ADVERTISEMENT

三木聡監督、19歳の上野樹里を回顧「妙な現場に放り込まれて戸惑っていたと思う」

三木聡監督、ふせえり、村松利史
三木聡監督、ふせえり、村松利史

 三木聡監督、上野樹里主演の映画『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)のリバイバル公開記念イベントが8日にテアトル新宿で行われ、三木監督、ふせえり村松利史が登壇。当時19歳だった主演・上野を戸惑わせた、独特な撮影現場を振り返った。

ふせえり“あずきパンダちゃん”生披露!舞台挨拶の様子

 シティボーイズのライブの演出家として知られ、「タモリ倶楽部」「トリビアの泉」ほか数々の人気番組の放送作家としてキャリアを積んできた三木聡が『イン・ザ・プール』(2005)に続く2作目の長編映画として発表した本作。平凡な主婦がスパイ募集の貼り紙を見つけ、目立たないようにスパイ活動に励むさまを描く。独特なゆるいテンポとオフビートな笑いで“脱力系”映画として人気を博し、ロングランヒットを記録。本作の公開20周年を記念して、デジタルリマスター版で上映される。

ADVERTISEMENT

 映画上映後、劇場に集まった大勢の観客を見渡した三木監督は、「すごいですね、20年。こんなにお客さんがいっぱい来ていただいてうれしい限りです」と感慨深い様子。本作が20年前にも同劇場で上映されていたことをふまえ「テアトル新宿さんで上映してくれるということが決まったんで、劇場に貼ってあるポスターを観に来たんです。そうしたら二人のお巡りさんが俺のところに来て。『ご主人、ちょっとカバンの中を』と言われて。20年前も今と風貌が変わってないんで、多分怪しいと思われたんですけど、他の映画監督に話を聞いたら、みんな職質を受けてるらしく。映画監督って意外と職質率高いんだなと。当時の劇場の舞台あいさつでもその話をしたと思うんですけど、そんな20年前ですね」としみじみとあいさつ。

 一方、上野演じる主人公のスズメをスパイの道に誘うことになるクギタニエツコを演じたふせも「わたしこの映画でちょうどこの髪型だったんですよ。この後もいろんな作品に出て、カットしたりショートにしたりといろいろやったんですけど、今日はまたこの髪型。だからちょっと不思議だなと。また『亀』に戻ったという感じがします」としみじみ。さらに商店街の謎の豆腐屋を演じた村松も「今日のトークショーは三木監督がいらっしゃって、ふせさんがいて。なんでもう一人が豆腐屋なんだって思った方も多いと思うんです。もっとメインの人がいっぱいいて、俺、端っこにいるような感じだと思ったら、3人って聞いて……」とボヤくことしきり。そんな村松の様子にふせも「村松さんって面白いんですよ。いつもこういう感じで嘆いてんの」と笑いながら付け加えた。

ADVERTISEMENT

 三木組といえばオフビートな間や独特なテンポ、セリフまわしなどが特色だが、それはいったいどのように演じているのか。ふせが「台本に書いてあることが全てなんで、その脚本を一字一句全部正確に覚えていって、現場でやる。それで何か不都合があれば監督が変える。それは全体通してそうでしたね」と語ると、村松も「三木さんの脚本は語尾に至るまで、変な、微妙な言い回しがあるから、変えようがないんですよね」と続ける。

 主演の上野にとっては2004年の映画『スウィングガールズ』が大ヒットを飛ばし、注目を集めていた時期の作品。三木監督は「妙な現場に放り込まれて戸惑っていたと思う」と当時を思い返し、「スパイの人たちの間に全然関係ない第三者が入ってくるという設定なので。上野さんもそこのリズムが分かってない方がいいんだけど、映画の主役としてそういうことが分からないで芝居をしていくことの恐怖ってあったと思う。それは後に麻生久美子さんも同じような状況になったし」と述懐。その上で「ただそういった上野さんの感性みたいなものは、一回開き直ってくれれば、そこから川をジャンプして越えるみたいな感じになった」とも。

 そんな監督の言葉を補足するようにふせが「大体、三木さんの作品ってそうなんですよ。主役が追い込まれるというか、困ったなみたいな感じになる。亀梨(和也)くんとか吉岡(里帆)さんとかもそうだったし、麻生(久美子)さんもそうでしたよね」と説明すると、三木監督も「今なんか、SixTONESの人たちとコントを撮ってるんですけど、全員がまったく意味が分からないと言っている」と笑いながら付け加えた。

ADVERTISEMENT

 劇中では、スパイの募集広告を見つけたスズメ(上野)が、クギタニ夫妻の家に行き、シズオ(岩松了)から「これに座って」と座布団代わりに渡されるのが「あずきパンダちゃん」。だがすぐに妻のエツコ(ふせ)が「なんでわたしのあずきパンダちゃんに座るのよ!」と取りあげるも、おもむろにエツコが「あずきパンダちゃ~ん」と謎のメロディーを歌いあげるシュールなシーンがある。
 
 実はこの「あずきパンダちゃん」は監督の私物だったとのことで、イベントに生「あずきパンダちゃん」が登場すると会場は大盛り上がり。その流れでふせが「あずきパンダちゃ~ん」というメロディーを生披露すると会場には大きな拍手が鳴り響いた。三木監督によると「昔(中華雑貨専門店の)『大中』という店に、これの白いやつと赤いやつがペアで売ってたんですよ」とのこと。さらに「海外の映画祭で上映する時も『あれは何ですか』とよく言われて。たぶん韓国で吹き替え版がテレビ放送されたと思うんですけど、あの時あの歌をどうやってんだろうなと。俺はまだその吹き替え版を見たことないんですけど」と笑いながら付け加えた。(取材・文:壬生智裕)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT