吉沢亮、30歳で15歳演じゼロから手話…主演作が日本映画批評家大賞4冠「この上ない光栄」

吉沢亮が9日、都内で行われた「第34回日本映画批評家大賞」の授賞式典に出席した。映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)で主演男優賞を受賞した吉沢は、手話を使った演技や、30歳にして15歳を演じた経験を感慨深げに振り返った。
「日本映画批評家大賞」は1991年に水野晴郎さんが発起人となり、淀川長治さん、小森和子さんといった、当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された映画賞。吉沢の出演した『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は、作品賞、主演男優賞、助演女優賞(忍足亜希子)、編集賞(田端華子)の4冠に輝いた。
五十嵐大のノンフィクション「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」が原作の本作は、聴覚障害者である両親の陽介と明子に対して複雑な思いを抱く青年・五十嵐大(吉沢)が、帰郷をきっかけに親の尊さに気付く様を描く人間ドラマ。
吉沢はトロフィーを手にすると、「憧れていた 呉美保監督の作品に出演でき、その監督との作品でこのような素敵な賞までいただけて光栄です。自分の関わったこの作品が4つの賞を受賞できたこともこの上ない光栄です。この賞に恥じないよう、これからもお芝居と真摯に向かい合っていきます」と感慨深げな表情で述べた。
劇中では手話の演技も披露した吉沢は「この作品に関わってから、本当にゼロからのスタートでした」と振り返り、「コミュニケーションなので、ただ手話を使うだけでなく、お芝居として、しっかりコミュニケーションを成立させることがとても難しかったです」と撮影を振り返り、「(母役の)忍足さんたちが、本当にあたたかく支えてくれたんです。みなさんのおかげでこの場に立てていると思います」と忍足たちに心からの感謝を伝えた。
また、撮影時は30歳であったにもかかわらず、主人公の15歳を演じたことについても「監督からは『もうちょっと声を高く』と言われて、自分の出る限界のキーでやらせてもらいました」と笑顔。作品賞の受賞時には、父親役・今井彰人もサプライズ登壇したが、「今井さんは映画の中ではとても貫禄のある父役だったんですけど、実は今井さんも僕と4歳しか歳が違わないんです。こういう場でさわやかな今井さんと会うとギャップを感じます。お世話になりました!」と明かして会場を笑いに包んだ。(取材・文:名鹿祥史)
受賞作は下記の通り
作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)
監督賞:入江悠監督『あんのこと』
主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
主演女優賞:河合優実『あんのこと』
助演男優賞:綾野剛『まる』 ・森優作『ミッシング』
助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
ドキュメンタリー賞:大きな家』(竹林亮監督)
アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
新人監督賞:山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
新人男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』 ・本山力『十一人の賊軍』
新人女優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
脚本賞:甲斐さやか『徒花-ADABANA-』
編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
松永文庫賞(特別賞):東映剣会
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』


