朝ドラ「あんぱん」ミセス大森元貴起用の理由
朝ドラ「あんぱん」（NHK総合・月～土、午前8時～ほか）に出演するという一報が大きな話題となった3人組ロックバンド・Mrs. GREEN APPLE の大森元貴。音楽業界を席巻している超人気バンド・ミセスのボーカルといえど、なぜ、芝居経験の浅い大森が物語の終盤で重要な役どころとなるキャラクターに起用されたのか……？ 理由を制作統括の倉崎憲が語った。
アンパンマンを生み出した漫画家・やなせたかしと暢の夫婦をモデルとした連続テレビ小説第112作「あんぱん」。今田美桜がヒロイン・朝田のぶ、北村匠海が柳井嵩を演じ、何者でもなかった二人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現したアンパンマンにたどりつくまでの物語を「ドクターＸ ～外科医・大門未知子～」などの脚本家・中園ミホがフィクションとして描く。
大森が演じる作曲家・いせたくやは、CM音楽や映画・テレビ・ラジオの劇音楽、ミュージカルなど、生涯で1万5,000曲以上を制作した作曲家・いずみたくがモデル。ミュージカル「見上げてごらん夜の星を」で音楽を担当し、やなせが作詞した「手のひらを太陽に」の作曲を手がけた人物だ。
大森の起用について、倉崎は2023年から2024年にかけて開催されたミセスのライブツアー「The White Lounge」を鑑賞したことに触れ、「音楽劇風のライブでした。曲と曲の間も含めて芝居調で、ミセスの音楽にも感動しましたが、それ以上に大森さんの間の取り方、佇まい、仕草すべてに惹かれました。特に『ダンスホール』という曲が始まる前の間がたっぷりあって、その時の表情が大画面に映し出されたときに自然と涙があふれました。ライブなのに曲よりも“間”に感動して忘れられず、その日は眠れませんでした。大森元貴という才能を目の当たりにして、役者としての大森さんの芝居を見たい！ このタイミングを逃すと一生後悔する！ と思い、翌日すぐ、役者・大森元貴として『あんぱん』に出演していただきたいと打診しました」と振り返る。
また、「役者一本でやられている方よりも、ご自身で作詞作曲をされている人がいいなと思いました。去年、ミセスは5か月連続リリースをされましたし、いずみさんは生涯に1万5,000曲以上を作曲されました。大森さんといずみさんは、年代問わず多くの人に届くメロディーを作られる方という点でリンクする部分を感じます」と話す。
しかし、大森は菊池風磨（timelesz）とダブル主演を務めた映画デビュー作『#真相をお話しします』（2025）での演技が高く評価されたものの芝居経験は浅い。その点の不安を問うと、倉崎は「ありませんでした」ときっぱり。「朝ドラは異業種格闘技戦で、役者に限らずいろんなジャンルで才能がある方に出ていただいてこそ化学反応が起きると思うので、芝居経験が少ないことに心配はありませんでした。もう収録は何日もしていますが、北村さんも“ナチュラルに芝居に入っていくのでやりやすい”と言っていました。我々は一役者として拝見しています」と信頼を見せた。
撮影現場での大森は「キャスト・スタッフと和気あいあいと時間を過ごしている」とのことで、大森から「僕、大丈夫ですかね？ ちゃんとやれていますか？」と尋ねられた倉崎は「キャスト一同、大森さんの役者としての才能に感心しているので、そのまま突っ走ってください」「芝居をするというより、気負わずナチュラルにやっていただければいいですよ」と伝えたことも明かした。
いせたくやの18歳から50代を演じる大森は「心のどこかに少年のようなピュアな心を持ち続けている方だと思うので、それを大切に演じていきたい」と話していたそうで、いずみに関連する資料や残されたアーカイブのほか、スタッフがご親族を取材して得たキャラクター像などを聞いて参考にしているのだとか。さらに、作詞家でもあった永六輔がモデルの六原永輔（藤堂日向）との共演シーンがあることから、永に関連する書籍を大森自ら購入して読み漁ったという驚きの裏話も披露した。
倉崎は「本当にこの作品に思いをかけてくださっていて、彼のトレードマークである襟足の髪も“短くしますよ”と言っていただいたので切ってもらい、当時の髪型に近い形にしていただきました。とにかく大森さんの『あんぱん』にかける心意気は衣装合わせや準備の段階で感じたので、とても嬉しかったですね」としみじみと語った。（錦怜那）
