【ネタバレ】『リロ&スティッチ』実写版の結末 監督が真意語る「全員を満足させることはできない」

実写版『リロ&スティッチ』(全国公開中)は、2002年公開のディズニー・アニメーション版のストーリーに基づきながら、実写ならではのストーリー変更や設定アレンジが加えられている。メガホンを取ったディーン・フライシャー・キャンプ監督が、特に大きな変更を加えた箇所について、Varietyでその真意を明かした。(以下、映画のネタバレを含みます)
『リロ&スティッチ』は、破壊生物として生み出されたエイリアン“試作品626号”(=スティッチ)が、ハワイで少女リロと彼女の姉・ナニと出会い、オハナ(ハワイ語で家族の意味)の大切さを学ぶファンタジー。
キャンプ監督は、スティッチの物語を実写化するにあたり、エンディングを大胆に変更した。アニメーション版は、リロとナニがハワイに留まったスティッチと仲良く一緒に暮らすという結末だが、実写版では、ナニが海洋生物学を学ぶため大学に進学し、リロと離れ離れで暮らすというエンディングとなっている(その後のおまけ映像では、ワープ装置でナニがリロに会いにくるシーンもある)。
アニメーション版には「オハナは家族。家族はいつもそばにいる。何があっても」という名セリフが存在するほど、同作は“家族”をテーマとして扱っている。実写版でのエンディング変更を好意的に思う人もいるが、「ハワイ文化に根ざした家族や共同体の精神を損なっている」と主張し、否定的に捉える意見もある。
キャンプ監督はVarietyに対して、「この件はしばらく考えていました」と述べ、実写版では“オハナ”の意味を広げ、ハワイの伝統的価値観(集団主義、拡大家族など)をより明確に描きたかったと明確にしている。「人は、時に置き去りにされます。でも、ナニが言うように、だからこそ共同体が人々を忘れないようにする責任があるのです」
初期の話し合いの中では、アニメーション版の監督であり、今作でもスティッチの声を担当したクリス・サンダースにも意見を求めたという。「彼は、孤児の姉妹2人が放っておかれることはあり得ない。近所の人々、教会の仲間、叔父や叔母たちが必ず手を差し伸べてくれる。それがハワイの姿だと語ってくれました」
そこで誕生したのが、実写版の新キャラクター・トゥトゥだった。幼少期からリロ&ナニのことを気にかけていたご近所さんで、エンディングでは、トゥトゥがリロを“ハナイ”(血縁以外の子供を育て世話をする、ハワイ独自の里親的な文化)として迎え入れる。
キャンプ監督は「愛と責任感、そしてコミュニティーのために尽くすという精神に基づいたものです」と説明し、映画を観たハワイの人たちの多くがあの展開を気に入ってくれたと語っている。「これは『すべてが壊れたとき、誰が助けに来るのか?』という問いに対する、ハワイ独自の答えであり、“非公式な養子縁組”という考え方です。コミュニティー全体が、彼女たちの“オハナ”のために、犠牲を払ってでも手を差し伸べようとする姿勢が描かれています」
原作を愛しているからこそ、「オリジナル版の展開をそのまま再現するだけにはしたくなかった」とキャンプ監督。批判の声があがることは、公開前から覚悟していたといい、「リメイクは全員を満足させることはできません。こうした作品は、多くの人にとっての“聖地”であり、子どもの頃に観て育ったものです。私もその一人なので、その気持ちはよくわかります」と思いを打ち明ける。一方で、結末を叩いている人の中には、実際に映画未鑑賞者も多いと指摘しており「私に寄せられるメッセージには、物語を誤解しているものもあります。実際に観れば、そういう印象は受けないですし、私たちがこの映画に込めた意図が伝わるはずです」と語っている。(編集部・倉本拓弥)


