「あんぱん」八木と蘭子、急接近のワケ 脚本・中園ミホ「親心のような思いで」

いよいよクライマックスを迎える連続テレビ小説「あんぱん」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。“アンパンマン”を生み出したやなせたかしと暢の夫婦がモデルの本作は、激動の時代を生きるヒロイン・のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の愛の物語であり、二人を取り巻く人々の群像劇でもある。中でもドラマ後半を盛り上げる要素として、嵩が戦場で知り合った八木信之介(妻夫木聡)と、のぶの妹・蘭子(河合優実)の関係が注目を浴びている。
戦時中は嵩が所属していた小倉連隊の上等兵で、戦後はガード下で身寄りのない子どもたちを助けながら雑貨店の雇われ店主として働いていた八木。戦場では軍隊になじめない嵩を助け、のぶと嵩の人生に大きな影響を与える存在となる。
彼のモデルの一人は、株式会社サンリオ創業者で現在は名誉会長の辻信太郎。脚本の中園ミホは「八木のモデルを辻会長そのままにしてしまうと、ドラマの後半から登場することになり、それはもったいないな……と。妻夫木さんのような素晴らしい俳優には長く出てほしいと思いました」と第10週から登場させた理由を打ち明ける。また、「辻会長もやなせさんをずっと支えてこられた方で、2人は反戦の気持ちで繋がっていたと思います。それならば戦地で出会っていたら絆がより深まるんじゃないかと考え、史実とは違いますが劇中のような関係にしました」とキャラクター設定を説明した。中園は妻夫木と共にサンリオに赴き、辻会長からいろいろな話を聞いたそうで、その際、妻夫木が八木を演じることを喜び、「格好いいね」と印象を話していたことも明かした。
そんな八木が働く雑貨店をのぶが手伝ったこともあり、ある日、蘭子は八木と対面して交流を持つことになるのだが、SNSは「お似合い」「ドキドキする」「もしかして…」と色めき立っている。
そもそも蘭子は石工見習いの豪(細田佳央太)と結婚を約束していた。しかし、徴兵された豪は戦死し、失意の蘭子は「豪ちゃんに一生分の恋をした」と二度と恋をしないかのような発言をしている。中園は「蘭子と豪ちゃんを悲恋にしたら、すごく怒られまして……。“なんで戦死させるの”“実は生きていたことにして帰って来させて”などと言われました。そう言わせたのは河合さんと細田さんの熱演があってこそですが、わたしとしても何とか蘭子を幸せになって欲しいと思いました」と吐露する。一方で、「蘭子と豪ちゃんを応援してくれていた人たちは、蘭子が他の人と恋愛をするとか、豪ちゃんよりいい男が現れる設定は許してくれないだろうな」と複雑な心境にもなったという。
第21週では八木がビーチサンダルなどを販売する新会社を設立し、フリーライターとなった蘭子がその宣伝文を担当して親交を深めていた。だからこそ蘭子の仕事ぶりについて八木が意見したとき、蘭子は思わず八木にきつい本音をぶつけるのだが、それがきっかけとなり、八木は出征中に妻子を福岡の空襲で失い、生きる意味を見失うも、戦後に戦災孤児の世話をすることで再び生きる気力を見出したこと、蘭子もかつて婚約者を亡くしたことを伝え合い、距離を縮めていく。中園は悲しい過去を持つ八木に対しても「この人も幸せになってほしい」と願うようになっていたため、「脚本家の親心のような思いで、こういう展開にしました」と語るが、果たして二人はどうなるのか? 今後の進展に期待が膨らむ。(錦怜那)


