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『28年後…』レビュー:続編ではなく新章 走る感染者の恐怖は次なるステージへ

ダニー・ボイル復帰で新章開幕! - 画像は『28年後…』より
ダニー・ボイル復帰で新章開幕! - 画像は『28年後…』より

 人間の理性を奪い凶暴化させるウイルスの脅威と、感染を免れた生存者の姿を描いた鬼才ダニー・ボイル監督のサバイバルホラー『28日後…』(2002)。その衝撃的な世界観のまま、新たな幕開けを告げるのが最新作『28年後…』だ。本作では“走る感染者”による恐怖がさらなる高みに達し、観る者をかつてない緊張感と没入感へと誘う。

【動画】人ではなくなる…『28年後…』本予告編

 『28日後…』の冒頭、集中治療室で目を覚ました主人公が、パンデミックによって無人と化したロンドンの市街地をひとり彷徨う場面は映画史に残るインパクトを残した。公開から約20年後、世界は新型コロナウイルスのパンデミックを経験し、その映像は現実味を帯びた。コロナ禍を経験したボイル監督は、『28日後…』の脚本家であるアレックス・ガーランドと再びタッグを組み、感染という恐怖と死生観をより深く描き出す新たな物語を生み出した。

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パンデミックから28年…感染者も進化していた

 前作『28週後…』(2007)は物語の続きを匂わせる展開で幕を閉じたが、『28年後…』はその流れを意図的に断ち切り、“新章”の第1作として位置付けられてる。舞台は、人間がかつての捕食者として回帰したかのようなイギリス本土。緑豊かな大自然の中には、野生動物を食らう感染者が跋扈(ばっこ)する。孤島のコミュニティーで生活する人間の姿は、生存本能そのものを浮き彫りにし、シリーズ中でも屈指のアドレナリン全開の展開を生んでいる。

 時代設定を28年後にしたことで、感染者にもリアルな変化が見られる。第一波で感染した者たちは、腐敗した衣服とただれた皮膚をまといながら血肉を求めて疾走する。その異様なビジュアルは、過去作の感染者像を一変させる。さらに恐ろしいのは、彼らよりも強靭な肉体を持つ“バーサーカー”と呼ばれる感染者。人間を超えた巨体と圧倒的な破壊力は、姿を現しただけでスクリーンは絶望一色に染まる。そのシルエットを目撃した者は、逃げるしか生き延びる道はない。

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イギリス本土で狩りをする親子

 本作の真骨頂は、スリリングなホラー描写だけでなく、濃密な人間ドラマにもある。離島から本土に上陸した親子、難病に苦しむ妻、感染者と“共生”する元医者など、魅力的な新キャラクターたちを通して、命を授かること、死との向き合い方という根源的なテーマを深掘りしていく。極限状態で登場人物が下す決断は、心を強く揺さぶり、時に涙を誘う。また、謎の男を演じるレイフ・ファインズの存在感は群を抜いており、全身ヨード油まみれの異様なビジュアルは、感染者以上の不気味さと狂気を放つ。

 『28年後…』から始まる新シリーズは3部作として構想されており、すでに第2弾『28年後…:ザ・ボーン・テンプル(原題) / 28 Years Later: The Bone Temple』(2026年1月16日全米公開)の撮影も終了している。ボーン・テンプルとは、人間や感染者の骨で建築された神殿のことで、本作において重要な鍵を握るアイコンだ。第2弾には、『28日後…』の主人公ジムを演じたキリアン・マーフィーが復帰する予定で、彼がどのようにカムバックするのか想像しながら鑑賞するのも一興だ。(編集部・倉本拓弥)

映画『28年後…』は6月20日(金)日米同時公開

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