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「あんぱん」ゆで卵を殻ごと食べる北村匠海に衝撃 脚本・中園ミホ「頭が下がる思い」

第58回より戦場で飢餓に襲われる嵩(北村匠海)
第58回より戦場で飢餓に襲われる嵩(北村匠海) - (C)NHK

 国民的人気キャラクター、“アンパンマン”を生み出したやなせたかしさんと暢さんの夫婦をモデルに、ヒロイン・のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の生涯を描く連続テレビ小説「あんぱん」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。2025年は第二次世界大戦の終結から80年という節目の年に当たり、やなせさんが戦争体験をしていることもあり、脚本家の中園ミホは「やなせさんを描くということは、戦争を描くということ」と明言していた。その言葉通り、中園は戦争描写を残酷なまでに丁寧に描き切った。

【画像】康太、神野らが民家に押し入る第58回

 戦時中の駐屯地で飢えに苦しむ連隊の康太(櫻井健人)と神野(奥野瑛太)、嵩が食料を求めて民家に押し入り、老女からもらった殻付きのゆで卵をむさぼるシーン(6月18日放送・第58回)は大きな反響があった。中園も「北村さんをはじめ、みなさん全身全霊で演じてくれて本当に素晴らしかった。映像を観たときは殻ごとガリガリ食べるんだ! ってびっくりしましたが、おそらく実際、殻をむく余裕なんてないですよね。本当に頭が下がりました」と感服する。北村は3月の会見で「飢えを実践しました。3日間ご飯を抜くとか、水を飲まないとか」と役へのアプローチを語っており、中園は「みなさん絶食して戦地のシーンに臨まれたようで、そこまでやってくれたからこそ伝わるものがあったんですよね」と重ねて北村たちの役者魂を称賛した。

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 このゆで卵のエピソードを取り入れた経緯について、中園は「あるお家に盗みに入った泥棒に、おばあちゃんが“お腹すいてるんだろ。待ってろ。うちには卵しかないから”とゆで卵を出してあげたら、包丁を突き付けていた泥棒が泣きながら食べて自首をしたという、わたしが子供の頃にラジオで聞いたニュースです」とも明かす。また、空腹の人を救うアンパンマンの正義を描くため、空腹の辛さや空腹がいかに人を変貌させるかを伝えたかったものの、この話を戦地のシーンに置き換えることに不安もあったという。しかしそれは杞憂で、北村たちのリアルな芝居は視聴者の心を打った。

 とはいえ、周囲からは「そんなに戦争の話ばかりだと視聴率が下がるのではないか」という声も上がった。中園も「“本当にそこからズルズルと数字が落ちてしまったらどうしよう……”とビビっていました。朝ドラの脚本家は本当に責任が重い」と苦笑する。それでも役者や現場スタッフの入魂ぶりに後押しされ、「やるんだ!」と自分を鼓舞して執筆に勤しんだのだとか。

 もともと交流のあったやなせさんを改めて調べ、知り、描き終えた今、彼の印象に変化はあったのだろうか? 中園は「わたしが知っているやなせさんは、もうちょっと社交的で明るくて声も大きかったけど、実はそれはよそ行きの顔で、本当のやなせさんは北村さんが演じたようにナイーブでナーバスな部分もあったんじゃないかな……と今は思います。それくらい北村さんの演技には説得力がありました」と打ち明ける。さらに、「わたしは脚本を書く前にキャラクターを作り込むのですが、嵩が自分のイメージとは一番違う方に育っていきました」と吐露。北村の芝居に対して、中園は最初「あっ、こういう話し方をするんだ」と想定外で驚いたそうだが、最終的には北村が生み出した嵩には大満足したようだ。

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 戦争体験を通して「正義は逆転する」と痛感したからこそ、「逆転しない正義」を体現するアンパンマンを生み出したやなせさん。彼同様、「“正義は逆転する”“信じてはいけない“と思って執筆を始めた」と述懐する中園は「130話まで書いて、スタッフ全員が一丸となって作り、役者の方々が魂を込めて演じてくれたことで、その気持ちがより強くなりました。この作品に関わったからこそ、格好いいものや強いものになびきそうになったら警戒しようとか、戦争などで世の中が傾いたときに他人事として考えてはいけないと、今改めて強く思っています」と自戒を込めて語った。(錦怜那)

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