『ラストタンゴ・イン・パリ』の裏側描く映画『タンゴの後で』9月公開

映画『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)の撮影の舞台裏を描き、第77回(2024)カンヌ国際映画祭に正式出品された映画『Maria(原題)』が、『タンゴの後で』の邦題で9月5日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開されることが決まった。併せて、ポスタービジュアルと予告編も披露された。
本作は、大胆な性描写と心理描写が大反響を呼んだベルナルド・ベルトルッチ監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』に出演し、映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人でもある、マリア・シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てた物語。今なお世界中で問題とされる、エンターテインメント業界における権力勾配と搾取について、鋭い視線を投げかける。
19歳のマリアは気鋭の若手監督ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてスターダムを駆け上がる。しかし、48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は、彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落としていく。『ラストタンゴ・イン・パリ』は公開された1970年代当時「芸術か? 猥褻か?」と話題になったが、本作は現代の我々に「芸術か? 暴力か?」と問いかける。
監督を務めるのは、新鋭ジェシカ・パルー。ベルトルッチ監督作『ドリーマーズ』で、インターンとして彼との仕事を経験したパルーは、マリアのいとこであるジャーナリストが記した本「あなたの名はマリア・シュナイダー:『悲劇の女優』の素顔」と出会い、彼女の人生を映画化することを決意する。マリアを演じるのは、第78回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた『あのこと』のアナマリア・ヴァルトロメイ。ブランド役は、名優マット・ディロンが務める。
ポスターはキスシーンを演じるマリアとブランドの前にカチンコが配されたデザイン。予告編は、マリアがベルトルッチから性的に大胆な映画を「アーティスティックに撮る」と説得される様子や、マリアの体当たりの演技、真剣な眼差しで「彼らに強いられた」と話すマリアの姿など、センセーショナルなシーンの数々が収められている。
また本作にはインティマシー・コーディネーターが参加し、パルー監督や主演のアナマリアも、その存在が作品作りにとって非常に重要であったと述べている。そのため、日本で活躍するインティマシー・コーディネーターの浅田智穂も、本作にコメントを寄せている。(加賀美光希)
ジェシカ・パルー監督(インタビューより抜粋)
マリア・シュナイダーの物語は私にとって特別でした。私は誰かを責めたり、裁いたりするのではなく、この出来事の「遺産」に向き合いたい。そして、彼女の視点を通して、この社会を新たな角度から描き出したいのです。
まずは「異常だったこと」を認識すること。それが、最初の一歩です。
浅田智穂(コメントより抜粋)
マリアからの「視線」に、私たち観客は何を思うのか。私たち作り手は彼女に何を問われ、どう自問すべきなのか。かつてマリアに向けられた様々な「視線」の中で、彼女が戦い、傷つき、それでも生きてきた姿を目にした今、私たちは彼女の「視線」から目を逸らすことなどできないのだ。


