【最速レビュー】『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』ヒーローチームの真髄が詰まったMCU渾身作

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、ユニークかつ画期的な作品だ。4人のイメージ画像が発表された時から、本作はこれまでのMCU映画とは違う作品になるのではないかと予感したが、その期待は裏切らなかった。この映画は、“ファンタスティック4”というスーパーヒーローの魅力の真髄を描くために、新たなアースを丸ごと一つ創り出す。このユニークな発想によって生み出された作品なのだ。監督は、マーベルドラマ中でも異色作の「ワンダヴィジョン」を手がけたマット・シャックマン。異世界の創造には実績がある。
【動画】『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』本予告編
映画が始まった途端、スクリーンに表示されるのは「Earth-828」の文字。ちなみにコミックのメインストーリーや、通常のMCU映画の舞台は「Earth-616」。この映画はそれらとはまったく別のアースの物語なのだと、最初から宣言する。そして描かれるのは、これまで見たことのないアース。ファンタスティック4がコミックで誕生した1961年の米ニューヨークを踏まえつつ、その頃の人々が思い描いていた“未来”の姿を重ね合わせて、色彩もデザインも統一。今の視点で見てもポップでクールな新たなアースを創造し、その世界観を堪能させてくれる。
このアースでは、人々のスーパーヒーローについての意識も違う。ファンタスティック4の正体は誰もが知っていて、彼らはテレビ番組にも登場し、子供たちから大人までが彼らを愛している。誰もがスーパーヒーローを信じ、彼らの言葉に耳を傾ける。そういう世界だから、ファンタスティック4の魅力が際立つ。手足が自在に伸びる、火の玉になって飛ぶ、透明になる、怪力で岩を砕く、といった彼らのスーパーパワーが威力を発揮するのだ。特にミスター・ファンタスティックの手足が伸びる能力はどう使われるのかと思ったら、日常でも活用され、さらに「そうか、その手で来たか」と唸らせるシーンも描かれる。
また、ファンタスティック4それぞれの性格や短所も鮮やかに描写され、彼らの人間としての魅力もたっぷりなのも、原作コミックを意識したものだろう。これには4人を演じた俳優たちの貢献度大。ドラマ「マンダロリアン」「THE LAST OF US」のペドロ・パスカル、『ミッション:インポッシブル』シリーズのホワイト・ウィドウことヴァネッサ・カービー、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン4のエディ役で知られるジョセフ・クイン、ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」のリッチー役のエボン・モス=バクラック、それぞれが短いシーンのちょっとした仕草や眼差しで個性を表現する。
4人それぞれの特殊能力が描かれるのでビジュアル的な見せ場は多く、中でもシルバーサーファーとヒューマン・トーチの大きな空間を使った高速移動は見ものだが、なんといっても宇宙的存在である、ギャラクタスの威容がいい。ファンタスティック4の面々に対峙した時のサイズ感。彼の影が街を覆っていく時の速度感。このキャラクターの、惑星を丸ごと崩壊させてそのエネルギーを吸収するという壮大さは、他のアースなら別の表現もあるだろうが、この映画の「Earth-828」の世界観の中で表現するという制約の中で、今回のビジュアル化は絶妙だ。
そしてもちろん、MCUのお約束、ポストクレジットシーンも抜かりない。来たる『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への期待をさらに高めてくれる。すでに4人の登場が発表されているこの新作で、彼らがアベンジャーズとどう関わるのか。それを予想するためにも、この映画を見ておく必要がある。(平沢薫)
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は7月25日(金)日米同時公開


