スピッツの名曲「楓」27年経て映画化 『セカチュー』行定勲監督が描く再生の物語

スピッツの名曲を原案に、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)などの行定勲監督が映画化したラブストーリー『楓』が12月19日より全国公開されることが決定し、アナウンスメント映像とファーストビジュアルが公開された。
デビュー34年にして、スピッツにとって初の映画化となる「楓」は、1998年にリリースされたアルバム「フェイクファー」に収録され、同年にアルバムからシングルカットされた楽曲。印象的なサビの歌詞「さよなら 君の声を抱いて歩いていく」でも広く知られるこの曲は、数多くのアーティストにカバーされ、27年を経た現在も幅広い世代に名曲として歌い継がれている。
物語の主人公となるのは、人生のなかで大切な人を失った2人の男女。移り変わる時間のなかで、それでも前へ進もうとする2人の姿を美しい季節の移り変わりを通して描き、今を生きる人々に希望を与えるラブストーリーとして届ける。
行定監督は、“セカチュー”から約20年を経て、時代を代表する楽曲を基にしたラブストーリーに挑戦。「『世界の中心で、愛をさけぶ』は、失った人を心に、再び歩き出すことを決意したラストだった。それから20年後に、スピッツの名曲にインスパイアされた再生の物語に携わるという巡り合わせに胸を熱くしている」と本作にかける思いを明かしている。
脚本は『東京リベンジャーズ』シリーズや『ひとよ』などの脚本家・高橋泉(※「高」ははしごだか)。楽曲を原案に、はかなく美しい「楓」の世界観を、オリジナルストーリーとして昇華させた。『サヨナラまでの30分』(2019)、『さがす』(2021)などの井手陽子がプロデューサーを務める。
楽曲が流れる映像と、楓の葉と雄大な景色のビジュアルは、ニュージーランドで撮影されたもの。美しい自然に囲まれたロケーションが映画を彩る。行定勲監督、井手陽子プロデューサーのコメント全文は以下の通り。(編集部・入倉功一)
行定勲監督
この映画は喪失から立ち直れない人々を描く物語です。人間の美しさだけでなく愚かさや身勝手さが露呈するのが恋愛だ。だから、ひとりでは生きていけない弱さや狡さがそこに介在する。
楓の花言葉には、『調和』『美しい変化』『大切な思い出』『遠慮』とあります。私は『遠慮』をこの物語の核にして恋愛を描きたいと思いました。人の為に自分の気持ちを遠慮させて相手のことを想う男。その想いに気付きながらも、失くした最愛の人のことを想い続ける女。
20年前に『世界の中心で、愛をさけぶ』を作った。あの映画は失った人を心に、再び歩き出すことを決意したラストだった。それから20年後に、スピッツの名曲にインスパイアされた再生の物語に携わるという巡り合わせに胸を熱くしている。
井手陽子プロデューサー
スピッツの「楓」は、決して色褪せることなく、多くの人に長く愛され続けている名曲です。私にとっても、人生を通して聴き続けてきた曲といっても過言ではありません。年を重ね、別れを経験するたびに、いつも自分を未来へと導いてくれました。“楓”の花言葉には、『調和』『美しい変化』『大切な思い出』『遠慮』の意味があります。人生には、多くの別れがあり、喪失は誰もが経験するでしょう。その悲しみは、すぐに癒えることはない。それでも、季節は変わらず巡っていく。流れる時間の中で、様々な感情が複雑に交差する。忘れられない、忘れたくない想い。新たに生まれる想い。純粋すぎるがゆえ、ときに残酷な想いを抱え、人はどう生きていくのか。大切な思い出を胸に、美しく変化する男女の想いを描けたらと思いました。「楓」から生まれたこの映画が、誰かの人生に寄り添い、未来への希望となることを願います。


