むとき、どれだけ心と体を捧げて挑むかを大切にしていた気がします」と振り返り、「それが私が演じた彼女を守ることであり、スクリーンに残すということだと思っていました」と強い信念を持って演じたと回顧する。
「真摯に映画を作ることを何より大切にしていた」とも述べた河合は「その作品をこうしてたくさんの方々に観ていただき、本当に嬉しいです。誇りに思える作品となりました」とコメント。さらに「2020年、確かに存在した時間をこうして形に残すことができたことが嬉しいです。とにかくいいものをみなさんに届けていきたい。自分が誰かを演じることで、映画を作ることで、世界にとって良い働きかけになれば嬉しいです。頑張って(俳優業を)続けていきたい」と話していた。
「日本映画批評家大賞」は1991年に水野晴郎さんが発起人となり、淀川長治さん、小森和子さんといった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された映画賞。(取材・文:名鹿祥史)
「第34回日本映画批評家大賞」受賞作は下記の通り
作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)
監督賞:入江悠監督『あんのこと』
主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
主演女優賞:河合優実『あんのこと』
助演男優賞:綾野剛『まる』 ・森優作『ミッシング』
助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
ドキュメンタリー賞:大きな家』(竹林亮監督)
アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
新人監督賞:山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
新人男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』 ・本山力『十一人の賊軍』
新人女優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
脚本賞:甲斐さやか『徒花-ADABANA-』
編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
松永文庫賞(特別賞):東映剣会
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』


